↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
40/128

Lv40 素質

「おいおい! どう言う状況だこりゃあ!!?」


塾での拘束から解かれた俺は繁華街のカラオケ店へと駆けつけたが。


「おい! 説明しろ! ゴウシ!」


受付の時からVIPルームにご案内されたと思えば、どういう状況だ!


天王寺テリヒメがレッドフレームの女子を連れてくるって言ってたのに、男子も来てるし。


「ましてや…」


生徒会やブルーローズの連中まで勢ぞろいじゃねえか!


「ゴウシ! おい! ゴウシ!」


ああ、声が届かねえ!


こんだけ人間が騒めいてたら、そりゃあ聞こえねえか。


近寄って、直接背中を蹴ると、「おおん?」と間抜けな反応でこちらを振り返った巨体。


「話が違うだろ! なんっでブルーローズや生徒会の連中まで来てんだよ!」


「ああ、それはな…」


目線が飽田の方へと向かう。あいつの女をはじめ、他の女子どもで輪ができている。


「飽田のやつにバッタリ出会って、それから…」


「あのクソ飽田ぁ…!」


よく見たらレッドフレームの女子たちまであいつの周りに。


「まあまあ! 男たちで飲もうではないか! このオレンジジュースを! 我々の友情に乾杯だ!」


「大剛!」


よりにもよって、俺の周りには華のない男ばっかり。


こんなはずじゃなかったのによお!



△△△



「今のどうだったかしら!」


歌い終えて、アイスティーを口に流し込みながら、大所帯になった部屋を見渡す。


みんなの前で歌うのはやっぱり楽しい。「テリヒメー!」「今日もいい歌だなー!」


みんなの声が聞こえる。


ありがたいことだけど、今は、あいつに。


「って…」


見てないし。


カナトは、滝本先輩の弟と、相変わらずの喧嘩を繰り広げている。…とはいっても、カナトが1人で怒ってるだけで、あの子は相手にせず、女子たちの質問攻めに追われているみたいだけど。


「はあ…」


ため息をついていると、聞きたくない声が私を狙った。


「やっぱり歌うまいな。さすがテリヒメ」


「うげっ」


「うげってなんだよ?」


飽田ヨウジ。


存在を認知するだけで心臓が跳ね上がる。話しかけないでほしい。中途半端に、私のことをほめないでほしい。


誕生日プレゼントを選んで、終わらせる。この中途半端な思いにケリをつける。


「別に。…貝塚さんがヤキモチ妬いちゃうわよ?」


「それもそうだな。ま、そういうところも貝塚の魅力ってことで」


「相変わらず上手ね。さすがはイエロースパークの頭脳」


「その世辞、ありがたく受け取っとくよ」


自然な流れで会話を切り、飽田は女子の軍勢に戻っていった。


…。


一息ついた。


はずなのに、またしても、次は男子たちの方が忙しい。


脇谷くん、だっけか。


彼が、ブルーローズの2年と取っ組み合いになり、


「なんだとコラ!!」


顔を殴った。



△△△



「それで、君はどう責任を取ってくれるわけかな? 脇谷トミヒコ君」


呼び出された屋上。


さっき殴った男。ブルーローズの時雨(しぐれ)みずき。


そいつの隣、ブルーローズのリーダー・海崎(かいざき)シアン。首元まで切りそろえた身軽な髪。その青みがかった黒髪を夜風になびかせ、へらへらと笑う金髪の被害者をかばう。


「そ、そいつが最初に吹っ掛けてきたんだよ!」


事実だ。


「こいつが俺のことを侮辱したんだ。それで…」


「殴ったのだな」


「…はい」


『Lv40』の圧力。成人でも届かない人間の多い、40の大台を超えたエリート。中三の時点で到達している事実が、余計にこっちを圧迫してくる。


文化祭実行委員なんてふざけた集団に属している女の目は、大いなる怒りを理性で閉じ込めているようだ。


「こいつ、やばいんですよ!」


時雨が口を開いた。


「こいつと女子が話してるとこに僕が割り込んだだけで、肩を押して割り込みを阻止してくるんです」


「そ、それはお前が急に割り込んでくるから…!」


「でも彼女は僕が割り込んだ話に共感していたじゃないか。むしろ、君から離れたそうにしてたみたいだし。誰が興味持つんだよ、お前みたいな落ちこぼれに」


「お前、また!!」


「おーい、何の騒ぎだー?」


ヒビキさん!?


振り返ると、気だるげに頭を掻きながら、俺のチームリーダーが現れた。


「よお、文化祭実行委員のシアンちゃん」


「ふっ、今はその呼び方よせ。ボンクラヒビキ」


青と黄のトップが軽口をたたき合う。


「話は聞いたぜ。うちのトミヒコがちょっとやらかしちまったってな」


「い、いや違うんすよヒビキさん!」


チャンスだ。


この人は、『Lv45』。あの生徒会長と同じレベルで、蛇塚ウロコとの戦闘でも生き残った強者。それにこの人は、正面での喧嘩も強い。こんなブルーローズの温室エリートなんて、すぐに気圧される。


「こいつがですね、俺が人と楽しそうに話しているときに…」


「詫び入れろ」


「え?」


「聞こえなかったのか?」


胸倉を掴まれた。


…俺が。


「な、なんで俺が」


「だーかーら」


顔が近づく。合わせるだけで気絶してしまいそうな鋭い目つきが、身内である俺に迫る。


「シャバイことやってねえで、さっさと詫び入れろっつってんの」


「あ…あ…」


声が出ない。


なんでだよ。


ヒビキさん。


「すいません…、でした」


頭を下げた。下げてしまった。


「世話んなったな、海崎」


「いや、私の方こそ。大事に発展しないよう、次のミーティングでチームの皆にも啓発しておくよ」


2人の足元が消えていく。


「わかりゃあいいんだよ」


と、時雨の軽薄な声が無神経に俺の内側(プライド)を突いた。


「なんでだよ…なんでだよ!!」


下を向いたまま、叫んだ。そうしなければ、頭がおかしくなりそうだった。


「頭冷やせ。張り切りすぎ。肩の力抜けっての」


「くっ…」


もういい。


分かったよ。


「俺が悪いんでしょ?」


スキルを使ってやる!


建物ごと倒壊させて、さっきのやつらも、生意気な1年も、むかつく飽田も、肉体だけしか取り柄のない轟ヒビキも。


全員殺してやる!!!


「トミヒコ!!!」


ゴウシの野郎だ。


飽田のクソと一緒になって、屋上に来やがった。


「お前、スキル使おうとしたろ?」


「だったらなんだよ、ゴウシ。お前が止めてみるかよ?」


「っはは、面白そうじゃん」


「はあ!?」


飽田の野郎が、またしても俺の全力を笑った。


「つーかさ。お前、俺にもムカついてんだろ?」


「な、なにを言って…」


「丸見えだっての。お前、さっきから俺の方ガン見してたし。好きな女の子でもいたのか?」


「ち、ちげえ!!」


そうやって、俺のプライドを踏みにじって…。


「まずは俺から殺してみろよ。全員をまとめてやっちまうより、そっちの方が案外スッキリするもんだぜ?」


「ああ、そうかよ。そこまで言うなら」


お前ごとき…、俺のスキルで。


「やってやるよ!!」


その決意を蹂躙するように、轟ヒビキに殴り飛ばされた。


「何にも分かってねえじゃねえか、クソガキが」


許せなかった。


挑発したのは飽田なのに…、時雨なのに…。


なんで、俺ばっかり。


「もういい…もういいよ!!」


ああ、そうだよ。


「ああそうだよ!! あんたも結局、強者の側だったな!! 今の今まで俺を素質があるとか騙して、このクソ飽田みたいなやつらに自信をつけさせるための材料にしてたわけか」


「何が言いてえ」


「こんなとこ…イエロースパーク(こんなとこ)、来なきゃよかったよ!!」


「てめえ、マジで言って…」


「マジに決まってんだろ!! このクソ馬鹿リーダーが!! その辺の猿が統治した方が…クソ…何でもねえ…」


鼻の奥が沁みるように痛い。


目からじくじくと、雨粒のような温い水が零れ落ちる。


屈辱で、誰にも見られたくなくて。


出ていった。


家に帰りつくと、


「どこをほっつき歩いていた! このバカガキ!!」


帰りが遅いと、玄関前に立っていた親父に殴られた。


なんで俺が…。


なんで、俺ばっかり…。


その数日後。


文化祭まであと一週間に差し掛かるころだった。


イエロースパークにも実行委員会にも顔を出さなかった、明るい帰り道。


「イエロースパークの、脇谷トミヒコ君ですね?」


緑色の髪をした細い目の男が、俺に声をかけた。


「誰だよ、あんたは」


「貴殿は、ふふ」


「…?」


「拙者らには、あなたの力が必要なんです。まぎれもなく、あなたにしかないスキルを求める。…素質があるのですよ、あなたには」


「素質…っ!」


黒いローブをまとったその男は、先の楽しみを見据えるように、何か物騒な計画を企むように笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。