アルベドの足跡 4
そんなオルグとのやり取りがあって、自分で作れるところは自分でやれとのことだったので、分業になっている。
しかし、魔法陣だと思ってたものが、ドワーフたちが現役で使うルーンと言う文字の集合体だったとは驚きだ。
しかも、オルグはそれを書けるという。
折角だから、私も勉強しようかとも思えてくるな。
視線を手元に戻し、木の塊からアンダーボディを削り出す作業に戻る。
黙々と木を削り、たまに握っては感触を確かめては、また削るといった作業を繰り返していた。
『木を削って、何してるの?』
領事館の庭で遊んでいたのか、エンヴィがふよふよと飛んできた。
「新しい武器の握りを作ってるのだよ」
『ふーん』
あまり興味はなさそうだ。
『こんな感じ?』
私の足元から木の削りカスが浮かび上がり、空中で何かに練り込まれるように形が出来上がっていく。
それは、元の世界に帰した結城結奏との話の中で教えてもらった3Dプリンター。それもこんな感じで、物が形作られて行くのかもしれないなと思った。
『ほら、できたわよ』
完成したのか、空中に浮いたアンダーボディを指さす。
「ありがとう」
それに手を伸ばし、握ってみる。
グリップの大きさも、構えた時のバランスもちょうど良い。
重さに関しては、オルグのアッパーパーツ待ちにはなるが、それを差し引いても素晴らしい出来だ。
素人の木工細工とは、比べ物にならない。
「素晴らしい出来だよ!エンヴィ」
『それは良かった。これで木も無駄に切られずに済むのね』
そう言って、私の足元を指さすエンヴィ。
その先には、アンダーボディのなり損ねが、いくつか転がっている。
『あんたがこのレベルになる頃には、いくつの森が消えちゃってたのかしらね』
痛いところを突かれる。
その通りだ。
やはり、餅は餅屋。
アンダーボディも頼んでしまえばよかったよ。
「エンヴィ。これはどうなってるんだ?木くずが集まってたようにしか見えなかったが……。」
手に持ったそれをいくら観察しても、木くずがどうやって形を保っているのか分からなかった。
『あたしたちはね、人みたいにモノを作ったり、それを使い続けるってことはしないわ』
言われてみれば、エンヴィは旅の間も荷物を持ち運んでいるような様子は見られなかった。
それに、毎日、着替えもしているが、服のストックもどこから出しているのか知らないな。
ハンネが、エンヴィ用のクローゼットを用意しているが、そこには入っていないデザインの服を着ている日もある。
『それでも器が使いたいときもあるのよね』
「どうするんだ?」
『魔力をイメージした形にして、モニャモニャするの』
「モニャモニャ……。」
『そう。モニャモニャよ』
「モニャモニャ……ね」
『まぁ、分かんないわよね。あたしもコレを人に伝える言葉は知らないからね』
「なるほど」
『あんた。妖精と話したことある?』
「言われてみれば、エンヴィとしか話したことはないな」
森なんかに行くと、フラフラと飛んでいる妖精を見かけたり、近くで触れ合ったりしたこともあったが、こうして言葉を交わすことはなかった。
『そもそもやり方が違うから、話しなんてできないんだけどね』
私の考えを見透かした……忘れていたが、考えはエンヴィに伝わっているのだ。
『思い出したようね』
「はい……。」
『あたしは、前に一緒にいた人族に教えてもらったから、こうして話しができるけど……。』
「言われてみれば、その通りだな。でも、魔力を形にできるのを知れてよかった」
『すごいでしょ』
そう言って胸を逸らすエンヴィ。
『でも、そんなに難しくはないのよね。あんたたちもやってることだし』
「もしかして、火や水を出すのと近いのか」
『当たり。ちなみにそれは魔力をそのまま固めたのよ。木くずを混ぜたから、強いと思うわ』
エンヴィは、この世界でFRPやカーボンのようなことをやったと言ったようだ。
『エフなんとかってのは知らないけど、あんたが思ってるとおりなんじゃない?』
「そう言えば、エンヴィは何をしてたんだ?」
『あの大きい木の近くは、スゴく安らげるのよね。たまに、枝でお昼寝をしてるのよね』
「領事館の庭にある樫の木だな。立派なものだ」
さて、欲しいものも手に入ったし、仕事に戻るかな。
『そうだった。ヴェーダに呼んできてって言われてたのよね』
「なら、急がないとだな」
作業した場所を軽く片付けて、執務室へと向かった。




