Lv84 半端モン
「F地区3年・西宮コンジ。うちは見抜いてたで、君の才能」
ホンマ。
どうしてこんなことになっとるんや。
『浄化演習』のメンバーに選ばれたはずなのに、ヨウコちゃんトコいける思うたのに。
招集されたのは、E地区の『最高権力議事堂』。イージスや国玉、千陽家(初代『太陽』の家系)、神無月家(初代『月』の家系)などの要人たちが集い、会談を行う場所。
そんな場所に、僕のような一介の中学生、それもエリート集団のA地区でも何でもない、『上位地帯』とはいえどF地区の一般人が、こんな場所に通されている。
とんだもの好きやな。この人は。
財玉・金成樹。
「君は、うちの商売道具の『紙』をたくさん買うてくれる、そんでもって、君は同郷のよしみやから仲ようしたい、いうだけやないで? 買うてるのはうちもや。買うてるのは君の『スキル』。君なら、打破できると思ってん」
「言うてる意味が…よく…」
あかん。
呂律が回らんくなる。
喉がカラカラや。
財玉だけやない、軍玉の大城裕子も僕のツラ見てなんか笑うとる。
ここにイージスと司祭玉・文明玉が出席していたら、今ごろは失神しとったんとちゃうか…。
「君の才能、うちらで使わせてくれへんか?」
その言葉を皮切りに、何やら地面が揺れるような音が、どたどたと騒がしくなり、次第にそれは大きく…近づいてくる。
「紫頭くん」
軍玉さんが手を上げると、彼らは精鋭軍人のごとく足を数回地面にたたきつけ、綺麗に整列した。
「彼らは『異能精鋭隊』。軍玉である私の直属部隊。スキルやエレメント操作を得意とする人命救助・他軍への襲撃のエキスパート。拉致された人間を取り戻すことに長けた精鋭部隊。…ここまで言えば分かるかしら? 『妖狐』の炎をも札に載せられる希少なスキル、『罠師』の西宮コンジくん。漢字登録されるなら、『コン』の部分は、『紺』、かな?」
自慢やないが、僕は昔から察しがええ方や。
8歳になるヨウコちゃんが『妖狐』になって、新たな人格に変わってしまうのも、すぐに理解できた。
もうちっとバカでおりたかった。
「『紺』やない」
そう。紺やない。
「『金』や。金治や。紺野に婿入りしても、字は被らん。…苗字も名前も紺と紺であんたの面白いようにならんで。悪いけど」
「ふふ、いい目をしている。この私の軍玉の鎧にも圧倒されない。…うん、合格だ。あとは君が、彼らを助けることを良しとするか、だ」
こちらを試すように、価値を見定めるように、僕の精神の核をのぞき込むように。
人命救助。
正直、ヨウコちゃんが拉致られてるわけでもない。ヨウコちゃんの特別仲ようしとるやつらでもない。
できることなら、ヨウコちゃんの傍におりたい。
少しでも会って、喋って、転写される前の可愛らしいヨウコちゃんに戻したい。僕のこと頼ってくれたあの子に戻したい。僕の好きやった、か弱い目つきを返してほしい。婿入りするのはそれからや。
今がそのチャンスやのに…。
『月』の子の技で、弱りきった『妖狐』を、ヨウコちゃんから完全に切り離せるチャンスやのに!
忘れもせん。あの日。
紫色の炎に包まれる小さいヨウコちゃんの身体。
『なんでや…なんでや…! ヨウコちゃんを…返せや!!』
『妖狐』なんて大嫌いや。
1000年の歴史。傍系の紺野家には今まで乗り移らんかったのに、よりにもよって、なんで今になって、なんであの子やねん。
『すまんのう、人の子。この子やないと、救えんかの』
あんたの勝手な理想に、あの子を巻き込むなや。
あの子を別人にした無慈悲なバケモン。絶対許せへんわ。
…でもそれは。
ヨウコちゃんだけやない。
その事実を、最近知ったから、知ってしもうたから…
「ムカつくねん…!」
藤井カナト君、やったっけ?
あんたも、えろう呪われて。
鍵カケル君。
他校交流会でよう話したことある男ん子。
オドオドしとるように見えて結構やり手の男ん子。でも今は、なんやホウレンソウみたいに萎れてもうて、場違いな顔つきで軍隊に混じっとる。
やめろや。その顔。
「できるだけ、あの子以外は関わりとうないのに。蓋してしもうて他人事にしたいのに」
善意いうもんが僕にもあったんかい。
なら邪魔やねん、それ。
自分が、『妖狐』や『破壊の巨獣』みたいに手段を選べん畜生やったらどれだけええか。
アホンダラ。
「やって…やろうやないの」
あんま仲ようないやつらのために命張るんも、それを許容する僕も、
ホンマ下らんわ。
バケモン以下の、半端モンや。




