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必殺のグロース—最弱からの急成長―  作者: ヒラメキカガヤ
第五章 それは突如、始まった
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48/128

Lv48 人間

体育館。


突然降り注いだ、雷が落ちたような音。


私たち、どうなるんだろう。


闘えない。


『タナト教団』となんて、真っ向から闘えない。


今だって。


「キシャシャシャシャ!! パニッシュのやつ! またイカれ始めやがったか!!」


E地区を襲ったらしい男が、汚い笑い声を館内に撒き散らすたび、胸が苦しくなる。


理由は精神的なものだけじゃない。


影に覆われた体育館は、空気が薄い。


「大丈夫だよ、箱守さん」


クラスメートの女子が手を握ってくれる。レッドフレームの代々木(よよぎ)ヨモギ。


「大丈夫。先生がいる、生徒会だって、ヨウコ先輩も」


でも、震えが止まらない。


カケル。


いいからね。


私のことなんて気にしないで。


男の目が私の方へと向かう。


正確には、急に私の横に現れた『妖狐』へ。


気付くとみんな、その場から離れていく。私もそれに倣う。


「キシャシャ、炎を出してみろ? まずは可愛い後輩の命から削り取ってやる」


「超絶キモいやつ…かの」


どこか似合わないセリフを吐き捨てる赤のリーダー、紺野ヨウコ。彼女の全身が微かに震えている。放つ言葉も、まるで我を忘れていたかのように。


彼女すらも、手を出せないほどの危機。


『妖狐』の魂の生き写しだとしても、彼女はちゃんと人間だった。


目の前で手足を拘束されている少女。首元には大鎌の形をした黒い影。


敵に脅威として認定されたがゆえに狙われてしまった、私よりも年下の少女。


「ヨウコ先輩!」


その一年生は、自分の命が天秤に掛けられているくせに、勇敢に、彼女の名前を呼び、


「私は大丈夫ですから! 派手にやっちゃってください!」


わが身もろともと、相手を心配させないために笑った。


私なんかよりもずっと、レベルの高い女の子。ここでいうレベルというのは、人間としての器の話だ。彼女の2人の幼馴染同様、心が強い。


「できないかの…、助けたいのは、山々だけど…」


先輩もまた、レベルの高い人間としての躊躇を見せる。


カケルくん。


もう限界だよ…。


助けてよ。



△△△



ほう。


それもしのぎ切るか。


「お返しだ。『月光閃(げっこうせん)・三日月(みかづき)』


その名の通り、夜空に浮かぶ三日月のごとき軌道。受けた左半身が想像以上に揺れる。


『月』の血統は負傷していると聞くが、やはり情報通りの戦闘力。微弱な『月光』ながら、それを補う卓越した剣術。どこか、『奴』に似た太刀筋が、我の命を狙う。


ただ。


「うらぁ!!!!」


何の変哲もない平凡な蹴りが、腹部に命中する。


この粗野な小童は、何者だ。


『Lv45』。『月光』の小童と同じレベルだが、結局は『Lv50』の我よりも下。それも、スキル『獅子化』で人間の何倍もの身体能力を得ている。


だがその蹴りは、我のその『獅子』の肉体を貫通するように…。


「見ろオボロ! やっぱり俺の攻撃の方が喰らってんじゃねえか、このワン公!」


「貴様は蹴り飛ばしただけだろう。俺の刀は彼奴の骨を軋ませた」


しかし、なんともこの両名。


「いちいち自慢してくんなや。うっぜえ」


「貴様から言い出したのだろう。会話の流れも把握できんのか、愚物」


「てめえ、あとで覚えてろよ」


態度に反して、恐ろしく連携している。


近接戦闘のみで戦う互いは、互いの勝手をわきまえている。侮蔑と尊敬、混沌とした両者の関係。


60年前。『抗魔戦役』で戦った雷の矛と風の盾。『風神・雷神』と呼ばれた兄弟の連携を見ているようだ。


だからこそ。


「貴様らも、彼奴(きゃつ)等のように解体して見せよう」


エナジー出力を上げる。


「きゃつらって誰だよ。知らねえやつの話すんな、鬱陶しい…って、うおっ!」


「下がれ!」


目つきの悪い小童が仲間に襟を引かれる。


気づいたか、『月』の血統よ。我ほどではないが勘が冴えている。あるいは『月光』がそれを感知させているのか。


だが、もう遅い。


まずは、この粗野な相方の首を掴み…


「『施錠(ロック)』!」


「ん?」


開いた手が閉じない。放たれたスキルの方向。拳銃のように我に指を向け、エナジーの欠乏により膝をつく小童。


やるではないか。低レベルながら、スキルの効果範囲を我の手に絞り込むことで拘束したか。全身に掛けられているなら我には効かなかっただろうな。賢明。


「ヒビキさん!」


眼鏡の少年の声。ヒビキと呼ばれた粗野な小童が右腕を後ろに引き、反撃の体勢を取る。


「悠長に溜めるなど、我もなめられたもの…っ!?」


避けられない。


手だけではない。


全身が…動かない。


「ヨウジ、お前ってやつは…」


血反吐を吐くほどにスキルを使ったのは、眼鏡の小童。


「最高にムカつく後輩だぜ!!!!」


拳に纏った強化は、眼鏡の『エンハンス』だけではなかった。


「みなぎってきたぜぇぇぇぇ!!!!!!」


微かに光るのは、『月』と呼ぶには次元の低い、弱き『月光』。朧げな、紛い物の光。


「『月光閃・名月(めいげつ)』…貴様の体質では焼け石に水だが、虚無よりは足しになるだろう。…今回は貴様にくれてやる」


「そりゃどうも!!」


来る。


「歯ぁ食いしばれよ犬っころ! そんでもって、ど派手な文化祭をありがとなぁぁぁ!!!!」


「我は…、我らは不滅…」


無防備な我の肉体に到達した。


貴様らのような劣等種(にんげん)に、我が…我らが負けるのか!!!


『レオ』


ああ、ナナミ。


負けるわけにはいかないのだ。


『私はずっと、あなたを…』


我は何度、お前の価値を落とせばいいのだ。


直後、その記憶すらも再生できないほどの衝撃が、脳裏の世界を焼き切った。

『魔物化系』のスキルは、けっこうアタリのスキルです。


変身中は、該当する魔物の身体機能(エラ呼吸や翼での飛行など)と、その魔物のスキルが使えます。

エナジーの消費がやや大きく燃費が悪いですが、鍵くんの『施錠』ほどではないので、使い勝手は良い方です。


身体能力も人間時の倍以上になります。

その中でも『獅子化』は、トップクラスの魔物化で、身体能力は人間時の12倍。加えて獅子型の魔物が持つ強靭な牙と、相手を怯ませるスキル『咆哮』を兼ね備えてます。

ぶっ壊れです。1対1での近接戦闘はまず負けません。

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