Lv105 防御は
「あーあ、水差されちゃった!」
激サブなんだけど!
この場合、気温がって意味じゃなくて!
「ねえ! おばあちゃん! 生きてますかー!?」
ババアが、冷凍庫に入れられたみたいにカチンコチンに冷えちゃった。
エナジーさえあれば、こいつは食肉みたいにならずに済んだのにな。
常人であることにこだわるZ地区。倫理の象徴。
…なんて綺麗ごとで語られてるけど、少数派の弱者が体のいい言い訳をしてるようにしか思えないんだよね。
弱いやつらが平和主義を美徳にして、無理に自分たちの存在意義を強くしてる的な。これも激サブね!
抗魔戦役で何体もの魔物を惨殺した女は、こんな冷気ごときの気配にも気づくのが遅くなって犬死した。
「そんじゃあまあ。電光石火の疾風迅雷が私のスローガンなもんだから…」
この毒のクナイで心臓をチクり。
これで終わりっしょ。
「んじゃ行くよー! えーいっ!」
思った以上に長期戦だった。
邪魔が入ったけど、楽しかったよ。
殺した奴らのほとんどはスキルとかエレメントだよりで面白くなかったし、あんたみたいな純粋な武人とやり合えたのは久しぶりだったな。
…。
はあ?
なんで、氷漬けになった腕が動いてんの?
「油断したな…小娘よ」
氷で塞がれた口を無理やり開いたババアが、掴んだ私の右腕を…
「…痛いんですけどぉ!?」
へし折りやがった。
咄嗟に左手で投げた針も、それを読んでいたかのように至近距離で避けられる。
靴を脱ぎ捨て、裸足で氷の上に立ったババアは、痛い素振りを見せない。
このババア、私以上に忍の素質があるんじゃ…。
「尻の青い小娘よのう」
「私の尻は青くなんかないし! 血色が良くて男どもには大人気なんだよーだ!」
凄まじい精神力。
でも。
「もうヘロヘロじゃんか! 次の全身全霊は避けられないっしょ!」
「お主の言う通りじゃが」
全身の筋肉が隆起した。
「この老骨、ただでは死なん!」
このババア、魔物が化けたんじゃないの!?
「この命、次世代のために燃やし尽くそう! 愛する娘が命を懸けて孫を守ったように!」
瞬間。
忍の私を出し抜くように飛び出して来た。
「っ!? …ほう」
駆け巡る『神速』に、ババアは急に立ち止まり、
「ここでチミかよー!」
相変わらず、ばっかみたいな速さで私に突っ込んで来やがった!
首元に迫る双剣。
「そのチート、いい加減やめてくんない?」
煙幕が間に合わなければ死んでいた。
「避けるあなたも大概、反則ですよ」
10月31日以来の再会。
煙幕が晴れ、見える美男子。
上杉ユウト。
たぶん、スキルは『神速』。
そうでなきゃ、ダメでしょこの速さは。
△△△
「でもさぁ、相も変わらず直線的で分っかりやすいってば」
この1ヶ月。
攻撃パターンの単調は浄化訓練で克服したつもりだった。
「はい、また防がれたね! 単細胞おつ!」
ちっ、と思わず舌打ちが出る。
「余裕があるフリして、しっかり効いてるじゃんかねー!」
焦るな。
後方。
遠方から響くタナトの方向。
「カナトくん」
早く決着をつけて、彼を助けなければ。
「よそ見」
「しまった…!」
お返しだと言わんばかりのクナイが、首元に迫る。
避けられない。
直前で、手が伸び上がり、クナイの進路を妨害した。
「おいババア! 邪魔すんなよ! 年金払ってやんないぞー!」
「かっかっか! そりゃあこまるのう」
菱田トヨコ。
『Lv30』相当の魔物をレベル無しで殺せる怪力を持つ彼女は、防御もまた常人離れしている。
「神速の坊や、防御はちと、素人さんじゃのう」
言い返せない。
ここが、僕の現在地。
どうしても、身体が強張ってしまう。
身を守ればいつも、それ以上に殴られて来たから。
忘れもしない、あの虐待の日々。
粗悪で横暴なあの人と2人で過ごす地獄が、今も僕の胸を締め付ける。
菱田豊子は、肉体強度が特に強いです。
総合力の高い寿太郎とアヤを唯一超える分野で、彼ら(寿太郎の場合はレベリング前)とは素手での戦闘では絶対に勝つか引き分けに持ち込んでました。
抗魔戦役でも、鉱物系の魔物の主『Lv32』を拳一つで砕き、それを見た魔物たちから本能的に恐れられていました。『殴殺姫』や『王殺姫』、『鏖殺姫』などと呼ぶ魔物もいました。美人だけど、とにかく目つきが怖かったみたいです。




