Lv54 長井リサ
15時半過ぎ。
「あーんた、なーにーもーのー? そのレベルでひーとりでくーるとか、あーたしよりばーかなかんじー?」
口の中の飴玉を転がし、ヘラヘラと、この世のすべてを見下すような、あるいは投げ出すような笑みを垂れ流す、黒いローブの女性。ピンク色のツインテールをした美人さん。
「さっきやっつけたチューボーたちとおーんなじせーふく着てるってことはー、あーんたもチューボーだよねー?」
でも。
「もったいない」
「はぁー?」
「あなた、せっかく綺麗な顔をしてるのに、もったいないなって。うふふ」
「しつもんのこーたえになってないんだけどー」
ああ、この人か。
遠征で、粉を振り撒き、隊の大半を錯乱状態にした。
1年前、イエロースパークの合宿で倒したH地区の主・大型の蝶の魔物『レディバタフライ』みたく、精神干渉の毒を扱うスキルか。
「あーんた、よーくみるとあーたしにひどーいことしたやつらに似てるー」
手元に顕現するのは、自身の髪色と同じ桃色の粉。
想像以上に高い出力。『Lv34』で、下手するとヒビキや水無月くんにも通用するかもしれないエナジー量。
スキルそのものが粒子を操るスキル。…『粒子系』のスキルは、エナジーと同じで粒子を扱うから、感覚的にエナジーの使い方が達者になるって聞くけど、まさかここまで大きなものとは。
「言っとくけどー、あーたし、けっこーつよいよー? たなときょーだんの『序列・玖』だーけど、そーれはあーたしのあーたまがわーるいから『序列・玖』なだけでー、つーよさだけなら『序列・伍』とおんなじくらいつーよいんだってー」
「分かりやすい強さの紹介、ありがとう」
「そのはんのーうっざー」
さらに高まる出力、煙のように顕現する大量の粉。
「そーゆーあーんたは、ちーむりーだー? せーとかいのひとたちー?」
自己紹介は、あんまり好きじゃないけど。
「長井リサ」
もう少しつけ足しておくか。
「あんまり強くないチーム・イエロースパークの、役職なし。強さで言ったら、2年生よりちょっと弱いくらいの3年生かな?」
自分のことはあまり好きではないし、もしかしたら今のカナト君たちよりも弱いかも。
「でもまあ、逃げるわけにもいかないし、足止めくらいはさせてもらおうかな」
倒す。なんて傲慢な考えはない。
そういうのは主役の人たちが勝手にやってほしい。
「へー、じゃーあーたしよりばーかじゃん」
あんまり強くなりたくない。
ヒビキが私を愛でてくれなくなっちゃうから。
「まーいーや」
口元が不気味に歪む。目つきが、相手を殺すものに変わる。
「あーたしの粉で、さくーっとやっつけちゃうんだから。そのむーかつく顔、めちゃくちゃにしてあげるー。しゅつりょくさーいだーい」
包まれただけで息が詰まりそうなほどのピンク色。
それが、剣を構える私へと向かい…。
△△△
はぁー?
けっこーつよめにやーったんだーけどー?
「間一髪、といったところね。ヒビキ、愛してるわ」
目の前のおんなにあーたしの『舞粉』がつーよーしてない。
「いーみわかんないんですけどー」
「あいにくだけど、私は他の子たちみたいに強くないから、手の内を教えるなんて余裕ないわ。種が割れないまま、あなたには帰ってくれると助かるんだけど」
よゆーの笑みを見ーせながら『余裕がない』とーかほざくおんなー。
「どーせぼーぎょけーのすきるでしょー?」
たねはすーぐに割れてるんだしー。いーまからだすこーれには耐えられないでしょー。
チェーンから借ーりたにほんの鎖ちゃーん。こないだのどらごんちゃーんのえなじーがまーだちょーっとだけ入ってるんだーから。パワーもースピードもー、だーんちがいだよー。あおんそくでーせんしゃにーも穴あーけちゃうんだってー。
「っ?」
ほーら、取り出ーしただけでびびってるー。
耐ーえられないのがみーえみえ。
「べとーと粉をつけちゃおうとおもーったけどー。効かないならこーれでぶっ殺しちゃおーっと」
先っぽをぶーんぶーん振り回してー、おーんなのおなかめがけるー。
あーたしこーみえてうんどーしんけーいいからねー。
この狭いろーかならぜーったい外さないよー。
「ふふー、しーねっ」
なーげたちょーくご。
目の前のおんなのおなかからー、たいりょーの血がー。
血がー。
血がー。
…。
「はあ?」
「これも間一髪、ってところかしら。…ザンテツも懲りないわね」
あーりえないんだけどー。
このおーんな、あおんそくの鎖をけーん一本で、まーるでさむらいさんみーたいなさばきでー…。
「りさちゃーん」
「あら、下の名前で呼ぶなんて、見かけ通り、距離をぐっと縮めてくる女の子なのね」
いまー、きゅーにきになったことー。
「…あーんた、ゆくえふめーのけつばーん?」
「何が言いたいの?」
「さっしてよー。あーんた、『序列・惨』だったりするー? へんげんじざいのいみょー。つよーいすきるをいーっぱいつかえる『惨劇』のさんばんかってきーてんのー」
「三番? イエロースパークの立場なら、リーダーのヒビキ、サブリーダーのヨウジに続いて、ヒビキと同級生は私だけだから、立場上は私が三番ってことになるかしら? 考えたこともないわね」
「こたえになってなーい」
お口に指をあててくーびをかしげるおーんな。しらばっくれてるのかほんとーにしらないのか。
まーいーや。
だーって、どーせあーたしが勝つんだからー。
そのしょーこに。
「はぁ…はぁ…」
「なーんか疲れすぎじゃなーい? けつばんのりゆーって、力がなくなっちゃったかーらー? ふふー」
「なんか私たち、嚙み合ってない気がするわ。まあ、いいけど…」
てゆーか、よーく見れば、あーたまいたそうにしてー、粉もちょーっとだけきーてんじゃーん。
こーゆーのって肩透かし、ってゆーんだよねー。
きたいしてたのにーちょーっとがーっかり。
ほーら、隣の窓ガーラスなーんてわってー。いしきぐわんぐわんじゃーん。
こんどこそー、もーいっかい、この鎖ちゃーんたちをほーりなげて…
「おーしまいっ」
今度こそめーちゅー♡
せーかくだからこの鎖ちゃんのスキルでりさちゃーんのことチューチュー吸ってみよー。どーんなすきるかしらー。
「あーれ? 吸えないんだけどー。どーなってんのー? どらごんちゃーんのえなじーでぱーんぱーんなのかなー? だーからほーかのひとのえなじー吸えないかんじー?」
ちゃーんとうーごーけーよー。
あーたしよりおさぼりなんだからー。
…。
「そうね。おしまいね」
「はぁー?」
うそでしょー?
なーんでこいつー、むきずなのー?
びーっくりしてくーちからあめだま落ちちゃったじゃーん。
っ!?
りさちゃーんがわーぷしたみたいにきゅーせっきんして…
「いい歌声だったわ、『太陽』さん」
なーんか、割れた窓のほーからお歌ー、的な音がするー。
てゆーか、やばいかもー…。
この前の仮面のおーとこのこより速くなーい?
それじゃーしゃーない。
「っ!?」
「おくのてー」
あーんまりつかいたくなかったけどー。
「っていっても、粉を血の色みたいにあかーくしただけなんだけどねー。こーれつかうとあーたしもすっごーくつかれるんだよねー」
でーも。
りさちゃーんがぐーっすりねむったー。
いっぽーのあーたしはねーるまえに、この石つかってかえるー…
「こーちらこんふゅー」
いちおーウェイトにほーこくしなきゃー。チェーンみたいにまーじめでうーっさいからねーあいつもー。
「あめだまおっこちてきぶんわるいからかえるー」
『ふざけているのですか! ぐっ…マグネ、無線に集中したいので、しばらくそのまま抑えておきなさい』
なーんかいそがしそー。たんてきにいってかえろー。
「おくのてつかったからねむーい」
『…チームリーダー、もしくは生徒会や教師にですか?』
「どっちもちがーう。でーもー、りさちゃーんっていうかわいーこがねー、さんばんみたいにいーっぱいすきるつかってやっかいだったからー。そーゆーこと、じゃーねー」
『さんばん!? 『序列・惨』がいたのですか!? 昏倒させたなら、一緒に連れ帰りなさい。…コンフュ、コンフュ!!』
△△△
やーっときょてんにかえってきたー。
「やばー」
りさちゃーん忘れてきちゃったー。
あーあー、まーたおこられちゃうなー。
「めんどくさー」
とちゅーで起き上がったーって嘘ついちゃおっかなー。
かーんがえるのもめんどくさーいなー。
こんどこそーおめめをとじるー。
「またあいたいなー。りさちゃーん」
…スヤァー。
イエロースパークのリサ先輩。色んなスキルを使えてるけど、何者なんでしょうね。ま、まさか、『序列・惨』じゃないよね…?
一方で、タナト教団の現場での指揮は基本的に『序列・陸』のチェーンと『序列・漆』のウェイトが担当しています。
自分たちよりも序列が上の団員は、命令を無視しがちです。レオのようにプライドがあったり、パニッシュのように子供だったり。『序列・伍』のシャドウは2人に従ってはいますが、内心でかなり見下してます。




