Lv41 国玉会議
「また、あなたですか」
年に2回、今回でその2回目の話し合いが始まると同時に、開口一番、この世で最も忌むべき男がこちらに狙いを定めた。
「この国玉会議の場で、『月』ではなく紛い物の『月光』が参加するなど、無礼千万。『太陽』すらも顔を出さない」
司祭玉・司馬明人が己の烏帽子の位置を調整しながら、汚物を見るように顔をしかめて笑う。
「イージスにはお伝えしたのでご心配なく。国玉の皆様を不快にさせたことはお詫び申し上げます」
司祭玉をはじめする3つの玉に頭を下げた。
「ええよええよ。うちは話し合いができたらかまへんし。もう一つのタマ…文明玉さんに至っては毎回欠席やしね? てかうち、新しい文明さんの顔、一回も見たことないし。…うちら、タマたちの方がガバガバになってんとちゃう?」
と財玉・金成樹。
「私も異論ないわ。むしろ、水無月君は世代の代表として、次代を守るために徐々に成長すればいいのよ? あの愚かな娘と仲良くしてもらってることだし、特に文句はないわ。近い将来、私たちの名と同じく『漢字登録』される日が待ち遠しいわ」
と軍玉・大城裕子。
言いたいことは多種多様にあるが、『月光』の立場をわきまえる。薄弱な朧月として、情報共有の役割を果たす。
「まあ、よいでしょう」
司馬明人が手を広げる。女性のように艶やかで長い黒髪が小さく揺れる。
「陽月教の司祭として、この国の玉として、度重なるあなたの愚行を赦しましょう。その満身創痍の容態からでしか知りえぬ情報もあるでしょうから」
こちらの胴部と右足に巻かれた包帯と松葉杖を一瞥し、司馬はほくそ笑んだ。
「労わりますよ。あなたは今月の暮れに、私のお義兄様になるのですから」
10月31日。
国家最高位の祝祭・『抗魔大祭』の日。
この男とルナは、結婚する。
病室から立ち上がることのできない俺を見下ろし、この男は決定事項として勝手に話を進めた。
「ルナを…我が『月』を穢し、心身を害するようなことがあれば…」
腰の刀を握りしめる。
細めた目線の先、
「相も変わらず妹想いなのですね。感服いたします」
こちらの殺意など意にも介さず、またも軽薄に笑った。
「『抗魔大祭』を待たずして死にたいらしいな…」
妹想いなどと勝手な想像を膨らませた相手に、理性の箍が外れかける。
「発言、予備動作ともに、無礼千万です。今すぐ司祭玉様に謝罪しなさい」
邪魔者を守護する邪魔者。
鎮座する司馬の後ろに立つ従者であり、陽月教の助祭・橘御影。『Lv35』。
「下がれ、橘。彼とてこの場で暴れるほどの馬鹿者ではない」
「ですが…」
「私の命令に背くか? 貴様に確約した『褒美』を取り下げるぞ?」
「…御意」
司馬の命令で下がる女。俺も微かに出した刀身を鞘に納める。
「は、早く会議をしましょう! 『タナト教団』の残党が動いたんですから!」
20にも満たない年齢の若きイージスが、この国のトップらしからぬ焦燥で本題を促した。




