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必殺のグロース—最弱からの急成長―  作者: ヒラメキカガヤ
第六章後編 月夜の抗魔大祭
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Lv69 暑苦しい

ルナを追うカナトとオボロ。

その裏で。

S地区。


逢魔岳(おうまだけ)。


山頂。


手を伸ばせば天まで届きそうな山。1000年前、タナトを封印した際の地殻変動により、平地が隆起して出来上がったと言われている。


見下ろすと、大量の黒い粒のようなもの。どうやら『軍勢』と呼べるほどの無数の魔物たちが、E地区の方角へと向かっているようだ。


引(・)き(・)寄(・)せ(・)ら(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)、と言った方が正しいか。


「ここが決戦の地、というわけか。なかなかに仰々しいのう。ただでさえ尿漏れが酷いってのに、もっと漏れそうじゃわい」


「下らぬ冗句をやめぬか、『魔物殺し』、藤井寿太郎よ」


またしても人間の姿を見せない『獅子王』が、タナト教団のローブを脱ぎ捨て、獣毛を纏う全身をさらけ出し、戦闘に備える。


「それとも、我が同胞たちを殺したことは、この山での決闘より気が軽いとでも言いたいか?」


ぐるる、と小さく喉を鳴らす。野生を感じさせるこの男。前回の挨拶でようやく思い出した。


『人間殺しの獅子王』。


抗魔戦役で魔物の中隊を率い、多くの人間を殺した、元(・)人(・)間(・)。


「ふっ」


鼻で笑えてきた。


「何がおかしい? やはり我らを愚弄するか」


「違うわい」


刀を抜いた。


「たった一人の禊(みそぎ)にしては、ちと大舞台では、と思ってな」


「…まさか自身の首を刎(は)ねる気か?」


「そんなわけなかろう? 儂はまだ生きたいに決まっておる。いま儂が本気で自決すると思っていたのなら、お前の頭は本当に…『魔物』じゃな。かかか」


怒髪衝天。


全身の毛を逆立てた、獣の頂点に立つ獣が飛び掛かる。


剣と拳が、衝突した。


「数多くの仲間を殺した挙句、出てくる言葉がそれか!! 『魔物殺し』!!」


「お前らも、人間をバカにするし殺害してんじゃろ?」


さて。


この男を早く片付けて、カナトの面倒を見てやらんといかんのう。


ねぼすけさんよ。


…あんまり早く、目覚めてくれるなよ?



△△△



「ぐふふ、約束通り、ワタクシはこの日、ここに参りました。『太陽』様」


しつこい!


「今度はちゃんとこんがり燃やしてあげるんだから」


「そのお話なのですが」


『Lv39』のタコ男。


隣には、またしても『光のエレメント』使いの男。『Lv24』。前回とは違って樹木のやつがいないことが唯一の救いだけど、やっぱり私だけではあまりにも不利。


タコ男は、8本の足を滑らかに動かし、言った。


「あなたの御身をワタクシの体内に取り込み、共に逝きたいのです」


人間の部分が、不敵に歪む。


「ワタクシの中の消化液で、あなたを溶かしながら、あなたの『太陽』を感じたい。あなたはきっと、それに抗うためにワタクシを燃やすでしょう。それならば好都合。ワタクシはさらに消化液を分泌し、共に逝ける! 『月』が覚醒した今、『太陽』への処遇は自由になった。それこそ、僥倖(ぎょうこう)! 神への冒涜を承知で、一瞬でもあなたと融合したい! あなたと一つになりたいのです!」


「無理に決まってるでしょ、変態タコ! 一方的に燃やされなさい!『陽炎(かげろう)』!」


放った炎。


案の定。


「俺のこと、忘れちまったってことはねえだろうな? お嬢ちゃん」


聖なる炎は、即座に形成された『光』の盾に阻まれる。


「おお! 素晴らしい! 素晴らしい!!」


触手に纏う粘液が増える。


「ようやくワタクシは正しく死ねる! この穢れた身体から解放されるのだ!!」


伸びてくる触手。


「『陽光凱歌(ようこうがいか)』」


身体を強化して、間一髪、回避。


それでも、八つの手数を全て回避しきれない。


「っ!」


腕を掴まれた。


「オクトの旦那、早く決めろよ。じわじわ殺すなんてグロいこと、見てるこっちは勘弁だぜ」


「黙れオーファン。あなたはただ、見守っていればいいのです。ワタクシと『太陽』の、体内での蜜月を。蜜のように濃厚なひと時を。邪魔をするならば、まずはお前から殺す」


「だから怖えってそれ」


呑気に頭を掻く髭の男から私へと視線を戻すと、魔物化らしい強い力で一気に引き寄せられ、


「ぐふふ、さあ、こちらへ」


一本の触手から大穴を出現させた。


ルナ…。


カナト。


人が1人、入る程度の大きさの大穴へ、私の身体は…


「なっ、なんだと!?」


私を捕らえていた触手が、断ち切れた。


「だ、誰です!!? 姿を現しなさい! 今なら利き手の五指を溶かすだけで済ませましょう!」


エナジーが、いや、『風のエレメント』が流れた場所をたどる。


そこには、『Lv30』。


一年生で史上初の、30越え。


その2人の内の、女子の方。


「好きな子へのアプローチ、下手過ぎない?」


「あなたは…」


生徒会。


カナトの視線を奪っていた、彼女。


「不器用って点なら、あいつらといい勝負なんだけどね」


嵐ミツキ。


カナトの幼馴染の1人。


「助けに来ました、テリヒメ先輩」


あんまり話したことがないし、カナトなんかよりもずっと大人びているから、後輩なのに先輩みたいに緊張してしまって、


「あひゃ、ありがと」


口がうまく回らなかった。


「ああ、今のナシ!」


火照った顔に、夜の冷たい風が沁みる。


「噂の新人ですか。ぐふふ…、しかしワタクシのレベルよりも下。今の風ならば、再生も余裕で間に合う」


「ええ、そうね」


してほしくなかった、彼女の納得。


しかし。


「私は、あいつらと違って、器用で、卑怯だから」


突如、ぬっ、と大きな影が背後から私を覆った。


振り返る。


「がっははははは!!!」


そこには、3人の大男たち。


青、赤、黄。3つのチームの、それぞれの最高防御力。


「自己紹介と行こうじゃないか! まずは俺から! ブルーローズ3年、巨山(きょざん)ゴウタロウ! 陽月教の正教騎士・巨山豪気の弟だ! 仲違いしたが、我々は各々の正義に従って闘っている! 兄弟の縁を断ち切った、苦渋の決断だったがな! …心の強さ自慢だ! がははははは!!!」


「では次は俺がいただこう! よいな、ゴウシ…、うむ。俺はレッドフレーム2年、大剛(だいごう)タケシ! 赤の枠組みを守る大黒柱とは俺のことだ! 『太陽』と『妖狐』は、俺が守る!」


「ううむ、俺はイエロースパーク2年、岩城(いわしろ)ゴウシ! 最近のマイブームは、ヒビキさんらとバードウォッチングだ! …こんな感じでよかったのか? まあいい! よろしくな!!!」


なんともまあ、暑苦しい男たちが割り込んできた。



△△△



「なんだァ? おめえはァ?」


何も考えてなさそうな顔。


何も考えてないからこそ、殺さなければならない。


この手で。


この『氷』で。


「滝本リョウ」


「…たきもと?」


「一年前…」


掌(てのひら)に食い込む爪。血がしたたり落ちる感覚。


「一年前、お前が殺した滝本レイジの、弟だ!!!」


許さない。


『Lv35』、に対し、相手は『Lv59』。


…。


レベル差なんて関係ない。


「『氷』カァ。…の割には暑苦しいナァ、お前」


お前が運よく兄さんを殺したように、俺がお前を、運でも何でも使って、ぶち殺す!!

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