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必殺のグロース—最弱からの急成長―  作者: ヒラメキカガヤ
最終章 必殺のグロース
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114/128

Lv114 なんで

『獅子王』の死を確認し、男の向かう先は…

「すべて、思い出したか?」


全部思い出した。


小さなころの記憶。


僕が何者だったのか。僕が何をしていたのか。


「まあよい。…もはや、タナトに帰る場所など不要だ」


歩み寄る男。


「イレギュラー回避のため処分する。悪く思うな、息子よ」


この人は僕の父親でもあった。


スキルすら使ってくれない。そのことにも言及してくれない。


当然だ。


僕相手にスキルを使う必要なんてないのだから。


タナトを失い、『Lv1』で『急成長』も使えない、自分の本当のスキルが何なのかも分からない僕なんかに。


向けられた銃口。


死ぬ。


…死にたくない。


僕はあの子たちを執拗に追い回して殺したくせに。


死んだ方がいいんだ。


怖いけど、そうするしかないんだ。


迷惑はかけられない。タナトと闘っている水無月さんたちの足を引っ張りたくない。ただでさえ僕が『藤井カナト』の時に好き放題やっていたのだから。


もう、わがままは言えない。


僕はすぐにでも死ぬべきだったんだ。


あの時。


タナトを入れられる前に研究所を抜け出して、山頂の崖から飛び降り、勇気を出して死んでいたら、こんなことにはならなかった。


僕一人が生き延びたせいで、みんなが迷惑している。


銃声が鳴る。


「『月光閃・湖月《コゲツ》』」


と、同時に弾かれた弾丸。


…なんで。


「逃げろ、藤井カナト」


なんで僕を守ろうとする。


「水無月さん、僕は」


「レベルを上げられないのだろう? ならば、無駄に命を散らすことはない。お前の帰りを待つ者がいる。俺が時間を稼ぐ。だから貴様はテリヒメとルナのもとへ…」


「ダメなんだよ!!」


洋一郎さんのスキルで膝を落とす水無月さん。また、僕のせいで人が傷つく。


「帰る場所なんてないんだ」


思い出す。


海辺で、走って追いかけた女の子。


僕と同じで名前がなかった孤児の女の子。被検体No.563。僕より一つ後のナンバー。海が好きだからウミちゃんと呼んでいた明るい女の子。


タナトに適応してしまった僕は、後のナンバーの子たちを全員処分することになった。


もちろんその中には、ウミちゃんも入っていた。


涙を流し、殺さないでと言われても、殺してしまった女の子。


「施設の子供たちを、いっぱい殺した。タナトを内包した力の実験だからって。でも、僕は止められなかった。きっと僕のスキルなら止められたんだ。それなのに、それなのに…」


殺したのはタナトのエナジーだ。それでも、制御できなかった僕が殺したようなものだった。


「はぁ…はぁ…お前に罪はない」


刀を地面に突き刺し、僕を見る。真っすぐな目をしている。正しい行いをしてきた人の目を、僕は真っすぐ見れない。


「諸悪の根源はすべて、この男だ。お前が気に病むことなど一つもない」


「擁護するか、水無月の子よ」


頬が歪んだ。この顔がずっと、怖かった。


「この子供さえ生まれなければ、タナトに居場所さえ与えなければ、今こうして世界が崩れようとしなかったのでは?」


「ほざけ…!」


刀を杖のように地面につき、前進する。


「言葉と行動が噛み合っていないな。その程度か、『月光』」


無理だ。


「やめてよ、水無月さん!」


僕のせいで、また…。


銃声が鳴り響いた。


正面からではない。


「あーあ、やっぱり『Lv0』の銃弾じゃ無理か。『Lv50』の狂人さんにはまるで効いてないね」


声がした。


「でもまあ、おじさんのスキル、私たちには効かないんでしょ?」


「…ご名答。菱田の孫。藤井家の血筋」


「レイナはそこの異能頼りの『月光』さんとは違うから」


君こそ、来ちゃだめだ。


「レイナ…! 早く逃げてくれ!」


「あらあらお兄さん、急にお行儀良くなってどうしちゃったの? 頭でも打った? …って言っても、レイナ、あらかた知ってるんだけどね」


腰のワイヤーを準備し、ナイフを手に持つ。


「だからこそ、退けない」


「なんでだよ…!」


「お兄さんだって、私の大事な家族だから。一応ね。一応だよ? あんまり重く好きにならないでね?」


「逃げろよ…逃げてくれよ!!!」


もう僕のせいで、死なないでよ!



△△△



あーあ。


『狂人殺し(レベルダウナー)』を展開しても、スキルの影響だろうな。


「『狂人殺し(レベルダウナー)』…か。私のスキル『虚脱』と同様。エナジーを持つ生物から膨大な量のエナジーを削り取り、身体とエナジーの均衡を崩す」


『Lv45』。5しか下がっていない。


「所詮、その兵器も、私が開発しZ地区に提供した物。私のスキルを応用して開発した物。エナジーを燃料とする機械ならば、私のスキルはその兵器をほとんど完封できてしまう」


薄々気づいていることをわざわざ言葉にしてくるあたり、性格が悪いな、このおじさん。


それでも、レイナは退かない。


このおじさんの『虚脱』が効かないのはこの場ではレイナだけ。瀕死のばぁばを再び闘わせるなんて考えない。


タナト教団。


私の母親を殺したらしいやつらを前に、退くわけにはいかない。


赤子だった私を守ってくれたらしい『お母さん』のために、世界を平らになんかさせてはいけない。


私が死んででも、勝って命を繋ぐ。


「本気で行くから」


「面白い。見せてごらん。才女の娘よ」


痩せぎすのおじさんであることだけが救いだ。格闘なら、レイナに分がある。


腰のワイヤーを射出し、拳銃を持った手に巻き付け、引っ張る。


「ほう」


「丸見えどころか、ガバガバだから、その重心」


そこから一気に引っ張り、回し蹴りで拳銃を落とし、


「まだだから」


回転してねじった腰に力を籠め、思い切りワイヤーを引っ張りなおし、薄い腹を肘で突く。


「ぐっ!」


この薄い肉体。やっぱりこいつ、武人と呼ぶには程遠い。あの忍の方が強かった。


これで決める。


しゃがんで、そこからハイキック。顎をかちあげる。


次は跳躍。


毎日、柔軟頑張ってよかった。


高く上げたレイナの美足を自慢の遠心力で、


「トドメ!!」


顔面に振り落とした。


「本当…に…」


倒れ伏した黒幕に、お兄さんが固まる。


「お兄さん、その人格でもレイナのことなめすぎだってば。クソ雑魚なのはそっちだっての、ざぁこざぁこ♡ ついでにそこの水無月様も見下してあげる~♡」


「ああ、その通り。僕は何も守れない雑魚だ。…ありがとう、レイナ」


「ちょっ、いくら何でもキャラ変わりすぎじゃない? 素直すぎてキモいんだけど」


調子が狂うな。


なんか顔が熱くなってきそうなのは、運動したからかな。


本当は素直な人だったってことか、この人。


いじり甲斐がなくなったのはちょっと寂しいけど。


「水無月さんもありがとうございます。…でも僕は、もう」


「避けろ!!!」


水無月のお兄さんがレイナに向かって怒鳴りつける。


…頃にはもう、遅かった。


痩せぎすの腕が、背後からレイナの胸を貫通した。


「油断」


伸してやったはずのおじさんの声が、私の背後、頭上から聞こえる。


「そう。菱田アヤ…お前の母親も、油断した。守りたい者の無事が分かった途端に、研ぎ澄まされた注意力が、酷く鈍る」


「な…んで…」


口から血が垂れる。腕を抜かれた胸から、やばい量の血が出てる。多分これ、レイナ、死ぬやつだ。


「私に武術の心得がないと思ったか? …無理もない。この痩身なのだからな」


「へぇ…おぢさん、ギャップ萌え…狙ってたんだ…? かわいいとこ…あんじゃん」


視野が狭窄(きょうさく)する。意識がもう、持たない。やられちゃいけないところ…多分、心臓を射貫かれた。


「この痩身だからこそ、生き延びるために必要だった。この身を鍛えねば、制御できなかったスキルに蝕まれ、枯れるのだから。このスキルさえなければ私はそこの水無月以上に、強固であったろう」


「なに…? 認めてほしいんだ…。いい年こいて…かまってちゃんなんだ…ね…」


寒い。


血が、かなり抜けてしまったんだろう。


あーあ。


こんなとこで死ぬんだ。


ばぁば達に怒られるかな。


母親にも怒られる。


せっかく命を懸けて守ったのに、って。


お兄さんにもカッコ悪いとこ見せちゃったな。


ジュタ爺にも守るように頼まれてたのに。


「…死にぞこないめ!!」


真っ暗な意識の外側がやけにうるさくなってきた。


三途の川でちょっくら水浴びしてきたわい。


聞き覚えのある声がして…

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