↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必殺のグロース—最弱からの急成長―  作者: ヒラメキカガヤ
第六章後編 月夜の抗魔大祭
PR
64/128

Lv64 俺が、全部消さなきゃな

弱い人間の言うことなんか、誰も聞いてくれなかった。


「またお前か、林野(はやしの)」


中庭の花。散らされた花弁。ちぎられた茎。ぶちまけられた土。


「違うんです先生!」


僕は、植物が好きだった。鳴き声もなく、動き回ることもないのに、存在感があって、綺麗で、神秘的だから。


植物が好きな僕がこんなことをするはずない、なんて言い分も先生は分かってくれない。


「どう違うんだ?」


「それは…」


3人のクラスメートと、遠くで目が合う。


言ったらどうなるか分かるよな。


僕よりもずっと力の強いやつらが、そんな目をしていた。


勉強を頑張っただけなのに、目を付けられ、身体の暴力、精神の暴力を受け続けた。自分たちの悪事を、すべて僕のせいにして、そのせいで先生からも女子からも嫌われた。


中学に行きたくない。


暴力だけが取り柄のあいつらにレベリングなんて加わったら、…想像したくもなかった。


でも、神様はいつだって僕の味方だった。


僕を、強くしてくれた。


『即成長(アーリーグロース)』。


あいつらが宿した『炎のエレメント』、『筋力強化』、『防護壁』なんか、意にも介さない。


「な、た、頼むよ、林野」


圧倒的な樹木の再生が、小さな『炎』を埋め尽くす。


「今まで悪かったよ!」


『強化』された肉体を、成長させた蔦で締め上げる。


「お、俺たちは、お前のことが羨ましかったんだよ、な?」


『防護壁』は、小枝を『即成長(アーリーグロース)』した樹木の槍で簡単に貫いた。


「お、大人になれよ、林野…こんな子供みたいなことやめようぜ…」


うるさい…。


僕が強くなった途端にこれか。


「お前らが言うなよ!!」


そいつらの腕と足を縛り上げ、そのまま関節を、


「「「あああああああ!!!!!」」」


締め上げて、へし折った。


その日は、その足で、かつての地獄へと向かった。


分かってたくせに、僕を助けず、むしろ叱り続けた小学校の教師も同じように、


「ひっ、誰だお前!? な、なんで俺が…うぁぁぁぁぁぁ!!!!」


捻じ曲げてやった。


僕は、強くなった。


僕は、強いんだ。


もう、弱いのは嫌だ。



△△△



「カナト…」


あいつの方を見やる。


森が暴れるように、大木の群れがあいつを襲う。斬撃に特化したスタイルで凌いではいるものの、ジリ貧だ。次第に負けに向かっている。


「おいおい、余所見なんて余裕じゃんかよ、噂の滝本くん!」


くの字の投擲具、金属のブーメランが死角から突然現れる。


「やるじゃねえか、ゴールデンルーキー」


剣で弾くと、そのブーメランは生き物のように持ち主の手に戻る。


「目つきは悪役みたいに鋭く冷酷だ。おまけに『Lv35』。剣術もエナジー操作も『剣士隊』レベル。これで中一って、何かの冗談だろ」


赤いバンダナをした男が、おかしなものを見るように俺を笑う。


「そういうあんたは、陽月教の人間だよな? 『Lv32』と高レベル。…どうして止めない? 抗魔、そして人類の生存。これが陽月教(あんたら)の理念だろ?」


遠くに見える水無月ルナが、普段とは異なる嬌声を高らかに上げて、『月』を振りかざす。さっきまで『Lv15』だった少女の頭上は、『Lv35』に変わっている。


「いいんだよ、あれで」


バンダナを触りながら、自分たちは間違っていないと確認するように笑った。


「司祭玉様が望んでいるからな。『月』との交わり。1000年の祈願が果たされたなら、あの人は仕事一筋になるだろ。そしたら俺たちの望みを叶えてくれる。例えば、俺にはイイ女とイイ物件をただでくれるってな」


男は憶測のような軽さで、この国の命運を語る。


「はは、つーか開祖して1000年経ってんだから、もう抗魔だの人類の生存だの、当初の純粋な理念なんて遵守してるやつ、あんまりいねえだろ。国を守れるの、俺ら以外にもいっぱいいるし」


けらけらと、笑う男。


握りしめた剣の柄を、そのまま握り潰してしまいそうだった。


この場一帯を、危うく凍結させてしまいそうだった。


殺意を自覚する。


許してはならない。


この軽薄な男も、司祭玉も、タナト教団も。


こいつらは、己のためだけに動いている。


人のために生きて、人のために闘った兄さんの死体を、平気な顔をして踏み歩く。


兄さんは、こんなやつらのために死んだのか。


蛇塚ウロコのように、他人の事情や都合など、平気で無視するゴミクズどものために…


それならもう、俺が。


「俺が、全部消さなきゃな」


レベルなんてものも、レベルを上げる魔物も、それを利用して他人を傷つけるゴミクズも。


「斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬りまくって」


「おいおい、なんだ? 急に狂いやがって…まあいいや、天才なりの狂気ってことね。じゃあ、そろそろ本気出すぜ!」


投擲したブーメランに付与した『炎』が、熱風を生みだす。


「ぬるい」


「はあ!? こいつ、素手で…」


「弱いんだよ、思想が。小さいんだよ、理想のスケールが」


だから、実力もこの程度なんだろ?


「お遊びは、もう終わりか?」


冷気で熱を完全に殺し、そのまま掴んだ玩具(ブーメラン)を、相手に返してやる。


「な、なめんなよ、ガキ!!」


さっきと同じ。


死角から、つまらない熱風がつまらない圧力を纏って飛んでくる。


「『断罪氷牙』」


剣に『氷』を付与し、この『く』の字のガラクタを斬り捨てた。


「なっ…て、てめえ!!」


「己の愉悦のために力を求めるから、ろくな成長をしなかった。お前が歩んできた人生は、その程度だった」


「お前に何がわかる!! …くっ、足が…」


『氷』で、手足を張り付けにする。


「甘いんだよ。隙だらけなんだよ。お前の魂も、思想も、思考も、意志も、望みも、矜持も、全部」


「く、くるな!! やめてくれ、俺はまだ、死にたく…!」


死に際までつまらない男だ。


切り落とした首すらも、生前みたいに意地汚く、俺の足元に転がり込んできた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。