↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役に生まれたのなら、徹底的に悪の道を貫いてやる!  作者: 鈴木ハルカ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
105/106

アルベドの手 5


 「メインの後に出すのもなんだが、コレも戦利品だ」


 トロストが出したのは、ライフル銃だった。


 「ライフル?!どこでコレを」


 「ライフル?そういうモノなんだな……まぁ、いい。視察の帰りに襲われたのは報告したが、襲撃者が使っていたものだ」


 色々と問いたいことがあるのだろうな。

 しかし、それに答えることは……。


 「異世界の技術だな……向こうでは鉄の玉を、火薬というもので飛ばすらしいが」


 ゼノが事もなげに言ってしまった。


 「そういうことだ……うぅん」


 トロストからライフルを受け取る。

 デザインは古く、二次大戦くらいのガーランドというモノに似ていた。


 木製のアンダーボディに、金属の銃身とアッパーボディ。

 薬室やボルトにあたるものは無く、トリガーのみ取り付けられている。


 ライフル銃に魔力の残滓を感じるので、射撃には魔力が必要なのは分かった。


 「こいつは……世界をひっくり返すゲームチェンジャーになるな」


 構えて照門に照星を合わせる。


 「どういうことなんた?陛下もそう言っていたが」


 トロストが少し焦ったように、問いかけてきた。

 

 「皆。少なからず魔力を持っているだろ?」


 「そうだな」


 「魔法を使うとなると、同じ魔法だとしても研鑽を積んだものは、少ない魔力で発動させられる……そこまでは知っているか?」


 ゼノとエンヴィはウンウンと頷いていたが、他の者はよく分かっていないようだ。


 『これはスゴいわね。使う魔法の魔力をぴったり同じになるようになってるわ』


 「エンヴィの解説通り、研鑽を積む必要なく、無駄な魔力消費が抑えられる……この魔道具さえ使えばな」


 エンヴィはいたく気に入ったようで、ライフル銃にまとわりついていた。


 「あぁっ!?だからか」


 ダレンが声を上げた。

 そのことに、皆が驚く。


 「すみません。演習施設の端に的を置いた場所が見えたので、案内の人に聞いたところ、魔法の訓練との説明だったのです」


 ダレンが、そこまで一息に話した。


 「何か感じたのだな」


 私の問にダレンが頷く。

 

 「魔法の訓練にしては、直撃跡が小さかったので疑問だったのです」


 「と、なると……カメリアは訓練に必要な分の量産を終えていると見ていいのか」


 頭を抱えたくなる。

 星屑メモリーズの設定に、そんなことが書かれていた記憶はない。

 となると、私と同じ転生者なのか、召喚者なのか、どちらかは分からないが、技術をもたらしたものがいるのだろう。

 

 そう言えば、魔族領のエレベーター……問うてみるか。


 「ゼノ。魔族領にも異世界から来た者がいるのだな」


 「いた。が、正しいな。なぜ、分かった。我、妻よ」


 「妻ではない!……エレベーターだよ。それにホテルだな。確証を得たのはライフルだがな」


 「そうか……お前もなのだな」


 自分で口を滑らせてしまったことに、ゼノの指摘で気づいたが、後の祭り。

 肩を竦めてみせるしかない。


 「そうだよ。私は向こうの世界から来た」


 「マジかよ!……なんてな。そうじゃないかとは思ってたがね」


 私の告白に、トーマスがそう言った。

 付き合いが長いだけに、どこかで気づいたのか?


 「カニアから一緒だったんだ。それに、白狼のやり方は斬新すぎたよ」


 そう言って、私に笑いかけた。


 「いやいやいや。フリーデリケが異世界人?!」


 トロストとダレンは、呆然としていた。

 ヴェーダには話していたが……あれ?ハンネは驚いていない。


 『人族は、魔力が見えないってホントなのね』


 呆然とする二人の周囲を、フラフラとエンヴィが飛びながらそう言った。

 魔力で色々と判断をする妖精に、私がどう見えているのだろうか気になるところだ。

 

 ◆


 私のことは、既に結城結奏とヴェーダの件で語られているが、改めて、妖狐のメンバーにも話して聞かせた。


 「下らない男だったのね……」


 マリアンヌが、ボソリと呟いた。

 マリアンヌだけではなく、話しを聞いた皆が一様に暗い顔になっている。

 

 「何を落ち込んでおるのだ。あくまでも、ここに来る前の話しだ……今は皆をこき使っておるのだ、以前の私のようになるなよ」


 「それもそうだな……オレっちは、次の調査に出る。また、ケヤキ亭でな」


 トーマスが気を利かせて、わざとぶっきらぼうに振る舞い、執務室を出ていった。


 「我が共に居ればな……。」


 「東京が火の海に沈んでたな」


 「東京?」


 「そういう、地名があるんだよ」


 「そう言えば、我が領に訪れたものも、そんな地名を言っていてな……何だったか」


 ゼノの元で、その知識を振るっていた者も、日本人だったようだ。

 エレベーターのような構造物や、ホテルのようなサービスに、銃火器にも詳しい。

 そんな人物か……。


 「とりあえずは、トーマスの調査が終わるまでは、各自、通常業務に戻るんだぞ」


 「そうだ……な」


 トロストがようやく声を出した。


 「ほら。行った行った。それとも、トロストとダレンはケツを蹴られんと動かんのか?」


 二人が自分の尻を押さえてギョッとした顔になる。


 「ダレン。修練場を見に行こう」


 「で、ございますね」


 そそくさと、二人の武官も部屋を出ていった。


 「ハンネ。皆にもお茶を」


 「はい。お嬢様」


 「ゼノも、そちらにかけてくれ。マリアンヌと、ヴェーダも少し休んでいくといい」


 『甘いのもあるかしら?』


 「エンヴィは、そればっかりだな」


 「さっきも、ハンネさんから、キャラメルもらってたじゃない」

 

 「妖精って太るのかしら?」


 マリアンヌが興味深いことを言った。

 丸々とプニッとした妖精か……それはそれでカワイイな。

 

 ハンネの準備が整うまで、私はライフルを調べていた。

 トリガーガードを引き下げ、トリガーグループを引き抜くと、レシーバーとバレルが木製のアンダーボディから外れるようになる。

 M1ガーランドと、全く同じ構造になっているが、レシーバーの構造だけが違っていた。


 ボルトは無く、給弾する構造にはなっていなかったが、薬室にあたる箇所に、魔法陣か彫られた金属棒が入っている。


 『何それ?』


 両手でビスケットを抱えて飛んでいるエンヴィが、私の手の中の金属の棒に興味を持ったようだった。


 「陣が掘られているんだ。この陣に見覚えはあるかい?」


 『人族の魔法はよく分からないわね。ゼノは分かる?』


 「どれ、見せてみよ」


 「投げるわよ」


 断って、ゼノに金属棒を放り投げる。

 皇龍殿は空中でうまく掴むと、それをしげしげと眺め始めた。


 「素材は魔導銀だな」


 銀と魔鉱石との合金で、魔力の導体としては最高クラスの金属だ。


 「この陣は……魔力を定量で放出するものだな。引き金を引くことで、陣が完成するのだろうな」


 「なるほどね。良く考えられてるな」


 「しかし、これは……。」


 手の中の金属の棒をじっと見つめ、ぼそりとゼノが言った。

 

 「何か心当たりでも?」


 私の問いに首を振る。

 

 「いや、ありえんな……あやつは何百年も前に死んだのだ。今更……な」


 ゼノは、少し寂しそうな顔をした。


 「それは、もしかしてタモン様の?」


 ヴェーダが話に割って入る。


 「そうたが……娘。よく知っていたな」


 エンヴィのお世話をしていたヴェーダが、ソファから立ち上がったかと思えば、床に膝をつく。


 「ヴェーダ・グーデリアンと申します。陛下」


 そう言ったヴェーダは、人に擬態していた魔法を解いた。

 

 「なるほどな……それで知っておったのか」


 名と姿を見て、得心したようだが、私にはさっぱり見えてこない。


 「少しは聞かせてくれるのか?」


 「乙女の秘密を探るもんじゃないわよ……とは、言えない状況ね」


 お茶を楽しんでいたはずのマリアンヌも、興味津々なのだろう。

 魔族領への旅から、気にはなっていたことだ。


 「魔族領でグーデリアン家と言えば、魔道具の製作で無の通った家柄だ」


 「始祖は、それこそタモン様の研究に携わっておりました」


 ゼノの言葉をヴェーダが引き継ぐ。


 「しかしだ……禁忌としたタモンのいくつかの研究に手を出し合ってな」


 「私の父でございます」


 「そこで、爵位の剥奪と、それに携わった者を粛清した」


 「当然の報いでございます……金に目の眩んだ者の末路」


 そう言ったヴェーダの顔には、何の感情も浮かんではいなかったのに対し、粛清した側のゼノの方が、少し悔いているように感じる。


 まぁ、家のことだ。深くは聞くまい。


 「その生き残りが、古の書物を解読したか、持ち出したとは考えないのか?」


 当然の推測を口にする。

 

 「そんなはずは……無いとは言えんな。全てを灰にしたと思っておったのだか、こうして娘は生けておる」


 自身の甘さに歯噛みしているようだ。

 そして、手にしていた金属の棒を私に放る。


 「私は我が領にて、あいつの残した文献を確かめる」


 ゼノの表情が引き締まる。

 

 「何故。タモンはライフルを、世に出さなかったのだ」


 ゲームチェンジャーとも言える代物だ。

 世に出したなら、パワーバランスは魔族側に傾いたことであろう。

 

 「何と言っておったかな……そう、ロマンがない。そう言っておったぞ」


 「人族は、ロマン主義に助けられたのか……ははははっ」


 私はひとしきり笑うと、ゼノの様子が少しおかしいことに気づく。

 

 「確かめたら……また、来てもよいか?」


 天下の皇龍が、もじもじと遠慮がちに聞いてくる。

 先程の引き締まった顔はどこへ行った?


 「話しは聞かせてくれ……だが、嫁にはならんぞ?」


 「良し。すぐに確認してくる」


 喜びの声を上げ、ゼノの姿は掻き消えた。

 ほんの僅かな魔力の放出で、ポータルを使われると、実力差をまざまざと見せつけられたようで、癪に障る。


 「まるで、恋する少女ね」


 マリアンヌが呟いた。


 「私か?」


 「やぁだぁ〜。あんたじゃないわよ。皇龍様」


 「恋する乙女と言うのは、あぁなるのかね」


 「初々しくて、むず痒くなっちゃう」


 さて、ゼノの調査を待ってはいられない。

 カメリアの軍部が掴んで離さない人物を、特定しなければならなくなった。

 世に出てしまったら、パワーバランスは一気に崩れ、西側諸国連合ではなく、カメリア一強となってしまう。


 ハイデルで開発を急がせたとしても、それを運用するには時間が足りない。

 再び、戦線が開かれる前に……。 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。