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悪役に生まれたのなら、徹底的に悪の道を貫いてやる!  作者: 鈴木ハルカ


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仲介屋 8

 殴り込むつもりか?


 「ウドと言ったな。ドアに錠前を掛けたら、口入屋に戻るんだ。ジーンは私に任せろ」


 「へい。ボスを頼みます」


 私もジーンを追って駆け出す。

 行き先はアルツナイのネグラの何処かだ。


 治療院のドアは明け放たれており、そのまま外に出て、気配察知を最大範囲で展開し、高速で移動するモノを探せば、南へ向かう気配が一つあった。


 娼館街へ向かっているのだろう。


 身体強化とステータスアップ。それに、感覚強化も展開してジーンを追った。


 娼館街に入る前にジーンに追いつき、速度を合わせる。


 「ジーン」


 「お前か。止めても無駄だぞ!」


 「止める気はない。多少の怪我なら私がなんとかする」


 「助かる。絶対、助けてみせるぜ」


 娼館街に入り、酔っぱらいを避けながらジーンを追う。

 なかなかに気が張る。


 カールの雇った人足たちをのした辺りで、娼館街のメイン通りから路地を抜け、別の通りに出た。

 

 すると、一軒の店の前でジーンが止まる。

 建物は木造であったが、豪奢な作りの三階建てで、なかなかの大きさだ。

 内部の部屋の数は、二十を超えるかもしれない。


 「ここなんだな」


 「たいてい買われた女は、ここで客を取らされるか、アルツナイのヤツらに遊ばれるかだ」


 「行こう」


 「あぁ」


 二人並んで正面の扉をくぐる。


 「お客さん。二名様で?」


 店のボーイだろう。

 客と勘違いしているようだ。


 「おい。メッサーから買った女はどこにいる」


 ジーンがボーイの胸ぐらを掴み、女の行方を聞く。


 「なんだ。客じゃねぇのかよ……一昨日の女だったら地下で可愛がってるぜ」


 ボーイはそう言うと、下卑た笑みを浮かべたが、ジーンが無言で殴りつけ、カウンターに投げつける。


 「ぐあっ」


 背中を強打したのだろう。ボーイが呻く声を上げた。


 その声と物音でカウンターの奥から別の男が現れ、私たちを見た途端に大声を上げる。


 「殴り込みだぁっ!」


 その声に、建物全体が騒然となる。


 部屋から顔を出す客であろう男や、悲鳴を上げ、逃げ出そうとする女。

 それに、武器を持ったアルツナイの男たち。


 私はカウンターを乗り越え、大声を出した男の胸にダガーを埋めるが、奥にはもう一人いたようで、剣が突き出された。


 すんでのところでヘッドスリップを使って避けてみたが、声を上げた男を離せていなかったので、剣先が頬を軽く掠め

る。

 声を上げた男に足をかけて、突いてきた男めがけて蹴り飛ばし、第二波を妨害。


 男を受け止め、アワアワとどうしたら良いのか分からなくなっている男の頭に衝撃波を叩き込んだ。


 カウンターはクリア。


 通路に出ると、ジーンがナイフ一本で、ショートソードの男とやりあっているのが見えた。

 外から見たときは大きな建物であったが、内部は部屋数を確保するためか、通路がさほど広くはない。

 大人の男二人が並んで歩くには、少し狭いくらいの幅しかなかった。


 ヒュッ。


 風切音。

 咄嗟にジーンを押し倒し、自身が上に乗るかたちになる。


 仲間の肩ごしに、ジーンの頭を狙ったボルトが通り過ぎたが、ショートソードの男が私に剣を振り下ろした。


 切られることはなかったが、振り下ろしの打撃が左の肩甲骨辺りに当たり、左腕に痺れを感じる。


 ジーンの上から転がり落ちると、ジーンが下から矢のように飛び出し、ショートソードの男の胸にナイフを突き立てていた。


 通路の奥にいるはずのクロスボウのおとこは見えない。


 二射目が来る前に、何とかしておきたい。


 「ハイリガー・プファイル(聖なる矢)」


 光の矢を放つ。

 対アンデッド用の特効魔法であるが、光という性質上、生物に当たっても何の影響もない。

 今時点ではコケ威しの魔法だが、私が立ち上がる時間を作るには十分だ。


 二射目の装填が終わり、光の矢に驚いて狙いがズレた射手目掛けて、ダガーを投げる。


 キラリと刃が光を反射したかと思えば、射手の頭部にその柄が深々と突き刺さっていた。


 「ジーン先に行け!二人では狭い」


 「分かった」


 ジーンは地下への階段を駆け下りていき、私がそこに蓋をするよう、次々と現れるアルツナイの男を拳で黙らせる。


 左腕が上手くないな……。


 そう考えた刹那、わずかに隙を作ってしまった。


 荒事に慣れているのだろう。

 アルツナイの男二人が、私の左右から同時に打ち込んでくる。


 避けられない!


 「ハイリゲ・シルデ(聖なる盾たち)」


 私の声ではないが、私を挟むように魔力のタワーシールドが現れた。


 「ガラハウっ!」


 「オレっちもいるぜっと」


 左手側の男が崩れ落ちると、トーマスがその背からダガーを引き抜いていた。


 「シュトースヴェレ(衝撃波)」


 トーマスの登場で気の抜けてしまった私の背後に、ガラハウが衝撃波を放ち、男を倒す。


 「おいおい。ちゃんと最後までやりな」


 私たちの出ていく様子に感づいて、トーマスに話をしたのだろう。


 「助かったよガラハウ」


 「これで、最後だったみたいだな」


 「下でジーンが一人だ。行かなきゃ」


 「リケ。あんた、酷い傷じゃないか」


 地下への階段を下りるために、トーマスたちに背を向けると、ガラハウが慌てた声を上げる。


 「こりゃ、ひでぇ……左腕がよく動くもんだぜ。下は任せな。ガラハウ」


 「分かってるって」


 トーマスは私を押しのけ、地下への階段を下っていった。


 「いくら強くったって、こうなっちゃうんじゃ、いつ終わっててもおかしくないね」


 「面目ない」


 背中に温かさを感じた。

 ガラハウの癒しに反応して、体が熱っぽくなるのだが、それが心地よい。


 「傷は塞いだよ。後は自分でやるんだね」


 「いや、大丈夫だ」


 左腕もいつものように動かせる。

 私とガラハウもトーマスを追って地下へと降りていった。


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