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必殺のグロース—最弱からの急成長―  作者: ヒラメキカガヤ
第六章後編 月夜の抗魔大祭
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74/128

Lv74 身近

ああ、女神よ!


その歌声を、『陽光凱歌』を、ワタクシにもくれないか!!


「みんな! どう!?」


仲間に問いかける『太陽』。


「ふんがぁ!! 興奮してきたぞ!!」


『青』を自称した巨漢が、鼻血を吹き出しながら、『鋼防壁(はがねぼうへき)』のスキルを強化する。


「がはは! 突然、馬鹿らしく歌い始めたと思いきや、まさかこんな切り札があったとはな!」

「『陽光凱歌』を歌に昇華して効果の底上げ。…やるではないか、イエロースパークの俺よりも少しおバカなテリヒメよ」

「どうだ! 『赤(うち)』のテリヒメは! 筋金入りの大馬鹿野郎だ!」


「あなたたちから燃やしてもいいんだけどぉ!?」


『太陽』を愚弄する巨漢どもに、『太陽』は小児のように頬を膨らませる。


「その光は…」


全身が嫉妬の炎にジクジクと焦がれる。かぶれるように、あぶられ続け、嬲(なぶ)られる。


「その光は、ワタクシのものだあああああああ!!!!!」


殺してでも。


ワタクシが全部、手に入れるのだ。


「『八道・深淵染め《オクトパス・トゥアビス》』!」」


足を黒に染め、身体能力を最大限に!!


「『八道・太陽求愛《オクトパス・トゥヘリオ》!」


その黒を虹に染め上げ、『太陽』のごとく森羅万象を溶かし尽くす!!


「弟分どもよ! 分かっておるな!!」


『青』の巨漢の号令により、残り二人の大男たちは同意する。


大技の気配。


構うものか。


出動前のボスのご助言。


『オクト…いや、八谷正道(はちやまさみち)。君は、全身全霊をかけて『太陽』を独り占めにしなさい。邪魔するありとあらゆるを、消し去っても構わない。君に渦巻く深淵のごとき過去を全て洗い流す好機です』


あなたについてきて本当に良かった。


気に食わぬものはすべて、溶かして溶かして溶かし尽くして、暗澹たる深淵に引きずり込んでしまえ!!


「「「『三位一体防壁(トリコウォール)!!』」」」


『青』の巨漢による鋼・『赤』の巨漢による溶岩が、岩を纏う『黄』の巨漢の岩の鎧の上から、更なる鎧となってまとわりつく。その後、『青』と『赤』も集合し、標高20メートルの壁を築き上げた。


「そんな脆弱な壁、ワタクシが完全に破壊してあげましょう!!!」


拍子抜けだ。


ワタクシの粘液でボロボロと、大きさだけが取り柄の壁が、瓦解していく。


「旦那!」


オーファンのヤジを無視する。強い大義をも抱けぬ臆病者めが。


「ぐふふふふ!!! これこそが、ワタクシの信仰心! その疲弊ですと、反撃もないようですね!!! さあ、女神よ!! ワタクシとの融合を受け入れ給え!!!」


『太陽』の真似事をする『月』など、どうだっていい。ワタクシが求めるのは『太陽』のみ。


悪魔どもに失望し、自ら命を絶とうと潜った深海。


生きろ、足掻けと、海面に届いた真っ白な、『太陽』の光。


海中にいても落涙していることを自覚するほどの号哭(ごうこく)。


ワタクシがワタクシらしく、スキルを使ってもいいのだと。暴発するスキルで他者を不快にし続けたワタクシに生きていいんだと、言ってくれた貴女様に…!!


「触れたいのです!!」


一生、十生、百生、千生…肉体が変わっても、永遠に、あなたを感じていたいのだ!! あなたにワタクシを感じてほしいのだ!!!


さあ、貴女と交わり、この粘液で…


「なに…?」


いない。


いないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいない…


「な、なぜだ!!!?」


『太陽』のお姿が消えた代わりに、


「ずいぶんと気味の悪いやつかの」


狐の耳をした、小柄の女。


…『妖狐』の生き写し。


ワタクシが嫌悪する存在の1人。


「燃やされることが好きだと聞いていたから、お前の望みを叶えるために、こうしてアタチがやって来たかの」


「誰が貴様などの穢れを浴びたいか!!!」


「ちょっぴり、傷つくかの」


わざとらしく人差し指と人差し指を突いて、不機嫌な子供のように唇を尖らせる。邪悪な紫炎が持ち主の周りをゆらゆらと彷徨う。


「『太陽』は!!?」


「モテモテじゃの、テリヒメは。アタチにもちっと分けてほしいかの。くくく」


「あの御身はどこだと、聞いているのです!!!」


「教えぬ。せいぜい悩み苦しむがいいかの、下位の生物、それも半端な変身の矮躯(わいく)よ」


「なんだと…」


ワタクシの存在を軽んじるか…許さない。


「邪悪な『妖狐』め!! お前を消して、ワタクシは再び、逢瀬を果たすのです!!  また来年など、考えられない。たまらないこの思いを、成就させるのです!!! …手伝いなさい、オーファン…オーファンっ!?」


背後にいたはずの男が、いない。


「悲しいかの」


『妖狐』が和服の袖に手を当て、妖艶だが邪悪な目を細めた。


「あの男は何度もお前に忠告したが、『太陽』だけを見続けたお前は聞く耳を持たなかったようじゃな。…身近な仲間を軽んじ、身の丈に合わぬものをしつこく追い求めた結果が、今のお前じゃ。くくく、悲愴千万。手鏡を見せてあげようかの?」


「ほざけ! 勝負はまだ始まってすらいな…、あ、ああ!? ひっ、火が…ああああ!!!!」


火の粉。


砂粒のような紫に、気づけなかった。


「くく、隙ありじゃ」


拡大する。


瞬き一つすれば、砂粒のようなそれは、石の大きさに膨らむ。


それがどんどん…広がる。


肉体の内側をむしばんでくるような熱い炎。


熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!!!!


生命の危機。


焦燥。


嫌だ!!


こんな炎などで、死にたくなんかない!!!


「助けて…!!」


落涙の恥辱など感じる暇もない。


助けてください!


「ワタクシが悪かった!! 『太陽』様! 貴女と一つになりたいなど、馬鹿げた理想を掲げたワタクシが悪かった!! だから、命だけは…命だけはぁぁぁぁ!!!!!」


「ここにいない者に命乞いをしてどうするかの。…無論、そのつもりじゃ。生きぎたない章魚(たこ)めが」


すさまじい勢いで体内を食い荒らすその悪辣な紫は、心臓に到達する寸前に。


スキルが…。


「かはぁ…はひゅうっ!!」


痛い。身体の内と外が、痛すぎる。


「ははぁふ…!! ふぁぁふ…!!!」


声を出していないと、精神が壊れる。


「うげ、性器が丸見えじゃ」


緩んだスキルを、『章魚化(たこか)』を再び使わねば…。


転移石で帰還…間に合わず、押収されてしまった…。


「大剛、上着を貸すかの」


「ヨウコさん、それは無理な相談です。おっさんのブ(・)ツ(・)がついちまう。しかも粘液みたいなの付いてるし…」


「アタチの和服で拭けと? …『赤の枠組み(レッドフレーム)』の絆の見せどころじゃ! さあ一思いに、この男の丸出しの宝剣を隠してやるかの!」


「あ、ちょ…引っ張らないでください。本当に勘弁。巨山先輩、ゴウシ、知らないふりをしてないで助けてくれんか」


「お前こそ逃げるんじゃないかの! くく」


真っ暗な視界を、妖狐の嬌声と炎の残像が支配した。


『太陽』は空にも身近にも、



無かった。



△△△



「決着付けようじゃねえか」


信じられぬ!


藤井カナト。


あれほどの暴走を抑圧しただと?


「橘!」


「御意に!! 御意に!!…くそっ、足掻くな小娘ぇ!!!」


由々しき事態。


『月』とタナトが、この世の誰よりも弱き小童と小娘に支配されるなど、誰が想定しようか。


いれもの風情どもが!


「こうなれば私のスキルで。橘、こちらへ来なさ…っ!?」


「これ以上、貴様の好きにはさせん。司馬明人」


「拘束までもを…!?」


水無月オボロへの拘束も解かれた。橘があれほど挫いたはずの水無月ルナの意志が、戻ってきている!?


腰に下げた錆びた刀剣。スキル『逆行』で当時の姿、名刀・『叢雲(むらくも)』に戻し、脆弱な二刀を受ける。


「死にぞこないの『月光』が! 次は私が手を下そう」


「貴様こそ、次の夜明けに立ち会えると思うなよ、汚物」


ほざくな、『月』に漂う弱き光め!


紺野ヨウコがリーダーを務める『レッドフレーム』は、エリートの『青』、荒くれの『黄』と比べてかなりホワイトなチームです。


週一でチームメンバーが集まってご飯やカラオケ、体育館を貸し切ってドッジボールとかしてます。

テリヒメの家が所有する敷地でお泊り会をしたときは、食堂で料理を作ったり、シンプルに恋バナしたり、丸井マドカが『擬態』で一人モノマネグランプリを披露したりと、チームメンバー全員が仲良いです。ヨウコはよくテリヒメの家に遊びに行き、ミコト(テリヒメの8歳の弟)が些細なことで喧嘩したりもしてます。


「おお、ミコト。ちょっと見ない間に大きくなったかの。どれ、宿題を見てやるかの」

「うっせえ耳ババア。お前はずっとちっせえままだけどな。5年後には身長も実力も、俺の方が上になっから今のうちに態度変えといた方がいいぜ」

「な、なんじゃと!?」

「こ、こら! ミコト! 早く撤回しなさい! 小さいのがこの人の長所なんだから!」

「テリヒメ、それはフォローになってないかの…」

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