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必殺のグロース—最弱からの急成長―  作者: ヒラメキカガヤ
最終章 必殺のグロース
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119/128

Lv119 一生

出撃前の作戦会議。


口火を切るのは…

「あの!」


Z地区。


勇気を振り絞った一声で、学内3チームと生徒会の全員の目線が私に注ぐ。


「おい、余計なこと言うなよ」


耳元に刺さる小声。


隣のトミヒコが自分ごとのように目を泳がせる。


こいつ、私のためを思って…意外と彼氏らしいとこあるじゃん。


「あとでヒビキさんにド突かれんの俺なんだからな? あんま下手なこと言うんじゃねえぞ。お前、意外とバカだし、それだけが心配だ」


うわ、こいつキッショ。死ねよ。別れようかな。


…。


的外れな提案をしたらどうしよう。


私ごときが、一刻を争うこの状況下でみんなからその貴重な一刻を奪っている。


震える手足、喉。


もう、後戻りはできない。


「私の『擬態』で、虚を突けないでしょうか?」


ついに、言った。


顔色を伺う。


人を茶化すのが好きだけど、いざという時には頼れる先輩。私のチームリーダー・ヨウコ先輩。


見るからに不良で、目を合わせるのもやっと。『イエロースパーク』の轟先輩。


落ち着きがありながらも内側に秘めた嗜虐性。ある意味では誰よりも怖い。『ブルーローズ』の海崎先輩。


今は仮面を取り素顔をさらけ出しながらも、能面のように冷ややかな無表情。生徒会長、水無月オボロ先輩。


そして、


「面白そうね。言ってごらん」


副会長、大城ユミコ先輩。


砕けた脚は未だ完治しておらず、用意された椅子に座しながら、松葉杖を差し棒のようにこちらへ向け、軍玉の娘は余裕めいた笑みを浮かべ、私に続きを促した。



△△△



「うぁぁぁぁん!!! テリヒメぇぇぇぇ! まぢで怖かったよぉぉぉ!!!!」


「マドカ、まぢでナイスすぎ!!」


抱きしめるマドカの身体は、オモチャのように震えが止まらなかった。


直接的な戦闘力のない彼女による勇気の奇策。


そのおかげで戦況は好転。飽田洋一郎を本物のルナが1発で仕留めた。


「このチャンス…」


絶対に無駄にはしない。


だからこそ。


『陽光凱歌』。


私の得意を、今度は手の平に集中させる。


「カナト、シャキッとしなさい!」


私の一生を変えてくれた男の背を叩き、喝を入れた。


こいつらしくもない、世界の全部に怯えるような弱弱しい目つきだった。


「テリヒメ…ダメなんだ、僕はもう、帰れない。それにもう、僕は勇敢に立ち向かえる『藤井カナト』なんかじゃない。ただの無力な臆病者なんだ」


「ああ、もう!」


こんなめんどくさい男を選んだつもりは無いんですけど!!


もう一回、『陽光凱歌』。


次は両手に纏い、このおバカの両頬を挟んだ。


「じゃあ、私が作ってあげる」


「な、何を?」


「あんたの帰る場所」


言われたかったセリフだけど、もう言っちゃえ。


こいつを失うくらいなら。


「私が、あんたの帰る場所になってあげる」


どんよりとしていたカナトの目が、わずかに輝きを取り戻した。


「あんたがめんどくさいオッサンになっても、めんどくさいじいさんになっても、私があんたを絶対に離さないオバサンになって、面倒見のいいばあさんになってあげる」


「テリヒメ…」


「だから!」


もう、覚悟は決まっている。


このバカのために命を賭けられるから、ここに来た。


「あんたは私の一生を、一生明るく照らしなさい!!」


自分で言ってて気持ち悪いけど、今はそんなことどうでもいい。


「藤井カナト。私は、あんたを一生、愛してる。『太陽《テリヒメ》』を守れるのはあんただけなんだから!」


この説得が、響いたのか分からない。


カナトの目の輝きは『陽光凱歌』による身体の活性でしかないのかもしれない。


ルナを遠くへ弾いた『真紅』が、こちらに狙いを定めた。


私たち2人を巻き込むように、タナトが口元にエナジーを溜める。


死ぬかもしれない。


何もできないまま。あるいは、抗ったとしても何の効果も消し去られて。


いくら事前に覚悟していても、いざその現実に直面すると、足が竦(すく)む、手が震える、思考が固まる、感覚が鈍る。


怖い。


「こんなとこで、死にたくないよ…」


せっかくカッコつけたのに。


全部台無しだ。


迫る『真紅』の奔流(ほんりゅう)。


馬鹿げた質量。


このまま、怖いなんて感慨も、今までの思い出も、これからの一生も全部、この『破壊の巨獣』に容赦なく消し去られて…


「『偽善全振り成長《ビルド・プロテクター》』!!!」


気配。


地に尻をつけたまま、その『彼』を見上げる。


「ああ、もう! これでいいんだろ!」


『Lv1』。


相変わらず『Lv1』…なのに、タナトの攻撃を無傷で凌いだ。私の『陽光凱歌』があっても、せいぜい『Lv20』相当なのに。


しかも、素手で。


「僕は…、いや、俺は…俺は俺は俺は俺は! 藤井カナト!」


そのバカは傲慢に、恐れ知らずに、『真紅』を防いだ自分の手を高らかに上げ、天へと宣誓した。


「ここにいるめんどくさいバカ『太陽』の、これからのめんどくさい一生を背負っていく大馬鹿野郎だ!!」

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