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悪役に生まれたのなら、徹底的に悪の道を貫いてやる!  作者: 鈴木ハルカ


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婚約破棄

 王家とアスカニア家の婚約解消の会談は、私の得た情報をお父様が伝えることから始まった。

 私たち親子の思惑通りに進むのかどうか……。


 お父様と共に登城し、王の執務室へ通される。


 「アダルガー。先触れなんて来たから、驚いた……フリーデリケも来てるのか?」


 執務机の椅子から立ち上がってまで、お父様を出迎える。

 

 「ニコラウス。込み入った話しがある」


 陛下を名前呼び。

 幼馴染みであり、王位を継承するまでは、アスカニア家の本邸にも遊びにいらしていた程の仲だ。

 もちろん。私との面識どころか、遊んでいただいた記憶もある。

 

 「分かった。ゲルハルト」


 陛下は部屋付きの従者に声をかけ、目配せする。

 従者も心得たもので、部屋を出て行った。


 「陛下。ご無沙汰しております」


 貴族のならいでカーテシーで、挨拶をした。


 「フリーデリケ。そなたも大きくなったものだ。それに、学院の入学試験のことも聞いておる」


 「まぁっ!お恥ずかしい限りでございます。城内でも女傑と呼ばれてしまい、面はゆい思いをしました」


 わざとらしいが、照れてみせる。

 

 「よいよい。騎士のなり手が減ってきていて、アダルガーと頭を悩ませていたところだ。それより、立ち話しもなんだ、掛けてくれ」


 「陛下。その前に魔法の使用をお許しください」


 「そこまでの話しなのか?」


 「ニコラウス。国の未来を揺るがしかねない話しだ」


 「ライヒ・デア・ハイリゲン(聖者の領域)」


 聖属性の結界魔法を展開した。

 短時間ではあるが、結界の内と外とを完全に隔絶する魔法で、音どころか空気の流れすら遮断する。

 なので、この結界を使うときには、必ず風魔法で空気を循環させ、浄化する必要がある。


 私はネックレスに擬装した魔道具に魔力を流し、中に仕込まれた風魔法を展開した。


 「フリーデリケの魔法の腕も、目を見張るものがあるな」


 「そうだろ?」


 陛下の言葉に、自慢げな顔になるお父様。

 

 「それで、国の未来に関わる話しとは何だ?」


 応接セットのソファに腰を下ろし、私たちにも勧める。

 私たち親子も、向かいのソファに並んで腰を下ろす。

 

 「セバスティアンとフリーデリケの婚約についてだ」


 いきなりの本題だ。

 牽制を必要としない間柄と言うのは、話が早くて良い。

 

 「それは何度も話し合ったではないか、アスカニア家の発言力を高めるために……。」


 顔を手で覆い、また、それかと言わんばかりの態度を見せた陛下であったが、次のお父様の言葉に表情を変えた。

 

 「聖女が再来したのにか?」


 「詳しく聞かせてくれ」


 先ほどとは打って変わって、身を乗り出し、眉をひそめた。

 

 「フリーデリケ。頼む」


 「はい。お父様」


 私は入学試験で出会った結城結奏について、分かっている範囲のことを話した。


 名前、星屑の聖女スキル持ちであること、そして、セバスティアン王子や取り巻き達との客観的な関係性。


 「なるほどな……。しかし、私の統治で聖女が再来するとはな」


 「全くだ。フリーデリケに聞かされた時は、腰を抜かしそうだった」


 国のトップである二人が、その驚きを隠せないほどの重大事である。

 ロアたちと話した、勇者の物語の元となる出来事から、既に三百年は経っているのだから、無理もないことなのかもしれない。

 

 「それで、その聖女とやらは、異世界人なのだな」


 「とても信じられないとは思いますが、見たことのない装束に、独特な名前、それにこちらの世界に慣れていない、そんな印象を受けました」


 「誰かが聖女召喚をやったのは間違いない」


 「教会か……。」


 陛下が呻くように呟いた。


 国王の威光をものともしなくなり、その運営について、金に絡まない話しが無いほどに、賄賂にまつわる汚職で溢れている。

 この点については、アーラス様も心を痛めていることであろう。

 まだ、地方の教会が精神性も高く、教えに忠実であるので見放されてはいないのだが、中央を狙うような司祭がいるような場所では、似たり寄ったりかもしれない。

 

 「調査に関しては、フリーデリケに任せようと思っている」


 「フリーデリケに!?」


 「こう見えて、やり手だぞ」


 「なるほどな。王宮に囲われるよりも、我らの目として使いたいと、そういうわけか」


 「私自身の我が儘でもございますが、それよりも、聖女様をセバスティアン王子の婚約者としてしまい、行儀見習いという名目で城内で庇護いただきたいと考えております」


 「調査の進み次第では、消される可能性も考えておるのだな」


 「はい。陛下」


 「それに、ニコラウス。聖女様を我が国が保護してるとなれば、他国への牽制にもなろう」


 「しかも、王族の庇護下であれば、横槍も心配ないか」


 「仰せの通りでございます」


 「よし。分かった」


 「分かってくれたか」


 「婚約の件は、破棄ではなく解消としよう。その方が、どちらも動きやすいだろ?」


 「ありがとうございます。ニコラウス伯父様」


 陛下をそう呼んで、にっこりと笑顔を作る。

 王妃様と母が姉妹でもあるので、伯父と呼んでも差し支えないのだが、これは、ここぞと言うときだけにとっておいてあったのだ。

 

 「セバスティアンにも話しを通す。呼び出すから、魔法を解いてくれるか?」


 「はい」


 暫くしてセバスティアン王子が執務室に現れた。


 「父様。何か……フリーデリケも」


 「セバスティアン。まぁ、座れ」


 「はい」


 セバスティアンが席に着いたところで、聖女召喚云々の部分は省き、私との婚約を解消し、聖女を保護する名目で婚約者とすることを伝えた。


 それを聞いた本人はアワアワとするばかりで、何の意見も想いも無いようだ。

 早めに見切りをつけられて、助かったのかもしれないと、私とお父様は安堵に胸を撫で下ろしたが、陛下の顔には苦汁を飲んだ時の表情が浮かんでいた。


 もしかして、私との婚約は、お父様への足枷ではなくて、セバスティアンの鞭打ち役を期待されていたのかもしれないなと感じた。


 でも、それは私のやりたいことではないのだ。


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