Lv125 認めたくねえけど
E地区。
第一人類史では『東京』と呼ばれた大都市は、今現在も大都市と呼ばれている。
抗魔大祭の日から半壊していた大都市が、さらに壊滅する。
目の前の、知性を持った化け物のせいで。
「コレガ…イヤナンダロウ?」
『真紅』の顔が醜く歪んでいく。笑う感情までもを得てしまった。
スキルやエナジーが単純に大きくなった方が、まだマシだった。
「くそ…!」
さっきの即興の着地技の反動で、身体がうまく動かない。
その間にこいつは、
「ヒトリ…マタヒトリ」
「ぐああああっ!!!」
剣士隊や騎士隊、銃撃隊の人間たちを1人、また一人と殺していく。
「カナト…オマエノセイダ…オマエガ…オレヲ…ソダテタカラ…トキハナッタカラ…クク…」
俺のせいだ。
「『タイヨウ』モ…『ツキ』モ…オマエナンカ…キライダ…アイツラハ…オマエヲラクニ…シナセタクナイ…ダケダ」
三日月のように目を細めて、現実を突き付けてくる。
胸が締め付けられる錯覚。
ルナ。
テリヒメ。
…。
「違う…」
「?」
「違うに決まってんだろ!!!」
肺が潰れそうで、両足もがくがくと、今すぐにでも倒れたままでいたい。
それでも、俺は証明する。
「お前があいつらを、好き勝手に語ってんじゃねえ!!」
俺を生かしたあいつらが正しかったことを、俺が生きて、これから証明していく。生きてくれてよかったと、誰にでも思われてみせる。
希望は…見える!
見えるそれは、本当に希望なんか、そんなものは分かんねえ。不確かで、抽象的で、あやふやで。
でも、それを信じる。信じて突き進む。
今までだって、そうだったじゃねえか。
俺は、俺の意志で、這い上がった。勝ってきた。
胸の中に飼ってたこのバケモンなんか、ただのオマケだ。間違いなく、この俺が、勝ち取ったんだ。
「『藤井カナト型成長!!」
抑えていた『反発』を、最大まで発動しろ!
無謀で傲慢な俺を。
誰にでも立ち向かえる不遜な俺を、再現しろ!
『反発』で作り上げた青白い、エナジーの剣。
「覚悟しやがれバケモン!」
「ムダナ…アガキ」
凄まじい速度で伸びる手。俺を丸ごと飲み込むほどの大きさの手が、迫りくる。
「避けねえよ」
『反発』の剣で、切り裂いた。
「グァァァァ!!!!」
入った切り傷は貧相で、浅い。すぐに再生されてしまう。
でも、この過剰な叫び。
さっきからずっと考えていたことだった。
こいつは知能を手に入れたなら。
「賢くなりすぎたみてえだな。この泣きべそ!」
「ナイテ…ナド…」
『超再生』で即座に無傷になった手を庇うように屈み、痛みを嚙みしめるバケモン。
このまま一気に畳みかける。
そう思いかけて、足が止まった。
「ナイテナンカ…ナイモン!!!」
バケモンが、暴れ始める。
弾け飛ぶ『真紅』が、ビルやコンクリートを更に破壊していく。
ああ、こいつ。
認めたくねえけど。
△△△
ナンデ…ダヨ!!!
ボクバッカリ…ボクバッカリ!!!
『またカナトがリョウに逆らってるよ』
『やめとけよ~、ケガするぞ~』
『お前じゃ無理だ。諦めろ』
ミンナ…ボクヲ…ヨワイモノアツカイシテ。
『カナト、大丈夫?』
ミツキ…ハ…ヤサシカッタ…。
デモ…。
『リョウだって、カナトのことをいいやつだって思ってるんだから、仲良くしてあげようよ』
ミツキハ…リョウノコトバッカリ…!!
イマ…ダッテ…。
「カナト!」
オレノ…トナリジャナクテ…ソッチノカナトニ…
「ミツキ、頼みたいことがあるんだけど…」
「カナトに言われなくても分かってるし」
ミツキガ…ワラッタ。
オレニジャナイ…ソイツニ…
「だから先に来たのよ? 会長やルナちゃんたちを差し置いてここに来た。たぶんこれ、私にしかできないことだから」
ミツキガ…『カゼ』ヲマトウ。
「オマエニ…ナニガデキル…!」
ソウダ…イマノオレハ…ミツキニモ…マケナイ…!
ツヨクナッタ…ダレヨリモ…ダ!!
「カナト」
オレノコトヲ…カナト…ッテ…。
ヤッパリ…ミツキハ…オレノコトヲ…。
オレノコトヲ…オレノコトヲ…。
「求めてないから」
…エ…?
「あんただけが強くなっても、誰のためにもならない。少なくとも私は、求めてない」
「ミツキ…ソレハ…」
「本気で言ってるから。ついでに言っちゃうけど、あんたが私のことを好きなのは知ってる」
「ナ…ナニヲイッテ…!!」
「教室で私のことをチラチラ、チラチラ、見てくるのが気持ち悪かった。自分の強さを私に見せつけるみたいにリョウに立ち向かって、大声出して、他のみんなにも迷惑かけて、わがままで、自己中で、気配りが出来ない」
ヤメロ…。
「マッテクレ…ミツキ…」
「待たない」
ソンナ…メヲ…シナイデヨ…。
「てか、誰がそんな人好きになるのよ。あなたの気持ち悪い理想を私に押し付けないで」
…。
…。
…。
「アア…アア…ナンデ…ソンナコトイウンダヨ…ボクダッテ…ガンバッテルノニ…リョウナンカヨリモ…ズットガンバッテルノニ…」
アア…。
アア…。
「ソンナカオ…シナイデヨ…」
「ごめん、カナト。言い過ぎたかも」
「いや、上出来だ! やっぱりお前、最恐の幼馴染だよ!!」
ミツキガ…ハナレテ…イク…。
「終わりだバケモン」
『ケン』ガ…ムネニ…ササッタ。
「認めたくねえけど、お前は、俺だ。タナト」
「ウル…サイ…」
チシリョウノ『ハンパツ』ガ…ナガレル…。
『チョウサイセイ』ガ…マニアワナイ…。
セメテ…コイツヲ…ミチヅレニ!
『シンク』ノケンヲ…ショウカンシテ…。
「やっべえ!」
ククク…。
「カナト! 避けて!」
シネ!!
「ナ…ニ…、ウ…ゴ…カナ…イ?」
…ツメタイ…。
「遊びじゃねえぞ、カナト」
リョウ…オマエ…。
「ったく、どっちに言ってんだよ、この大馬鹿野郎」
ケン…ガ…ムネニササッ…テ…ウゴケ…ナイ…!
『コオリ』ガ…ゼンシン…ニ…ヒロガ…ル。
「お前に言ってんだよ。人間の方のバカなカナト」
「うっせえバカ! もう裏切ったりすんなよ。次は俺がぶっ飛ばしてやっからな」
「それは楽しみだな。次はこんなのに頼らずに俺を討ってみろ、バカカナト」
「お前こそ、ドーピングなしで俺に勝ってみろっての、バカリョウ」
シニタクナイ…ノニ…。
ミツキ…ミツキ…。
ズット…フキゲンナカオ…シナイデヨ…。
「バカはどっちもね。ホント、2人はいっつも私を置いてけぼりにしたがるんだから」
ボクニモ…ワラッテヨ…!
解説
カナトがE地区に連れていかれた時、真っ先に追いかけたのはミツキでした。
タナトの攻撃対象に最もなりにくいのでダメージも皆無、エナジー総量も彼女だけが万全で、出力最大の『風』でカナトを追いかけました。テリヒメの『陽光凱歌』の能力上昇もあり、早めに到着。
リョウは厳重に拘束されていましたが、大城ユミコにより拘束を解かれました。
『必殺のグロース』の効果は完全に消えても、素のレベルは『Lv60』なので、全力疾走でカナトに間に合いました。




