↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必殺のグロース—最弱からの急成長―  作者: ヒラメキカガヤ
第五章 それは突如、始まった
PR
57/128

Lv57 いつも見ている顔

タナト教団の襲撃を阻止した生徒たち。その後…

夕闇。大破した校舎の前。


「じいちゃん!」


「ほほ、カナト。久しぶりじゃのう!」


中学に入る前、とつぜん姿を消したじいちゃんと、再会した。


「仕事はもう終わったのかよ?」


おかげで中学の寮なんかで暮らす羽目になったけど。


「まだじゃ」


「そっか」


そうだよな。


じいちゃん、強いから。俺に剣だって教えられないくらい強いから。


「でもな、今年の抗魔大祭の任が終われば、またしばらく一緒に暮らせるぞ!」


暴れる心臓。


「ホント!?」


「儂ゃ嘘が嫌いじゃからな」


「やっっっったぁぁぁぁ!!!!」


『急成長』を発動してないのに、体は隅々まで解放感で満たされていた。



△△△



「なんだよ、急に呼び出して」


文化祭2日目。


1日目のテロで倒壊した校舎や露店が多いせいで、寂しいものになってしまった。それでも、ステージ企画は無事だったため、つまらなくはなかった。


「カナト」


そんなつまらなくはなかったステージにはもう俺たちの他には誰もいない。


鋭い夕日に照らされながら、つい1時間前に歌っていた天王寺テリヒメは俺の元へと歩み寄る。


「どうだった?」


オレンジ色の髪をそわそわと触りながら、目を合わせてからすぐ逸らす。最近はいつもそうだ。なんかを隠してるみてえに。


「普通によかった」


まあ、そこは触れてやらない方がいいだろう。


「その感想あんまり好きじゃない…いまめんどくさいって思ったでしょ!」


「ああ、すまん」


「もう!」


今度は頬を膨らませる。


かと思えば、「ふすっ!」と吹き出し、


「あっはははははは!」


大笑いし始める始末。


「急に爆笑すんなよ、気持ちわりい」


「あーごめんごめん」


笑いで溢れた涙をぬぐい、ようやく落ち着きを取り戻す。


黄昏色の髪にオレンジが光りながら、風になびく。


「カナト」


もう一度、俺の名前を呼ぶ。その発音を噛み締めるように、呼ぶ。


「…なんだよ?」


蒼穹の眼が、力無く震える。


掴まれた手。その手から伝わる温もり、震え。


「ずっと、一緒にいたい」


秋のもの寂しい風が鼻腔を掠める。


テリヒメの言葉を待つ。


「ずっと、一緒にいたい」


同じ言葉は、次は真っ直ぐ、こちらの目を堂々と射竦めた。


そんな大げさな。


だって。


「いるじゃねえか」


弁当だって一緒に食って、訓練の時も近くにいて、学校終わった後もルナやユウトと混ざってカフェ行って。いっつもいるだろ。


「それ以上…だよ…」


「え」


「『一緒』が足りない」


その両手が、胸元に縋り付く。掴んだ制服を弱く引っ張り、頭を預けてくる。


「お前それ、どういう…」


「まだ分かんない? 本当に、バカなんだから」


顔を上げたテリヒメ。


よく見ると、こいつは綺麗な顔をしていた。


いつも見ている顔だった。


なのに、どうして気付かなかった?


それは、多分…。


屋上は、少し肌寒い。


それなのに、俺の内側は、尋常じゃないほど暑くなっていく。


「おい」


唇が、繋がった瞬間。時が止まるように、言葉が止まる。思考すらも、止まってしまう。


口の少し横に当たる相手の鼻息。汗と制汗剤の混ざった匂い。唇に伝わる柔らかい感触。


「…おい、お前」


「これを伝えたかったから。もっと近くで、カナトを独り占めにしたい」


離れた顔。


硬派な目だった。まつげが多く、猫のような目で、…普段から落ち着きのないやつだから分からなかった。


精巧な鼻筋だった。いつも表情が忙しいから分からなかった。


整った口元だった。日常的にうるさいやつだったから分からなかった。


なんだよ、これ…。


暴れる心臓。


今までのものとは比べ物にならないくらい身体の管という管が締め付けられる。


「じゃあ、その、あれだ」


進めてしまった。


いいのか、この話を進めて。


でも、今更無かったことなんかにはできない。させてくれない。テリヒメの蒼穹が俺をそんな風に見る限りは、無かったことになんかならない。


だから俺も、進む。


こいつがずっと隠してただろう思い。俺にとっては突然始まった思いを、このまま燃やしてみようと思う。


「あれ、あれだ…お付き合いするとこから、始めてみる、的なやつで、いいんじゃねえの?」


歯切れが悪すぎる。


それでも、


「いいの…?」


いつもなら、緊張しすぎだと茶化す『太陽』は、珍しく真面目に、頬を赤くして俺の答えを待った。


「ふん! この俺と付き合えること、ありがたく思えよ」


どうしてこのタイミングで、ミツキと…ルナの顔なんか思い浮かべているんだろう。


それももう、どうでも良くなってしまった。唇に触れた唇が、勝手に物事を進めていくような、そんな感じだった。


これで、いいんだよな。


「うん。すごく嬉しい。これからもよろしくね」


今度こそ離れてくれたテリヒメは、いつもみたいに、でもどこかいつもとは違ったように忙しなく、屋上の階段を降りていった。




第五章 それは突如、始まった


—完―

テリヒメに彼氏ができてしまいました。

ショックです。


ということで文化祭編はこれにて終了です。

次の章から物語が大きく動くかも…しれません。


「よりにもよってカナトを選んじゃうかぁ…」

「ああ!? なんか問題あんのかよ!?」



※明日は少し遅れます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。