↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必殺のグロース—最弱からの急成長―  作者: ヒラメキカガヤ
最終章 必殺のグロース
PR
108/128

Lv108 気付かなかっただろ?

「魔物がいるから。レベルなんてものがあるから。兄さんは死んだんだ。カナト、お前のように闘いを娯楽のように楽しむやつらが増えたから、この世界はおかしくなったんだ」


リョウ! 


「グォォォォ!!!」


冷やすのはてめえの頭だけにしやがれ!


バケモンが、赤いエナジーでできたデカい拳を振りかざす。


氷剣と衝突した瞬間、爆発が起こる。


そして、リョウが素早く懐に潜り、


「氷閃撃《ひょうせんげき》」


冷気に光る刀身を、達人の域に達した速度と精度で横に薙ぐ。


バケモンの腹を抉るが、俺の肉には届かず、すさまじい速度で再生する『真紅』に弾かれ、リョウが距離を取る。


この繰り返し。


そう思われていたが。


「グゥ…」


均衡を破ったのは、バケモンの方からだった。


この世から大気を全て奪い去る勢いで、息を吸い込む。


「グォァァァァ!!!!」


その大気とともに吐き出したのは、口元で溜めた超高密度のエナジー。


極大な『真紅』の光線が、音と光を消し去るように前方へと撃ちだされた。


避けろ…リョウ!


「いいぜ…」


『氷のエレメント』が、身体の周囲を渦巻く。逆巻く冷気だけで、地面と大気を傷つける。


なんでお前は、立ちはだかってんだ。


お前らしく、堅実に逃げてくれ!


馬鹿野郎!!



△△△



カナト。


お前は違うと思ってた。


お前だけは、俺に勝手なイメージを持たないと思っていた。


お利口さんの優等生。


周囲の期待に応える。


真面目で忠誠心も高い。


…くだらない。


どうして素行がいいだけで、成績が優秀なだけで、俺は集団のために生きていると思われているんだ。


堅実派だと勝手に決めつけるな。


俺だって、自由になりたいさ。


誰かを自由に憎みたいさ。


兄さんが殺されたのは、外野の凡人どもの無責任な期待に応えたせいでもある。


兄さんなら、蛇塚ウロコを止められる。


とか思ってたんだろ?


兄さんを盾にしてしか、あいつを非難できなかったくせに。


てめえらの力で解決しようともしなかったくせに。


兄さんのスキル『氷結』。


空気中の指定した範囲を『氷結』させる。俺が持つ『氷のエレメント』とは違い、自由度は極めて低い。


死んでもなお、兄さんにずっといてほしかった。


だから俺も、『氷のエレメント』を『氷結』で運用した。


俺のエナジー量なら『冷気』で大抵のやつを殺せるのに、今まで無理にエナジーを消費して『氷結』にこだわった。


兄さんの技と闘い方を失えば、兄さんが死んだのを認めたような気がして、嫌だったから。


でも、認めるしかない。


兄さんは死んだんだ。


今、ここに生きているのは俺だ。


だからこそ、自由に、奔放に。


「俺は、この世の頂点に立つ」


統率する。


人任せの弱者。自分は弱いから、足手まといだからと、もっともらしい言い訳を並べて前線にすら立てない卑怯者。俺が上に立ち、強者と同じように危機を強制する。


自分の強さに自信のある強者。強いから、理屈を無視して我が物顔で自我を押し通す動物以下。俺が上に立ち、粛清してやる。


これこそが、真の平等だ。


剣を突きつけ、飛んでくる『真紅』の砲撃を迎え撃つ。


剣先に集中する。


砲撃の溜め時間。『冷気の気配』を全速力でタナトに流し込む。


やつの全身に膨大な『│冷気の気配《それ》』を纏わせた。


エレメント使いは発想次第で戦闘力が大きく変動する。


教科書にも書かれていた基礎中の基礎。


…闘い方は決まった。


もう、凝り固まった闘い方はしねえ。


兄さんと一緒に、俺は。


「『抹消氷河《ゼロ・エリミネーション》』」


この世界を、平らにする。


タナトの全身に漂わせた膨大な『冷気の気配』を、瞬間冷凍する。


どうだ、タナト。…カナト。


気付かなかっただろ?


『冷気の気配』。


地味で、緻密で、誰にも期待されない存在感のなさ。


タナトを凍らせ、膨らみ続ける氷は、やがて止まる。


その間、タナトは無様にも、全身が氷漬けのまま微動だにしなかった。


中にいるカナトもきっと、死んでいる。


…。


…。


「勝った…」


俺はカナトに、勝った。


いつだって、俺は勝っているが、こいつはいつも、ここぞという場面では、俺よりもずっと強かった。


その、『ここぞ』で勝ったこと。それにこそ意味がある。


「カナト、お前は俺の目標でもあったんだ」


お前の死も、無駄にはしないさ。


きっと、俺が統治する『第三人類史』でお前の死を役立てて見せるさ。


イージスになるのは、この俺だ。


「カナト! リョウ!」


…。


合流したか、ミツキ。


ああ、お前もそうだったな。


いつだって俺を期待した。


俺なら大丈夫だって、俺のことを強いことだけが取り柄の強者だと決めつけた。俺の本質を見抜こうともせず、周りの馬鹿どものように俺を愚直に信じ続けた。


勝手に期待しといて、少し自分の理想と離れると、そうやって勝手にがっかりするんだ。


なあ、カナト、ミツキ。


どうして俺の弱さも、見てくれなかったんだ?


どうして俺ばかり、勝手な理想を押し付けられなきゃいけないんだ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。