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必殺のグロース—最弱からの急成長―  作者: ヒラメキカガヤ
最終章 必殺のグロース
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124/128

Lv124 特権

救護テント。


「まさか、娘に見下ろされる日が来るとはね」


「ふふ、絶景《グレイトフル》でしょ? お母さん(マアム)」


ふざけたように海外の単語を混ぜた口調は、この場には似合わない上、少し腹立たしいものがある。


「一重郎たちはいるのかしら? ユミコ」


「ええ、もちろん。私とは違って漢字登録された3人の(エクセレント)弟たち(ブラザーズ)は、漢字登録のされていない落ちこぼれの私と狙撃《ゲーム》の準備に取り掛かっているわ」


「ふふ、一言余計なものが混じっているわ。早く私に認められたいのかしら?」


「いえ、ただ…」


大胆な娘の顔が不気味に歪んだ。


「お母さん(マアム)を一日でも早く、軍玉の座から引きずり落としたかったもので。とても喜ばしいのです」


相変わらず豪胆な娘。平凡なスキルはともかく、精神面は評価するわ。


「今、私を殺すとでも?」


「いいえ。あなたには生きてもらいます」


娘はそう言い切るなり、北東…E地区方面に指をさす。


「毎日、漢字登録すら与えられない娘が、あのタナトにトドメを刺した英雄になり、脚光を浴びるのを、敵の策にまんまと陥れられたその愚かな目で見ていてください。片時も、目線を逸らしてはいけませんよ?」


「…言うじゃないか」


笑えて来る。ここは戦慄するところだろうに。


娘は私を、本気で食いにかかろうとする。


「漢字登録なんかいらない。私が欲しいのはいつだって、あなたが座っている軍玉(いす)ですわよ? 親愛なるお母様(マイマアム)」


私に似て美しい唇を舌で撫でつけながら、私に似て色っぽく笑った。


「ふふ、手柄を横取りにするのが目的なのね。さすがは私の娘。最後は自分の名誉を最優先にする悪いコ」


「お母さん(マアム)譲りの醜悪な思考(チャーミングポイント)よ。ふふふ」


「ふふふ」


お互いに真っ黒な腹を探り合い始めたのは、いつからかしらね。


我ながらに歪んだ親子愛が、敗戦の匂いを丸ごとかき消してしまった。



△△△



「くそっ、放しやがれ!」


息が苦しい。


全身が軋むようにいてえ。


体内の『反発』の強化を少しでも緩めたら、俺の身体はこいつのエナジーで、ミキサーの果物みてえに潰れちまう。


「モット…タカク…」


「お前、なんか賢くなってねえか!?」


「カクジツニ…コロス…」


バケモンが、学習してやがる。


「これがお前の『可変成長(けつろん)』かよ」


俺でも、この状況はやべえと思ってる。


知能を持たせちゃいけないやつが、持っちまった。


一部が崩壊した都市。今はミニチュアサイズのようなビル群が見える。


「ココダ…シネ…!」


さらに力が加わる。


視点が、無理やり真上に向かい…。


「グァァァァァァァァ!!!!!」


雄たけびとともに地面へと放たれたのは、俺の身体。


速すぎる。


空気抵抗で、首が…。


「もう…無理か…」


まだ、死にたくねえ。


俺は、生きたい。


『猿でもまともにできるエナジー操作。それが出来ないとなると、イージスになるなど夢のまた夢だな、藤井カナト』


記憶が、とてつもない速度で脳味噌を駆け巡る。


うっせえ、仮面野郎。


エナジーを集中させろ!


吹っ飛んっじゃいけねえところを守れ!!


次の問題は…。


「クダケロ」


落下の衝撃…。


どうする?


今の空気だけの圧力とは比べもんになんねえぞ。


ああ、くそ。


死にたくねえ。


『遊びじゃねえんだよ』


リョウ。


うっせえ。


ああクソ。


次は負けねえ。生きて再戦してやる。


「次はバケモンなんか使わなくても、お前とまともに張り合ってやる!! …うおおおおおおおおおおお!!!!」


技を作れ!


エナジーを作れ!


大地を穿つ、エナジーの大槌。


「『急成長』は、俺の特権だ馬鹿野郎!! 『望月ウサミ型成長(ビルド・チビウサギ)』!」


『月』を守るあのチビの、縦の着地をイメージ。


「これが俺の、『急成長(スーパーグロース)強打(ストライク)』っだあ!!」


大槌を思い切り地面に叩きつけたと同時に、目も耳も塞ぎたくなるほどの爆風が、俺の身体を更に吹き飛ばした。

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