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必殺のグロース—最弱からの急成長―  作者: ヒラメキカガヤ
第八章 限界は打ち破られた
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95/128

Lv95 ライバル

「2対2なら、文句ないよね!!」


パンドラだけでも厄介なのに、一番来てほしくないやつが来た。


「カナトお兄ちゃん! 遊ぼう!!」


「藤井くん!」


「『ライゲキ』!」


頭上に迫る蒼雷。


「ガキにはまだ早いんだよ! このシリアス展開は!」


「すごい…すごいよ! めちゃくちゃ強くなってる!!!」


受け止めて、咄嗟に確認する。『真紅の剣』に綻びがないか、腹や腕に穴が開いていないか。


無傷だった。


こいつには何度もやられてるから、潜在的にビビってたけど…。


今の俺なら。


「鍵パイセン!!」


やってやるよ。


「今から、このクソガキをネンネさせてくる! それまで耐えてくれよ!!」


「君に心配されなくても、きっと大丈夫! むしろ君こそ、死なないでよ」


弱そうなくせに強そうな先輩が、照れくさそうに頭を掻いた。


「藤井カナト、僕は君を信じている! 戦友だ!」


「いや、それはいいかな。別にあんま喋ったことねえし」


「そこは空気読んでよ!!」


あの冷徹シスコン水無月が、この人を親友扱いする理由がよくわかったよ。


…じゃあ、俺も。


「始めるか、クソガキ。俺とお前の、最後の喧嘩だバカヤロー!」


『格闘全振り成長《ビルド・インファイター》』。


『真紅の剣』を変形させろ。


パンドラみてえに、変幻自在に。


溶かした『真紅』を、両手と両足に纏え。


そして思い出せ。


メスガキと仮面に叩き込まれた肉弾を。


身軽な動きと重い攻撃。徒手空拳(としゅくうけん)を再現しろ!



△△△



なんかよく分かんないや。


僕が闘ってる理由なんて、闘うのが楽しいからで、一緒に遊んでほしくて。


さみしいよ。


だから初めて、カナトお兄ちゃんを見たとき、ワクワクしたんだ。


遊べるんだって。


また一緒に、ビリンビリンに楽しめるんだって。


かわいそう、なんかじゃないもん。


『この子だろ?』


『師範…この子の父親でも止められなかったなんて』


『早期レベリングなんてしなきゃよかったのに』


『英才教育の罠ね』


『かわいそうな子』


「ちがう…」


『ご両親、お兄ちゃん、お姉ちゃんもみんな、バラバラだったって』


…。


パパだってママだって、お兄ちゃんもお姉ちゃんも…また僕のもとに来てくれるもん!


カナトお兄ちゃんだって、僕とずっと一緒に…。


「『連続のライゲキ』!!」


パンチとかキックとかが、全部。


「っと、あっぶねえ!」


手で、受け流される。


「こちとらメスガキとシスコンで鍛えられてんだよ」


意味わかんないけど、強くなってる。


投げ飛ばされて崩された体勢。


手をついて、


「『コマのライゲキ』!!」


足につけた蒼でブンブン振り回すけど、それも腕で防がれた。


それなら…それなら!


「『おっきいライゲキ』!!」


絶対に当てる!


まっすぐの、蒼い雷。


パパが褒めてくれた。お兄ちゃんが才能だって言ってくれた、これで!


カナトお兄ちゃんのお腹をまたブチ空けて、目が覚めたらまた遊ぶもん。


当たった。


そう思ったのに、寸前で避けられた。お腹をきゅっと逸らしただけで、避けられた。


「おいていかないで」


「うっせえ、ガキ」


服を掴まれた。


「っ! …『ライゲ』…うわぁ!!」


力任せに投げられる。


なんで…みんな…。


「相手がいつまでも弱いとか、互角なままだと思うんじゃねえよ」


「違うもん! 僕とカナトお兄ちゃんはずっと一緒だもん!!」


「お前と一緒くたにすんなよ。俺は俺だ! そんでもって、俺はいつまでも急成長すんだよ!」


うるさい…。


「うるさいうるさいうるさい! 僕だって…僕だって!!!」


鼻と目が染みる。


「もういいよ」


いっぱいいっぱい、エナジーを溜めてあげるんだから。


「カナトお兄ちゃんも! パパ達みたいに死んじゃえ!!!」


掌(てのひら)に、溜めて、溜めて、溜めて、溜めて、溜めて、溜めて、溜めて、溜めて。


お祭りで見たお月様の光みたいに強く、広さをぎゅっと縮めて、心臓を貫いてあげる!!!


「『最高のライゲキ』」


パパの拳よりも、銃よりも、雷よりも、お月様の光よりも、真っ赤な怪獣さんよりも、速くて鋭い『蒼』。


動けないよね。


視線も動かせてない。反応できないよね。


降参だよね?


また生き返って、僕と遊ぼうよ。


どこにも行かないでよ。


…。


手が、動いた。


僕の蒼と、カナトお兄ちゃんの真っ赤が、ぶつかった。


渾身の『蒼』を、握っていた。


それでも僕の『蒼』の方が強くて、カナトお兄ちゃんの腹に届く。


僕の勝ちだ…。


やっと、そう思えたのに。


カナトお兄ちゃんは、僕の思いっきりの力いっぱいを掴んで、


「こんの…あほんだらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


ぶわーって、真っ赤が広がっていく。


それを、僕が今見せた雷みたいに、ぎゅっと手に集めていく。


ぶるぶる震えるカナトお兄ちゃん。僕は自分が撃った『蒼』を見守る。


…どうなるんだろう。


あれが当たったら、カナトお兄ちゃんは死ぬのかな。


「なんでだよ…消えろ、消えろ!!!」


なんで思い出すんだよ。


壁にぶつける頭が、まだそれを映してくる!


「パパ…ママ…助けて…」


でも、みんな。


「お兄ちゃん…お姉ちゃん…」


ぐちゃぐちゃに。


僕が。


遊んでって言ったから。


加減できなかったから。


みんなと一緒に、遊びたかっただけなのに。


昔みたいに。


雷がなかった時みたいに、遊んでほしかっただけなのに。


そうやって僕はまた。


好きな人を、ぐちゃぐちゃに…


「嫌だ…嫌だよ…カナトお兄ちゃん…行かないで」


「んだぁぁぁ!! おらあ!!!」


カナトお兄ちゃんが腹の中心に迫る『蒼』を何とかずらし、わき腹に僕の『ライゲキ』を担ぐ。貫通して、わき腹がちぎれていく。血が出てくる。


嫌だ。


嫌だよ!!


「カナトお兄ちゃん!!!」


カナトお兄ちゃんは、どこかで見たことのある昔のスポーツみたいに足を開いた。


「熱血先輩型成長《ビルド・ホームランバッター》!!」


足と腰にも、 真っ赤が集まる。


「インターンシップであの人の見てから、やってみたかったんだよな!! こういう豪快なやつ!!!」


「カナトお兄ちゃん…」


「感謝だぜ、火野エンジ(マブダチ)! …これが俺の、『急成長超絶熱血満塁弾《スーパーグロースグランドスラム》』っだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


僕の『ライゲキ』を、遠くへ投げ飛ばしてしまった。


天井に空いた穴の横。


そこに当たった僕の『ライゲキ』が、新たな穴を作り、二つの穴が合流して、オレンジの日差しが大きくなった。



△△△



『ああ、そうそう。あいつの話なんだけど』


11月のメンテナンス中。


飽田のクソ野郎の言葉を思い出す。


『パニッシュは、お前のこと、かなり気に入ってるらしいぜ。お前が弟にしてやればいいんじゃねえか?』


こいつの生い立ち、みたいなのを聞いた。


家族を全員、こいつがぶっ殺したってのも。


だからって、俺にどうしろってんだよ。


気に入られてるのとそれは、違うだろ。


「行かないで…」


引かれる袖からは戦意を感じない。


弱弱しく、立ち尽くす。


もうこいつは、俺を上だと思ってる。互角に戦えないと思っている。


「…だからどうしろってんだよ」


そんなさみしそうな目をされるのは初めてだ。どいつもこいつも、俺のことを見下したり軽んじたりしてきたから、こんな扱いは慣れてない。


「カナトお兄ちゃん…、嫌だよ…僕は…僕は…」


仕舞いには大粒を漏らす始末だ。


…。


…。


ああ、もう!


クソガキが!!


「わーったよ!!」


腰を下ろす。


根負けだ。


しつこく付きまとわれるのもなかなか疲れるもんだな。リョウの野郎もよく、俺にしつこいとか言ってたっけか。でも俺はしつこくないだろ、別に。


「俺の勝ちだし、俺は帰る」


「嫌だよ…うわぁぁぁぁ!!!」


「だから最後まで聞けよ! ガキ!」


俺が言いたいのは。


「お前も一緒に来い」


「え」


きょとんと、無邪気な顔で首をかしげる。強いくせに、か弱い顔しやがる。


「今日から俺とお前は、ライバルだ」


「ライ…バル…?」


「ああ、ライバル。対等で、互角。一緒に強くなる関係」


ガキのクリっとした大きな目に、光が宿る。


「俺はイージスを目指す男だ。だからお前も、それを目指せ。そういうバチバチ…いや、ビリンビリンな勝負を、一生やってくんだよ。俺たちは」


「…うん!!」


次は、別の意味合いで、大粒をこぼしやがる。


なんか、約束しちまったけど、大丈夫か。


俺もこいつも、やべえ存在扱いされてるテロリストなのにな。


まあ、世間が許そうが許さまいが、俺の価値は俺が決めるし、こいつの価値もこいつで決めさせてやる。


「ありがとう、カナトお兄ちゃん! 大好きだよ!!」


「…っおい! 抱きついてくんな! まだ俺はお前のことが怖えんだよ!!!」


「一生離さないよ!!」


「離れろ! 最低でも三日に一回くらいの頻度でくっついて来い!!」


いつあの『ライゲキ』が飛んでくるか分かったもんじゃねえ。『急成長』を解いたら急に痺れたりしねえよな?


「カナトお兄ちゃん…」


「…なんだよ、急に落ち着きやがって」


「イージスって、なに?」


「…はぁ、そこからかよ」


悪魔的な戦闘狂、パニッシュとの、半ば一方的な因縁。その因縁に、ようやく決着がついた。

パニッシュの渾身の『蒼雷』をわき腹に抱えている時点で、カナトはそれをそのまま後ろに受け流すことができたのですが、カナトはパニッシュに強さを見せるためにあえて受け止め、ぶん投げました。

自分の命を何度も脅かしたけど、幼い子供を正しい道に導きたいと思っての行動だと思います。


抉れたわき腹はタナトのエナジーによる『超再生』で治ってます。

いつの間にか、カナトがチート級の一歩手前まで急成長していて、作者もビビってます…

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