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必殺のグロース—最弱からの急成長―  作者: ヒラメキカガヤ
第六章後編 月夜の抗魔大祭
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65/128

Lv65 原点回帰

リョウのやつ。あのやばそうなブーメランを素手で。


「ねえねえ、木こりごっこはもう終わりかな?」


『急成長』が終わる。レベルが1に戻る。


「ああ、くそったれ!」


見上げた空には、月が浮かんでいる。


まだ届かねえか。


近づいてたと思ったのによ。


「もうおしまいだ」


「そうだね。ようやく分かったかい? 僕がお前よりも強いってことが」


「ちげえよ、バカ」


スライムの核を構える。


「はあ?」


ああ、この。


クソ雑魚メンタルが。


最初からこうすればよかったじゃねえか。


『急成長』終了後のインターバル。


それは、俺が勝手に決めていたことだ。


疲れて、肺が破れるくらいきついから、勝手に制限してた。


ああ、クソ弱い。


続けて使えばいいだけじゃねえか。



△△△



「隙だらけだ、たわけ者」


2週間前。


仮面野郎との模擬戦闘。


ホログラムの世界とはいえ、容赦なくその仮想の体を99回の突きで切り刻まれた。


「貴様は、自信を持った技が通用しないと分かった途端、守りに入る。おそらくはその、『可変成長(スキルツリー)』とやらを覚えてレベルを調整し始めてからの悪癖だろう。身に着けた賢さが、貴様が持っていたはずの傲慢さを損ねている」


現実に戻ると開口一番、いつものダメ出し。


「持ち合わせろ。新たな力と従来の力を。弱者の自覚を持ち、器用に動け」


「ふん。偉そうに説教しやがって、いだっ!」


頭に現実的な痛みが走る。


「今もだ、どうしてやり返さない?」


「どうせ避けるだろ、お前は…あっ」


「気づいたようだな、愚物」


「もう一回だ、次はとっておきの新スタイルをお見舞いしてやるからな! せいぜい仮面の奥の顔まで潰されねえように怯えてろ! おせっかいな兄弟子様ぁ!」



△△△



「『魔術師型成長(ビルド・メイジ)』!」


曲剣を鞘に納めて、それを相手に構える。


『Lv42』。


エナジーを、ありったけのエナジーを先端に。


簡単に捨てるな。


小さな可能性を。


振り分けるパラメーターは、エナジー出力のみ。


中途半端が、一番最悪。


思い出せ。


初めての対人戦闘。レベル差の開いた増田アキフミ。


初めての演習。リョウもミツキも勝てなかった大きなカエル。


盤上をひっくり返した、あの一撃を。


何度でも変えられる身の丈。


それでも変えるな、俺の芯。


原点回帰。


最弱の一撃。


成長こそが、俺の必殺。


「はあ? まさか、エナジーを飛ばそうとしてるわけ? わっかりやす」


「ご名答だ、バカ野郎」


「バカはお前な?」


馬鹿正直に溜めるエナジーを、せせら笑う敵。


「エレメント使いでもない無属性のエナジー。『弾道強化』等のスキルを使って強くするわけでもない、ただのエナジーの出力なんて微妙でしょ。粒子系のスキルで、いくらレベルが高くても威力がお粗末なことくらい誰でも…なんだこの…圧力は!?」


ああ、そうだよ。


これだよ。


昔からずっと。


俺のことな(・)め(・)腐(・)っ(・)て(・)る(・)やつを、こんな風にビビらせるのが好きだったんだ。


「その木刀が壊れねえなら、それ以外をぶっ壊してやりゃあいいだろうがよぉぉ!!!」


「なめるなよ…! 『即成長(アーリーグロース)・世界樹(ユグドラシル)』!!!」


大技の気配とともに、相手の樹木が一つに合体。大気中、そして地面から吸い上げたようなエナジーがねじれた巨木の先端に圧縮されていく。


「これで終わりにしてやる。藤井カナト」


いいじゃねえか。


…酔って来た。


全力で向かい打ってくるやつを、全力で打ち破ろうとする俺に。


『成長』という共通点を持った同じスキルで、こいつを勝手にライバル視しちまう。だがそれも、気分がいい。


やってやろうじゃねえか。


こいつレベルを超えられなくて、何がイージスだよ。


『疑似成長(エナジードライブ)』。


瞬発的なパワーも使う。あとの反動(こと)なんて知るか。


勝つのは俺だ。


最大出力。


「いっけええええええええええええええ!!!!!!」


訓練通りの、音を置き去りにする太いエナジーの光線。


仮想世界(ホログラム)上の水無月オボロをも消し去り、初めて一本取った、俺の一撃。


対するは、巨木から放たれた巨大なエナジー。


それが衝突し…。



△△△



「余計なおせっかいなんだよ、クソ野郎」


目を覚ますと、不快にもオーファンの髭づらが見えた。


「すげえ技だったな、ツリー」


「うるさい」


エナジーどうしが衝突した瞬間、負けを確信した。


隣からオーファンの『光』が割って入ってこなければ、僕は死んでいた。


「くそ…」


無傷で、エナジーが枯渇しただけの徒労。全力を出し切っただけに、怒りすらも湧いてこない。


意味わかんないだろ、あんな圧力。あいつ本当に、タナトの…。


完敗だった。


「何分経ってる? 藤井カナトは?」


「…あれから15分。お前らが派手に暴れたせいで、各々の闘う場所が変わっちまったよ。藤井カナトの坊主は少し休んで、水無月ルナを取り戻すために走り出した」


「聞きたくなかった」


なんであれだけ出して、元気なんだよ。


「文化祭の時より回復が早くなってるな、あの坊主。まあ、お前も回復は早い方だから、ほぼ互角ってことか」


「そんな気休め要らないし」


「ま、無傷で生きてるわけだし、これからも時間を重ねて強くなればいいじゃねえか、キノミ。お前はまだ、若いんだからよ」


「うっさい、その名前で呼ぶな。…頭をなでるな、子ども扱いすんな…」


目に水がたまる。息が苦しい。


林野キノミ。


親からもらったその名前は捨てた。


『強くなりたいのなら、一度捨てるしかないな。君が見る世界を全て。タナトがそうしたようにな』


僕よりも強いボスが、そう言ったから。


…。


ボスも、龍も、獅子王も、蒼い雷撃も、『太陽』も、『月』も、『急成長』も。


強さだけを求めて死ぬほど努力した僕を笑うように、本当に強い人間は僕よりもずっと強かった。このまま研鑽を重ねるだけで、いつかはそれらを超えられると、本気で思ってしまった。


弱いやつらに復讐を成し遂げた経験だけで、僕は何者かになれると思ってしまっていた。微弱な成功体験が過信を生み、努力の質を下げてしまった。


「悔しい…悔しい…」


「終わったらメシでも食おうぜ」


肩に手を置かれる。役立たずのおっさんのくせに、どこまでも僕をガキ扱いしやがって。


「ステーキハウス。E地区の繁華街で一番高いやつ」


「おっさんの財布をなんだと思ってんだ?」


「うるさい、言うこと聞けよ、僕なんかより大人なんだろ?」


次は、負けない。


ツリーのスキル『即成長』は、コスパ最強のスキルです。


無から植物を生み出すわけでなく、元あるものを成長させるだけなので、エナジーのコストがかなり低いです。

『神木刀』も『世界樹』も大技ながらに連発可能。今回の戦闘も、気絶してなかったらツリーが勝ってました。


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