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必殺のグロース—最弱からの急成長―  作者: ヒラメキカガヤ
第五章 それは突如、始まった
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Lv45 獅子王

「キシャ!? おい、どこへ行く!?」


「待機など、つまらん」


「キシャ! 勝手な行動は慎めとボスが…」


「2度も言わせるな、浅き闇よ」


こいつ。


俺の『影檻(シャドウケージ)』が通用しない。


スキルか、エナジーの総量か。


「この身こそ、真の鎧にして剣だ」


思案を見透かされた。


「キシャ、その勘の良さもそのミテクレだからってか? 魔物風情の野生ってとこだな」


「その侮蔑は我が同胞にも該当する。2度は言わんぞ」


「キシャ…、勝手にしろ」


ボスにも牙を剝く猛獣は、もちろん格下の俺になど目もくれず、『影檻』に身体を押し付けるだけで突き破り、白昼へと消えていった。



△△△



第一校舎前。


「あんだ? あの間の抜けた女の声は? リサのやつみたいにバカだったな」


「ヒビキさん、それはなかなか失礼っすよ」


「あいつは俺にラブだからな。許してくれんだろ? …ヤキモチ妬いたか?」


「…いえ、別に」


轟と飽田の身内話を横目に、先ほどのスピーチを思い返す。


タナト教団。要求する身柄。


ルナか、テリヒメ。どちらか一人。


それに加えて、藤井カナト。


やつらも、考えたものだな。


「飽田」


「ですよね、オボロさん」


やはりこの男、話が早くて助かる。「そうだね」と鍵も理解する。


「ああ? なんだお前ら? 黙ってねえで俺にもわかるように言ってくれよ。自分らにだけ分かる話で盛り上がんなよ、側から見てて気持ちわりいぞ?」


「少し黙っていろ、馬鹿者が」


「ああん!? てめえ」


「痛い! なんで僕を叩くんだよ!?」


「おめえが一番気持ちわりいからだよ、クソ監査」


「理不尽っ!」


今回のケース。


対人戦闘。人質。


対策は、敵対勢力を速やかに消し去ること。余力があるのならば先のE地区での巨漢同様、身柄を拘束し、更なる情報を得る。


「轟」


「ああん?」


「貴様が頼りだ」


「…急にほめんな、死亡フラグだぞ」


目の前に立ちはだかる、ただならぬ気配。


警戒。


膨大なエナジーの量はもちろんだが、それ以上に、生物としての強さを本能に突きつけられる。


「通さぬ」


その容姿を見たのは、『月光』を授かる前の座学。近代史にて、60年前の人間と魔物の戦争・『抗魔戦役』を学んだとき。


『師匠』のものと共に教えられた異名。


「『人間殺しの獅子王』」


呼んだ名に、相手の顔が微かに動き、「ほう」と無表情が崩れた。


「お、オボロ君、いくら君でもこいつに挑発はまずいって…!」


「人間としての己を捨て、魔物の軍勢に組し、2000に及ぶ人間を殺した。この国の災厄の一体」


「…勉強熱心なのだな、人間の学生とやらは」


魔物の姿を解かないまま、余裕を持った笑みでこちらを一瞥する男。蛇塚ウロコとはまた違う方向で不気味な男が、


「仮面の小童」


目つきを鋭く変えた。


「刀を握りしめるその行為は、我への殺意と判断してもよいか?」


「人を人とも思わぬ畜生。貴様は俺が瞬殺し、その仲間も即座に地獄に叩き落して見せよう」


万全ではない身体。


さて、どこまで振るえようか。


「『月光閃(げっこうせん)・湖月(こげつ)』」


地面を強く踏み込み、詰めた間合い。首へと狙いを定める。


まずは、挨拶代わりの抜刀術。御託を並べる間に溜めた『月光』。


腕で防がれた。


簡単に倒れられても困るが、なかなかに堅牢。


「やるではないか。…そうか、貴様は『月』の血筋。さしづめ、この光の強度…『月光』といったところか。出力はこの上なく微弱ではあるが、なかなかに鋭利。研鑽を重ねていると見た」


「俺の一族も『戦役』で何人か殺されたと聞く。貴様の場合は捕縛はしない。この場で誅殺する」


「それで我が恐れ慄くとでも? 至極、短絡」


攻撃の予備動作。距離を取った。


しかし。


「ぐおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


先の爆音のごとき咆哮が、頭蓋骨を揺らした。獣化系のスキルによる『咆哮(ハウル)』だろうが、常人や魔物のそれを遥かに凌駕する空気の揺れと威圧感。


「ぐぅっ…!」


鍵と飽田が、その音に怯む。かくいう俺も、重心が乱れる。


「誅殺の願い、かなわずだ」


反応できない速度でこちらに詰め寄り、放たれた拳。


何の小細工もない、単なる腕力。感じ取れるからに、目の前のそれが顔面に到達すれば、頭が吹き飛ぶほどの威力であるだろう。


飽田の『エンハンス』も、鍵の『ロック』も間に合わない。


『月光閃・朧(おぼろ)』も間に合わないだろう。


蛇塚といい、俺は、近接戦闘に特化した格上とは相性が悪い。『月光』か剣か、いずれにせよ鍛錬不足。


遺憾だが、死するのは今か。


…ルナ。


「ごrrrrrるぁぁぁぁぁぁ!!!!」


乱雑に振るわれた飛び蹴り。


獣人は頭を蹴り飛ばされ、激突した壁を破壊した。


蹴った男は、両手で俺の胸倉を掴み、その粗野で品を感じさせない顔を近づけた。


「諦めよすぎんだろ。バカかてめえは」


投げ捨てるように両手を放し、すぐさま敵に向き直った。


「そんなにだせえ兄貴だと、おめえの大好きな妹がわんわん泣くぜ?」


「ほざけ」


身体は微かに悲鳴を上げているが、どうしたことか、内側は活力で溢れている。


「貴様の出る幕ではない。消えよ」


「俺かお前、それかあのワンちゃん。どっちが先に消えるか楽しみだな」


この男、やはり気に食わん。


オボロとヒビキは腐れ縁です。


1年生最初の模擬戦闘の試験(カナトが3話でやったやつ)。ホログラム内でヒビキの両腕を切り落とし、勝ちを確信したオボロでしたが、ヒビキに勢いよく喉を噛みちぎられ、危うく負けるところでした。


オボロは、両腕を簡単に捨てられるヒビキの狂気を、ヒビキは、純粋なオボロの技量を認めていますが、お互いに認めざるを得なくてイラついてます。


(例の戦闘後)

ヒビキ「運が良かったなクソエリート野郎。リアルファイトなら負けねえぜ?」

オボロ「ほざけ、愚物が。次はその見苦しい首も切り落として見せよう」

教師「君たち! やめなさい!!」

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