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必殺のグロース—最弱からの急成長―  作者: ヒラメキカガヤ
第六章後編 月夜の抗魔大祭
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73/128

Lv73 野望


「ふざ…けんなよ…」


まるで話になんねえナァ。


「…まだだ」


レベルは低いっつっても、『滝本レイジの弟』っつーかラァ、どんなもんかと期待してたのにナァ。


『ドラゴン』になるまでもねえ。


「終わりダァ。俺より明らかに弱いやつをいたぶる趣味はねえからナァ」


「なめるな!!! 氷塊(フロストビット)」


はいはい。


自分の身体と離れた場所、俺の周囲に300はあるだろう『氷』を顕現。そりゃすげえけどナァ。


「シンプルに、カスの集まり」


「…なんで!!」


防がなくても、無傷ダァ。


「こっちが聞きてえナァ。あいつの弟のくせして、なんでそんなに弱いんダァ? やっぱあいつはァ、生かしとくんだったナァ。つまんねえ」


「断罪氷牙(だんざいひょうが)…!」


「それも見たァ」


「これならっ!」


お?


俺の足裏に、薄氷が出来上がる。ツルっと滑っちまった瞬間に、仰向けの俺を叩きつけに来る弟。


「発想は悪くねえナァ。殺意も褒めてやる」


思わず右腕だけ『ドラゴン』になっちまっタァ。


「まあまあァ。やるじゃねえカァ。ふぁぁぁァ。あくびを中断しちまうくらいにはナァ…」


んで、そのまあまあの氷刃を連続で振ってくるけど。


つまんねえ。


滝本レイジはこんなじゃなかったァ。


レベル差もあるだろうけど、違う。あいつのムカつくくらい高い志やら魂やらと比べると…。


「まるでお粗末だァ」


いつでも折れる刀を折ってやり、


「夜も更けてきたし、ねんねしときナァ? 復讐心だけの未熟(クソガキ)」


つま先を『ドラゴン』にして腹を突き、


「ぐぅっ!!」


軽々と、地面に寝かしつけてやった。


…。


あァ?


何回やっても懲りねえナァ、こいつはァ。


またつまんねえのがしつこく絡んで来やがるナァ。俺は赤い粒子(あっち)に行きてえのに。


「相手してよ!! 僕も!! 僕も!!」


「消えなァ、もっとクソガキ。お前も話になんねえからァ」


「強くなったんだから!! そこの『氷』のお兄さんよりも! お前をビリンビリンにしてあげるんだ!!!」


蒼くてデケーだけの、つまんねえ雷ダァ。


「まずは、『おっきいライゲキ』!!」


視野を全部持っていかれるほどの広範囲ダァ。


まァ。


だから何だっつー話。


こいつ相手なら丁度、『ドラゴン』になった方がいい。それ止まりなんだが、なァ。


「『龍』になった!! なってくれた!! このまま遊ぼう! ちゃんと勝負しよ!!」


キャッキャとおもちゃを買い与えられたガキみてえにその場を何回か跳びやがる。


「『おててとあしにライゲキ』!」


蒼雷を手足に纏い、突っ込んできやがる。


「『ビリビリアップ!!』」


見たことねえ技だがァ、シンプルですぐ分かる。単純に蒼雷を強くしただけの新技。


それで俺を、


「ほらほらほらほらぁ!!!」


蹴ったり殴ったり、大暴れする。身体で防ぐたびに、爆ぜる雷撃。それが雷みてえな速さで動き回る。人間の肉体ならちょっと傷ついたかァ。さっきの滝本の弟よりかは味があるナァ。


だがァ、


『ドラゴン』になった俺、


理想の身体を手に入れた最高の俺、


まったくの、


無傷!!!


「これが『ドラゴン』の真髄ダァ。分かったら諦めろ、クソガキ。前にも言ったが、明らかに弱いやつをいたぶる趣味はねえんダァ」


「うう…ぐぅぅぅ…」


ああ、またカァ。


下を向いたガキ。


そして…


「うああああああああああん!!!!!」


その辺のガキらしく、大声でむせび泣いたァ。


「めんどくせえナァ…」


俺に突っかかって歯が立たねえと分かった途端にこれダァ。あと何回やったら懲りてくれるんダァ。


「僕、いっぱい頑張ったのにぃ!! お前と遊びたかっただけなのにぃ!!!」


「知らねえよ」


「うぅ…うああああああああああ!!!!」


周りの大木を雷撃でバリバリと切り倒して怒りをアピールするがァ、そんなの知ったこっちゃねえ。


『ドラゴン』になった中指を折りたたみ、親指で引っ掛け、それを泣きじゃくるガキの額に近づける。


「お前もねんねしときな、クソガキ」


死なねえ程度に力加減を調整して、デコに打ち付けて気絶させてやったァ。


よし、これであのバケモンのとこまで…。


「はァ?」


足が、動かねえ。


…『氷』っ!?


「しつけえナァ! クソがァ!」


固定しやがるクソうぜえ『氷』の枷をぶっ壊す。


「もういっぺん喰らいてえカァ!? アァ!? …っ」


剣を持った滝本の弟が、突っ込んできやがったァ。


さっきより、速え。


剣は、腕で受け止めるしかねえナァ!


…クソつめてえナァ!!


「キンキンに冷えたアイスバーってカァ? 身の程知らずのクソ馬鹿野郎がァ!」


「ふっ、身の程知らずか。移ったみてえだ。カナト(あいつ)のが!」


急にクソつめてえ刃ァ。


『ドラゴン』の腕に、き、傷がァ…!?


俺を後退させやがったァ。


「僕を…」


頭上。


「無視するなぁぁぁぁ!!!」


こいつもカァ!!


降りかかる蒼雷の踵を、俺の『ドラゴン』のアッパーで応じる。


さっきよりも、重てえナァ。


ビリビリのガキは後方に飛んで距離を空けたァ。


隣り合うガキども。


「ねえ、何回邪魔すれば気が済むの? 『氷』のお兄さん。僕より弱いんだから引っ込んでてよ。それとも、手足ちぎられたい?」


「それはこっちのセリフだ、ガキ。次はちゃんと敵(おとな)として認めてやるから掛かってこい。真っ二つにしてやる」


「へえ、言うじゃん」


俺を無視して睨み合うガキども。マジでなんなんだァ。


「じゃあこうしようよ、お兄さん。どっちが先にあいつを楽しませられるか。あいつに技をぶつけるんだ」


「おもしれえ。いいだろう、乗ってやる」


ようやく俺に向き直る。


「大儀も復讐も、いったん忘れる。カナト(あのばか)みてえに、闘いそのものに浸ってやるよ。『断罪氷牙・真打《だんざいひょうが・しんうち》』」


さっきの氷刃よりも鋭いだろうナァ。ひしひし、ビンビン、むくむく、黒鱗に伝わってきやがらァ。


「フライングすんなよ! じゃあ僕も! 『いっちばん強いライゲキ』!!」


俺はァ、興奮してる。鼻息が出てきやがる。


「龍狩りと行こうじゃねえか」


「一瞬でビリンビリンにしてあげるんだから!」


「へっ、ほざきやがるナァ!!」


あァ、いいぜ。


使ってやらァ。


「後悔すんじゃねえぞガキども!!」


体内の黒い粒子たちを、


「ぐぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!!!!!!!!!」


…。


「どりゃァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」


開(あけ)っ放(ぱな)っ!!!



△△△



「なぜだ…なぜ邪魔をした!!!」


S地区。


逢魔岳(おうまだけ)。


山頂。


誰もがE地区へ向かっていただろう。特にこの男は。…そう思い込んでいた。それゆえの…。


己に課した大儀。


果たしたはずの雪辱は、雪辱などでは決してなく、この身はただただ、恥辱に犯される。


我は確かに藤井寿太郎の腹を貫いた。そして、そいつを地面に倒した。


宿敵であり、我とは次元の違う男。


『魔物殺し』の異名を持つ最強の男の腹を、数多の仲間を葬り去った悪魔を、この誇り高き『獅子』の拳で貫いた。


それも、誠に不本意な形で。


割り込んできた男を見据える。


「悪いが、あなた個人の復讐(おあそび)に付き合っている暇はない」


「悪気があるのなら…」


取(・)り(・)戻(・)し(・)た(・)握(・)力(・)で、握りしめた腕。


「もっと言葉を選ばんかぁぁぁぁ!!」


踏み出した足がもつれる。


もどかしいほどに、足元だけが『脱力』。


予想以上に発動の速い『スキル』。広い効果範囲。深い効力。


頭上に『Lv50』を浮かべた痩身。


「『人間殺しの獅子王』・レオ…いや、塩生磊牙(しおうらいが)どの」


まるで小枝のように四肢の細い、見るからに非力な壮年が、淡々と口を動かし、我の捨てた名前を呼んだ。


「勝手に決闘のような娯楽は控えていただきたい」


「娯楽…だと…。我がどんな思いで…」


「知らん」


言い分を、一言で捨てられる。


「私には知ったことではない。『序列・弐』。あなたがどんなに苦しもうが、どんなに努力しようが、何の事情も知らない私にとってはそれは娯楽も同然。組織の職務よりも個人の野望を果たす者を私は許さない」


タナト教団『序列・壱』。


『ルーラー』。


統率者の呼び名を持ち、我以外の教団員からは『ボス』などとも呼ばれるこの男。


「すべては、タナトのために」


『破壊の巨獣』を至上の存在とする異常者は、


「復活したあの『真紅』。あれを止めるわけにはいかないのだよ」


ただ一つ、望む。


「司馬明人、そして『月』はよく働いてくれた。あとは…」


この世界を、『平均』することを。


「未だ不完全なタナト。藤井カナト(いれもの)を処分して完全体に仕上げる。許せ、我(・)が(・)子(・)よ」


復活したタナトでこの世界を真っ平にし、『作り直す』。


それが、この男の望み。



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