↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必殺のグロース—最弱からの急成長―  作者: ヒラメキカガヤ
最終章 必殺のグロース
PR
115/128

Lv115 最凶の『個』

「さっきからこいつ」


あそこにいる女の子しか狙ってねえ!


「おいおい、周りから好きなのバレバレだっつの!」


ミツキちゃん、だっけか。


「ミ…ツ…キ!!」


タナトなんかに好意持たれて大変だな。


つーかあれって、『急成長』のガキンチョの中にいたときの記憶を参照してんのか?


まあ、どっちでもいい。


「おい、ミツキちゃん!」


「は、はい!」


迫るタナトの手を空中で避けながら律儀に返事をくれる。顔もスタイルも性格も合格だ。


「この戦いが終わったら俺の彼女になってくれ!」


「えっ…」


ただでさえ命がけだし、ここは恐怖心を愛情に変えてやろう。


「ごめんなさい。私、他に好きな人がいるので」


「な、なにぃ!!??」


運命ってやつはみんな、そうやって俺のことを…。


これも全部。


「お前のせいだぞ! タナト!」


こんな状況じゃなかったらこの俺の告白を断るはずがなかった。こんな状況を作ったお前を、俺は許さねえぜ!


ああ、クソ。


せっかくいいパートナーが見つかると思ったのになぁ!


「『俺の剣技・其の七』」


神藤家の剣術を俺なりに改良した超絶最強の連撃だこの野郎。


「惚れんなよ、俺の生き様に」



△△△



すごい、としか言い様がない。


ただでさえ速く鋭い神藤先輩の剣が、別人のように研ぎ澄まされていく。


剣筋一つ一つを目で追えない。追えたころには、もう次の次くらいの剣を振るっている。


これが、初代イージスの子孫。1000年前にタナトを封印した、神藤須佐之男《すさのお》の血。


タナトの『真紅』が剥がれていく。


「剣術だけは、見惚れるやつかの」


ヨウコ先輩が溜め終えた。


「神藤! 焼かれたくなければ離れるかの!」


「紺野! やっぱりお前も化け物じみてんなぁ!」


「女の子に化け物呼ばわりとは、やはりお前はモテぬ男かの」


掌から顕現した、極大の紫炎。


今まで見たことのない大きさの、紫炎。


「アタチも、曲がりなりにも『最古の異生物』の一体だからの。その威厳、損ねるには少し寂しいかの」


放たれた紫の炎。


まるで魔物のように大気を這うそれは、『破壊の巨獣』の真紅を包み込むように広がり。


「グォァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」


内部に入り込み、タナトの命を焼き尽くすように暴れまわった。


忘れていた。


この人は、『最古の異生物』、『妖狐』の魂を身体に入れていることに。ただの年上で強い先輩じゃない。


「中に藤井カナトがいない今、一抹の容赦もせん。そのまま焼き尽くすかの、単なる化け物よ」


「ヨウコさん…」


胸が締まる。


カナトのことを思ってくれたこと。ただそれだけが、嬉しかった。


怖かった。みんな、カナトのことを殺すんじゃないかって。そうじゃないにしても、世界を脅かした罪だと隔絶して、裁くのではないかと。


でも、違った。


「そうだな、私の『海神の魔槍《トリアイナ》』も試したかったところだ。カナト君がいないから遠慮なく行ける」


「海崎先輩…ありがとうございます」


「おいおい! 親友の幼馴染ちゃん! 俺らも忘れんじゃねえぞ! 本当だったら俺の『超絶満塁弾《スーパーグランドスラム》を叩き込みてえところだぜ!」


「火野くんは私たちと一緒に死にかけのリョウ君を守るんだよ。A地区のエリートさんたちに任せて、私たちは安全に出世しましょ」


火野さんに風見さん。


「こいつ、カナトお兄ちゃんが抑えつけられたんでしょ? ライバルの僕に出来ないわけないよね? ビリンビリンにしてあげるんだから」


「カナト君にも借りがあるから。今が、この『箱』の正しい使いどころ」


タナト教団だった人たち。


「ありがとう…みんな…」


カナトを守るために、闘っていいんだ。


テリヒメさんの『陽光凱歌』がまだ残っている。


私も、


「ありったけの風を…纏え!!」


みんなと繰り出す最大出力の一つになる。


カナト。


ずっと、闘ってたんだね。


気付けなくてごめん。


私が絶対、止めて見せるから。



△△△



「なんじゃ? 急に固まりおって。思春期か?」


藤井寿太郎!


「なぜお前が…的な感じか? 答えてやろう」


貫かれたはずの胸に手を当てる。


「そりゃあもう…気合じゃ」


「…ふざけているのですか?」


「ふざけてはおらん。こうして生きているんじゃから、真面目も真面目。昔はよく周りから真面目で親切な子と言われておったもんじゃ! ガハハハハハ!!」


あの時もそうだった。


成功作『タナト』に宿したタナトの暴走。それを軽々と抑止し、『タナト』を連れ去った。


だが。


「口元から垂れる血で、万全だと誤魔化せるとでも?」


勝てる。


まだ傷は残っている。あの人間にも魔物にもなれなかった半端な『獅子王』は、曲がりなりにも『獅子王』だったのだ。


「あのワンちゃん、いい一撃だったのう。危うく天国に行くとこじゃった」


「ご安心を」


『虚脱』。出力最大!


「私がもう一度、次はきちんと送って差し上げましょう。藤井寿太郎!」


スキルが彼奴を捉えた。


はずなのに…。


「どう…して…」


スキルを放った両腕が、切り取られているだと!?


「『剣閃・回転輪切り』」


見えなかった。


おそらくは私の懐に潜り込んで回転攻撃を繰り出した。傷跡でしか軌道を推測できなかった。


なんなんだこの男は!


この男に対する疑問と畏怖が、いつまで経っても払拭されない。


…受け入れなければならない。


想定よりも早い死。


平らになる世界を見届けられないまま死する結末を。


このまま殺されるくらいなら。


「なんだ、このエナジーは…師範!」


「オボロ。レイナとカナトを連れて離れろ」


「しかし…!」


「離れろ」


「…はい」


良いものが見れた。


藤井寿太郎が初めて、私を見て警戒している。


内なる『真紅のエナジー』に掛けた『虚脱』を解き、箍を外しただけでこの反応。眼福の極み。


暴れる『真紅』。再び『虚脱』で出力をコントロール。


「不器用なガリ勉かと思ったが、案外やるおるな。楽しみで震えるわい」


「くく…それは恐怖で震えているのでは?」


「武者震いじゃよ。お前には分からん気持ちの高揚だぜい?」


今度こそ私の邪魔はさせない。


藤井寿太郎。


私の最後の『個(はつめい)』で、あなたという最凶の『個(さいのう)』を砕いてみせよう。

補足。

飽田洋一郎が神藤ザンテツに掛けた『虚脱』は、数分経って解除されてます。


「あの痩せぎすおじさんの攻撃喰らって、オボロは膝ついてたけど、俺は立ってたんだぜ! やっぱ俺ってすげえ! なぁ、ミツキちゃんもそう思わない?」

「あぁ、ええと…はい、すごいです」

「闘いに集中するかの、アホ剣豪」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。