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必殺のグロース—最弱からの急成長―  作者: ヒラメキカガヤ
第六章後編 月夜の抗魔大祭
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67/128

Lv67 ジョーカー

「へえ、やるじゃん! 銃の女の子!」


おそらくこの、金髪のくノ一(ニンジャ)。たくさんの人を手にかけている。


「私の投げたクナイを全部撃ち落とすなんて、びっくらぽんのすけ! 青天の霹靂ですな!」


この女、身体が殺しに慣れている。


母(マアム)と一緒に抗争の現場を見学しに行った時の、兵士や反社会勢力の目つきに酷似しているが、


「この才能、殺すの勿体無いよね! しかもチミ、軍玉(ぐんぎょく)さんの子でしょ? 司祭玉の司馬っちに並ぶ、この国の4つのタマタマの1つ、軍事の最高権力者、軍玉・大城裕子の子供、大城ユミコちゃん! スキルは、えっと、何だっけ? どうせ私より弱そうだから知らなくてもいいや」


この美人(レディ)は特にやばい(デンジャラス)。


「そんな可愛らしい子の処分を司馬っち、『構わぬ』の一言で私にさせるのなかなかに酷いよね。私のことなんだと思ってるのかしら! 嫁入り前の女にさせることじゃないってのー! ぷんすかぷんすか!」


この状況においても発せられる、その殺気に反した茶目っ気(コメディ)が、より彼女の危険さの判断材料(エビデンス)となる。


それにしても、オボロくんの妹ちゃんが派手に暴れたおかげで、披露(プレゼン)するはずの武装(コスメ)もナシになっちゃったわ。


「これが原因で死んだら、あの世で呪い続けるわよ?兄妹《ブラザーアンドシスター》」


構える。


可愛らしい子犬ちゃんの愛短剣(マイパピー)。


これまた可愛らしい子猫ちゃんの愛小銃(マイキトゥン)は腰(ヒップ)にお留守番(ノーイクイップメント)。


くノ一の彼女には狙撃は通じないでしょうし、何より…私の子猫ちゃんの弾丸すらも避けられそう。スキルで最大限に強化したのも、予備動作やエナジーの流れで、避けるだろう。そう思わせるだけの凄み(オーラ)が、彼女にはある。


だからこそ。


「すごい!」


近接戦闘を仕掛ける。全力で近接特化(ジョーカー)を演じる。


手に持ったクナイと子犬ちゃんの刃先が激突する。


「軍玉の娘さんって器用ね! 銃の腕前だけだと思ってたわ! でも意外と軽装備ねぇ」


「非力でか弱い淑女(レディ)なものでね。重たい荷物は男子たち(ハンサムボーイズ)に持たせているの」


「わわ! その返しすごい! センスがある! 私も戦闘中に使いたいんだけど! パクッていい? パクッていい?」


子犬ちゃんの刃先を何度も受け流される。


「ご自由に(ノープロブレム)」


どうにか一撃、腹に蹴りをお見舞いする。


が。


まるで手ごたえを感じない。


「残念でっした!」


足を命中させる直前に、反応して身体を半歩後ろに下げ、直撃(クリーンヒット)を避けた。


そして、蹴りを返される。なんて身のこなし(アビリティ)。


ただ。


ここが勝負の分かれ目(ターニングポイント)ね。


今のやり取りで、《《たくさん避けた》》。《《仰々しく避けた》》。


まるで、それが、それこそが自分という存在を紹介(プレゼン)するための得意分野(スキル)のように。


オボロ君にヒビキ君、それからシアン。


あなたたちが羨ましいわ。


どれだけの勇敢さ(ブレイブ)があっても、真っ向勝負ができる才能がなければ、迅速に相手を倒せない。非力だから、どうしても、複雑(コンプリケイティッド)にならざるを得ない。


「本当に、誇らしく憎らしい味方(ブラザーズ)だわ」


一気にその場から飛びのく。


「はあっ!?」


意外だったのだろう。


枯渇するほどのエナジーを足元に爆発させた、全力の後方跳躍(バックステップ)で、完全に相手の意表を突いた。


そして、


「いらっしゃい、愛猫(マイキトゥン)」


腰(ヒップ)にお留守番してた38口径のマグナムを抜く。


小さなころ、砂漠に行ったことがある。この国とはずっと遠くの、砂漠の国。『デューンキャット』という可愛らしい顔をした猫型の魔物が大蛇に襲われていた。


大蛇がその小さな体に襲い掛かった瞬間、可愛らしい猫の顔は、鬼のような形相へと早変わりし、大蛇を威嚇した。


その大蛇は、自らの本能を大きく揺るがし、その場から立ち去った。


小さなころから己の非力さを自覚していた私には、その光景が転機(ホープ)となった。


過酷な環境を生きる弱者の生存本能が、強者の余裕に強烈な一刺しをお見舞いする。


この小さくて可愛らしい子猫ちゃん(マグナム)は、いつか見たあの砂漠の子猫のように、大いなる天敵へと牙を剝く。


「ごめんなさいね、金髪(ブロンド)の婦人さん(レディ)。私のスキルはね…」


我ながら演技派(アクトリス)。


銃口に、最大出力の『弾道強化』を注ぐ。目の前の素直な彼女《(ピュアガール)》にはずっと、近接戦闘で回避や防御特化のスキルだと思わせ、上手くそう思い込んでくれた。


運命の一撃(ワンショット)。


その運命が、彼女の心臓(ハート)を打ち砕…


その目に赤が映る、はずだった。


「すっご(ジーザスクライスト)…」


くノ一は、身をひるがえし、避けた。


「ごめんね! 私も嘘つきなの! 知らないフリしちゃった」


渾身の弾丸は、掠りもしなかった。


「あなたの情報(スキル)もちゃーんと陽月教(うち)に回ってるから! 有名人の娘さん!」


前進する、くノ一。先ほど、全力で後退した私の比ではない、超速の一歩(スーパーストライド)。


「さくらおねーさんのー、ニンジャ~、スーパーキーック!!」


頭を守る私の膝の皿に、まるで巨砲(キャノン)のような衝撃。


と、共に、焼き切れるような激痛が脳に伝達される。


「おっひょー決まった! …喘がないんだ? チミは我慢強いのね」


右足を、完全に潰された。


激突した尻と、汗の噴き出る首元にひんやりと、秋の冷たさが沁みる。


「あ! さっきの『嘘つき』のとこ、ジョーカーっていえばよかった!! やり直させて、ね? いいでしょ? 私もジョーカーだったんだー! どう? かっこいい? 答えてくれないと、殺しちゃうよ? …まあ、答えなくても殺しちゃうんだけどね! 命令だからね、ごめんね!」


クナイを持っていない左手に、緑色の液体が入った瓶。


「これ見ると、串カツ食べたくなるんだよね! ソースをべたーって漬け込んでさ!」


瓶に刃先を漬け込む。


「二度漬けはしないわ、なんてね!」


「ふふ…お上手ね」


「本当!? やったー! じゃあ、安心してね? チミが死んでも、私がこの言い回しをいっぱい使って流行にしてあげるから、この即死の毒で、安らかに、お・ね・む・り」


死神のように笑う彼女。


その真横。


私が放つ弾丸(ファイア)よりもずっと速い、音速(ソニックブーム)のような速さで何かが…いや、誰かが急接近した。


「っええええええ!!!? そこのチミ、速くなーい!!??」


「無事ですか? 大城副会長」


その双剣は、クナイを宙に弾いた。


「あら、あなたは…、ええと」


滝本君と同じ一年生(ルーキー)で、彼と同じ美男(ハンサムボーイ)。


「イエロースパーク1年、上杉ユウトです。僕自身、薄い影ですが、ここで結果を出して有名になれることを願います」


美男は、風に吹かれる綿(ダンデライオン)のように、さわやかに、あるいは儚げにその歯(ピュアホワイト)を見せつけた。


「へえ! 言ってくれるじゃない! かけっこならお姉さんだって負けっこないもんだ! あなたも例外なく内臓ぜーんぶぐずぐずにして殺しちゃうんだから! 覚悟しなさい! プンプン!」


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