再始動 4
教会の本部。
金と欲にまみれた者どもの伏魔殿。
怒り心頭ということもあり、正面から失礼する。
既に日も落ちており、正面扉は施錠されていたが、私の前では紙細工に等しい。
魔力での身体強化に加えて、魔法によるステータスアップも展開すれば、どんなドアノブであろうと必ず回る。
扉を押し開き、教会の内部へと足を踏み入れた。
中は荘厳であるが、静謐さの欠片もない。
ホールの最奥に鎮座している、太陽神アーラス様の像もどこか寂しげに感じられる。
ここで祈りを捧げるものもいないのだろう。
「あ、あなたはっ!何をしているのですかっ!!」
教会の人間だ。
ローブも質素なもので、教会内での位も低いものたろう。
「ヴァンシュタイン枢機卿は何処かな?」
「お、おまえなんかにっぃぃぃ……。」
左脇に手を差し込み、持ち上げる。
タカイタカイのサービスプレイだ。楽しんでもらえるだろうか?
「枢機卿はどちらか?」
「ヴァンシュタイン様は、二階の東棟です」
「ありがとう」
ゆっくりと下ろして差し上げた。
教えてもらった通り、二階の西側の棟の部屋を一つ一つ開けては、内部を確認した。
数名の人間が唖然としていたが、無視。
がチリ。
施錠されたドアノブの内部がねじ切れる。
ドアを押し中へと足を運ぶと、お目当ての人物が執務机越しに、こちらを見て固まっていた。
問いかける必要はない。
机越しに胸倉をつかみ引きずり上げる。
「あ、あなた様はっ!」
「おい。貴様、中流街に新しくできた治療院を、どうしたいんだ?」
「し、知りません。私は」
「だったら、誰の指図なんだ?」
「分かりません」
「枢機卿。私は面倒くさいのが嫌いなんだ」
「はいぃぃっ」
「どうしたらいい?」
胸ぐらを掴んで持ち上げたまま、西棟の先ほど回った部屋を再度巡ることにした。
「お前。新しくできた治療院に何がしたい?」
「な、なんだ!す、枢機卿!!」
「いいから答えろっ!」
枢機卿が答えるよう促すが、はずれのようだ。
これを繰り返すしかないのかと思うと、うんざりする。
小一時間ほど問い回っただろうか、結局、西棟どころか東棟まで足を伸ばすことになった。
最後に伺った部屋の住人である司祭が、チンピラに金を掴ませやらせたそうだ。
新顔への躾と称していたな。
だが、躾が必要なのはお前たちだ。
椅子に枢機卿共々縛り上げ、司祭のものだろう、祭事用の錫杖をしっかりと肩に打ち込んであげた。
呼吸が弱くなって来たところで、癒しを与え回復させた。
「お前たちは、神に祈りを捧げるよりも、金を数えている方が好きなのか?」
「あ……いえ」
「嘘はダメだ」
錫杖を司祭の太腿に振り下ろす。
「!」
声も出ないほどに、嬉しいようだ。
「お前たちには我慢ならなかったんだ」
枢機卿の椅子を司祭の向かいに移動させる。
「枢機卿。これから見せるのは、お前の未来になるかもしれないことだ。次はない。今まで溜め込んだ教会の金を国に返せ。司教にも伝えろ、この惨状と共にな」
司祭の隣に立ち、錫杖を振り上げるとその頭に力いっぱいたたき込んだ。
「いいか。次は教会そのものを潰す」
錫杖を投げ捨て、枢機卿はそのままに教会を後にした。
◆
怒りに身を任せ、教会を制圧してしまった。
まぁ、いずれやるつもりだったから、順番を変えたと思えば問題はない。
屋敷に帰り着くのが遅くなった。
「お嬢様。フィッシャー様の方がお早いお帰りだったのは、どういうわけですか?」
ハンネの説教が始まりそうだったが、治療院からの帰りのことを話して聞かせた。
「教会でございましたか……あまり良い噂を聞きませんでしたからね」
「そうだったのか?」
「礼拝に訪れるだけで、お金を取られたそうですよ」
「守銭奴、ここに極めり……なのだな」
教会も、少しはおとなしくなってくれれば、良いのだがな。
そう思うが、肥え太った組織というものは、醜く、最後の最後までその暴利を貪ろうとするものだ。
治療院周りの警戒も強化しておこう。
「そうだ、結城結奏はどうしている?」
「トーマス様との修練が終わりまして、すぐにベッドにバタンでございます」
「そうとうに絞られたな」
「でも、やる気がスゴかったと仰られていましたよ」
「私は彼女を見誤っていたのだな」
「そうでございましたか」
「あぁ、私もまだまだだな」




