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useless  作者: ンジャメナ
第一章 落ちこぼれの下克上
8/9

ユースレスの狂人

2035年6月11日(月) 20時18分

渡の家に戻るなり橘は背中に背負っていた袋を床にゆっくりと置く


「えーと……その袋の中身は何かな?」


市は大きな黒い袋を持ってきた達也に質問する。

その言葉に達也はフッと鼻で笑い


「確認すれば済むことだ。一々説明する必要があるか?」


達也は市を睨みつけながら威圧する。

最初の様子からして達也が市をよく思っていない事はわかっていた。

たしかに警戒するべき人物だが、俺は市を庇うことにした。


「達也、まあそう怒るなよ、すまないな。達也は親しい人間以外には優しくない奴なんだ」

「え?ああうん 気にしてないから大丈夫だよ」


市は笑顔を作り直し、俺に向けてくる。本当に笑顔が似合う人だとは思う。

顔も良いし透き通るような紫の瞳、そして綺麗に手入れされているであろう髪

違和感がないほどまでに張り付いた作り物の笑顔がなければ好みのタイプだ。


市と会話していたときに京輔が袋の中身を見る。


「マジかよ……達也……」


京輔の顔がどんどん青ざめていくのがわかる。ヒロも袋の中身を見る。

中身を見たヒロはゆっくりと顔を袋から逸らす

この時、俺は達也の「お前の恋人にでも聞くとするか」という言葉が頭の中で浮かんでいた

まさかと思い、俺も袋の中身を見に行く。達也に常識があるならばありえないはずだと頭で考えながら



大きな黒い袋の中には手足が縛られ目隠しと布の猿轡をされている女性が入っていた。

その女性は気絶しており、寝息を立てている。


「「「………………」」」

「え?え?どうかしたの?」


俺や京輔、ヒロは絶句した。市は袋の中身を覗こうとしている。

そうだったのだ。この男には常識などなかった事を俺達は忘れていた。

前の件も前々の件も橘達也という男は目的の為なら手段を選ばずに行動をする男だと言う事を


「橘くーん……この子どうすんの……」


思わず俺は呟いた。その言葉に達也は嬉しそうな表情を浮かべた。


「そこで寝てる奴次第だな」


と蜂須を指差しながら達也は嫌な笑みをする


「また始まったよ」

「達也先輩って本当に卑怯で最低ですね」


その言葉に京輔は呆れてしまい。ヒロは露骨に達也を軽蔑した。

俺も何か言おうとしたが、色々とめんどくさそうなのでやめておく。


「さて、そいつを起こさないといけないな……渡、隣の部屋を借りるぞ」


達也はゆっくりと立ち上がり、気絶している蜂須の元へ寄った。倒れている蜂須の頭を片手で持ち上げた。


「何が最低だ。お前のやってたことも相当だろうが」


と蜂須の頭の傷と床を指差しながらヒロを睨む。

睨まれたヒロは汗をかきながら目線を逸らしている。そして逸らした先の目線を俺に当てて

(助けて)と露骨な視線をぶつけてくる。俺はヒロに対して口パクで「自分でなんとかしろ」と返した。


「達也だけじゃ心配だな」


京輔はそう言いながら達也の後をゆっくりと追う。

俺も京輔と達也だけでは不安なので行こうとしたが、市をこれ以上放置するわけにもいかないのでやめた。俺は市と向き合い、聞き忘れていた事と気になることを質問することにした。

京輔と達也が蜂須と袋の中で眠っている女性を隣の部屋へ


「市、いきなりで悪いけど。君に聞きたいことがあるんだがいいかな?」

「へ?ああ、うん。いいけど……」


いきなり声をかけられた市は一瞬変な声を出すが、すぐに普段の声へ戻る。

ヒロは相変わらず態度がおかしいが気にしない方向で話を進めよう。


「まず君のその身のこなしは只者じゃないよな?……それこそ武術を嗜んでる程度じゃない……どこで何をして生きてきたんだ?」

「渡君って私に興味あるのかな~」


真剣に質問した俺に対して市は悪気もなく話を逸らそうとしている。

めんどくさくなったが、彼女の情報が少なすぎるので再度聞くことにした。


「こんな時にふざけないでくれ……その実力は武術を嗜んだってレベルじゃない」

「え~……でも本当なんだけどなぁ~」


どうやら答える気はないみたいだ。これ以上この質問をしても誤魔化されるだけだ。別の質問をすることにしよう。もっとも京輔がいれば簡単だが、京輔の能力は使いどころを選ばなくてはいけない。聞きたい事は沢山あったが、しょうがないので1つだけどうしても気になることを質問する事にした


「まあいい……もう一つ質問あるんだが、これだけは答えてくれないか?」

「ん?一体何かな?」


市はニコニコと笑みを崩さない。それどころか興味津々な目で俺を見てくる。


「初対面の時、何故俺にだけに敵意を向けなかった?」

「……どういう意味かな?」


俺の質問を聞いた市は一瞬だけ硬直したが、すぐに俺に言葉を返してくる。


「そのままの意味だ」


俺は冷たく市にそう言った。

市は俺の時の態度とヒロや達也と京輔に対する態度が違うのだ。市を初めて見たとき、俺は市の作られた笑顔に恐怖を覚えたが、ヒロや達也の反応は違った。達也が人を警戒するのはいつものことなのだが、あれほど嫌うのは異常だ。ヒロにいたっては怯えている風にも見える。京輔は気がついていないみたいだが


「まあこれは俺の単なる妄想の可能性しかないが……本当はどうなのか教えて欲しい」


俺は市に顔を近づけながらそう言った。だが何故か市は驚いたような顔をする。そして少しするとクスクスと笑い始めた。そんな市を見ながら俺は思わず「どうかしたのか?」と言ってしまう。後ろにいたヒロが俺の肩に手を乗せ


「渡先輩って本当にこういうの苦手ですね」


とヒロは言った。確かに俺はこういうのは得意ではなかったのでこういうのは京輔に任せていた。

だが今回は何の問題もないはずだ。


「渡君って本当に面白い人だね」


と市は笑いながらそう言った後に立ち上がり、俺の耳元に顔を近寄らせ


「近いうちにわかるよ……私は渡君の味方だって事が」


と優しい笑顔のまま囁いた。その言葉に俺は思わず「どういう意味だ」と言いそうになったがやめた。このときの俺は嫌悪感を覚えたからだ。藤原 市という人物に



―――――



時は少し巻き戻り、枠谷京輔と橘達也が蜂須と袋の中の女性を隣の部屋に運んだところまで遡る。

京輔は蜂須を再度縛り、床に寝かせる。達也は誘拐してきた女性を袋から取り出した。

女性も床に転がせた後、蜂須の側に近寄り、蜂須の腹を蹴った。


「うぐッ!!」


蜂須は無理矢理蹴り起こされ、口を手で押さえていた。


「夢は見れたか?蜂須とやらよ……」


無理矢理起こされた蜂須は頭が回復していないのか虚ろな目線を達也と京輔に向ける。

少し周りを見渡しながら震えた声で喋りだす。


「ここは……俺はたしか……」

「テンプレみたいな事を言うんじゃねえよ」


(たしか……御手洗に殴られて……)


「お前は女に嫌われる体質でもあるのか?それともただ単純に弱いだけか……A級も名だけだな」


その言葉に蜂須は達也に敵意の視線を向ける。


「……よほどA級と言う名がうらやましいと見える」

「態度だけは立派だな。状況を理解してないのか?」


煽るような口調で喋る蜂須に呆れた口調返す。達也の言葉に蜂須は隣に顔を向けた。隣で寝ている女性が誰なのかを確認した蜂須は表情が変わる。達也に向けていた敵意の表情が驚愕に変わった。


「何故彼女がここにいるんだ!」

「俺が無理矢理連れてきた」


蜂須の言葉に間を空けず達也がそう言った。


「か……彼女に何をする「少し痛めつけるだけだ」

「ちょっと待て、そういうやり方は賛成でき「お前は黙っていろ」


達也は蜂須の動揺の混じった声には淡々と返し、京輔の言葉には威圧するように遮った。

思わず京輔は自身の頭に手を当てた。


(こりゃあダメだな、渡を呼ぶか?……止められるわけないか……リーダーが居れば簡単に止めれるんだが、仕方がないな……黙って様子を見るとするか)


ため息を付きながらココアシガレットを一本取り出して咥えた。


「じ、自分が何を言ってるかわかっ「うるさいぞ」


達也は少しだけ声に怒りが混じり、蜂須の側にいる女性の右腕を掴んだ。


「や、やめろ!!」

「どの能力も使い方次第で残酷な能力にもなる……後悔するなよ」


と達也は言いながら女性の右腕に自身の腕を軽く振り下ろした。

達也の腕とぶつかった女性の腕は豆腐みたいに簡単に切断されてしまった。

達也の能力のおかげで切断された腕からは血が流れず、女性は目を覚まさないが、その出来事は気絶から復活したばかりで働いていなかった蜂須の頭を一瞬にして覚醒させた。

京輔は止める事はせず、ドン引きという言葉が合うであろう表情で達也を見ている。


「うああああああああああああ!!」


蜂須は大声を上げながら達也に飛び掛ろうとするが、縄で縛られているため飛び掛ろうにも転んでしまった。そんな蜂須を見てやれやれと言わんばかりに


「騒ぐなよ」


と言いながら達也はニヤニヤと笑みを浮かべた


「俺の能力は少し便利でな。切断も治療も合成も得意なんだ……」


そう言った後、達也は切断した腕を掴んで床と同じ物質に作り変えた。

そして作り変えた腕を床に埋め込み、合成させた。合成された腕は床と混じりあい、跡形もなく消えてしまった。


「たちばなああああああああああ!!」

「おー怖い怖い、本来なら怒る所はもっと前だというのに……沸点がわからない奴だな」


蜂須は我を忘れて縄がなければ今にも襲い掛かりそうな状態で達也に怒鳴っている。

自身の大切な人が目の前で傷つけられれば当然の事だろう。渡とヒロも怒声を聞いたのか扉の隙間から心配そうに覗き見ていた。


(そんなに心配なら止めてくれよ……)


渡とヒロを見ながら内心そんな事を思った京輔だった。

覗き見ている二人に救援を求めるサインを送ると最速で首を横に振られた。

思わず再びため息を大きくついてしまう。それと同時に達也は飛び掛ろうとする蜂須に対して顔面に蹴りを入れる。顔面を蹴り飛ばされた蜂須は再び達也に向かおうとするが、焼き直しの様に再び蹴り飛ばされる。そんな状態を何度も何度も繰り返されて蜂須も反応が薄くなっていった。


(絶対目的忘れて楽しんでるだろ……こいつ……仕方ない)


いつまでたってもらちが明かないので京輔は達也を止めることにした。


「そろそろやめろよ達也、目的忘れんな……また気絶させる気かよ」


その言葉に達也はピクリと反応し、足を止める。少し考え込んだ後に表情が元に戻り、京輔へ近寄った。


「すまない やりすぎたようだ。」


と一言京輔に謝罪した。


(やりすぎたってレベルじゃねーけどな)


「謝罪よりその子の腕を戻して頭冷やして来い」

「ああ……そうするさ」


達也は黙って言われた通りに女性の腕を能力で元に戻し、部屋から出て行った。

出て行った少し後に2発何かを殴る音が聞こえたが、京輔にはそれがなにか理解していた。


「さてと……邪魔者は消えた。俺もやるべき事をやるかな」


達也とヒロのせいでボロボロになった蜂須を見ながらそう呟いた。

最近忙しいですが投稿

キャラ紹介&状況説明は10話投稿後に投稿します。

世界観説明と学校や能力者の説明もその時ですかね

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