表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/23

LV.10 ベストとワースト

「リョウ! 俺とペアを組もうぜ!」


「いいや、リョウくんと組むのは私よ!」


飽田との任務が終わった翌日。模擬戦闘の授業。


今回は、隣のクラスの生徒とペアを組んでの魔物討伐。今日は、A地区の南部の特別訓練場でレベルが少し高めの魔物と戦う。


ペアは、基本的に自由に組むことになっている。出発前に体育館で、先生の注意事項などを聞いた後に、ペアを探しに散る。


同じクラスの滝本リョウは、相変わらずの人気ぶりだ。実力とルックスで、男子も女子も毎回こいつとペアを組みたがる。他クラスの人間たちも、多くがリョウの元へ向かう。


一方の俺、藤井カナトの半径10メートル内。


無人。


「 なんでだぁー!!」


心の声が出そうになった。というか、数秒後にそう叫んでしまった。


試験明けの模擬戦闘の授業。最弱として今までペアを組んでもらえなかった俺は、試験での快勝と学内チームに入隊したことで、少しは一目置かれるようになったと思ったのに、今までの出来事がまるで夢だと錯覚してしまうくらいに、俺の評価はまだまだ最低だった。


「組まねえよな、あんな雑魚」


「あいつ、イエロースパークにまぐれで入ったくらいで、喜びやがって。なんであいつが」


「相手の子の調子が悪かっただけでしょ」


俺の叫びに反応したやつらが、こっちをチラチラ見ながら、聞こえるように俺を非難する。


俺は、たじろぎながらもそいつらを睨みつけた。


よし。こうなったら。


自分で相手を見つけるしかない。


1人だけ、期待を持てる人物がいる。


俺は、固まった足を1歩踏み出して、隣のクラスのその人物に向かって歩き出した。


その人物も、リョウと同じくらいに実力があって、ルックスもいいから、男女から人気がある。



嵐ミツキ。


幼馴染のあいつなら、少しは俺のことを見てくれてるし、認めてくれているはずだ。


そう思って、俺はミツキの元へ歩く。近くまで来て、ミツキの横顔に声をかけようとした。


その時。


「リョウ!」


聞き慣れた女の声。体育館によく響いた。


その場にいた全員が、ミツキの方を向く。呼ばれた本人であるリョウも。


ミツキの声で静まり返った現場。彼女が、リョウと同様に周りに与える影響力が大きいことに、俺は改めて気づいた。


「なんだ?」


リョウが用件を聞く。単刀直入に、ミツキがこう言い放った。


「私と組んでみない?」


その言葉に、ざわざわと話し声が聞こえた。そのざわめきが、次第に大きくなっていく。


リョウは、何かを考えているような表情を浮かべている。


彼女の横顔は、さっきのピシャリとした硬派な声とは逆に、どこか自信がなさそうだったが、虚勢を張っているような笑顔を作っている。


「うそ…だろ…」


一方で、情けないほどに掠れ切った声。俺は、その横顔を、ただ見ることしかできなかった。


そして、ミツキの提案に対するリョウの応えも、俺なら分かる。


「いいぜ、俺もお前と組んでみたかった」


その瞬間、ドワッと、周りが盛り上がった。


「マジかよ!」


「学年1位と2位がの共闘が観れるぞ!!」


「やべえ…すげえ!!」


自分たちも戦闘をするはずなのに、周りはすっかり観客気分だ。それを見ていた先生も、「お前たちも戦闘をするんだぞ」と、口では言ったものの、どこか興味津々な様子だ。


俺は、ミツキと組めるのを、思っていた以上に期待していなかったみたいで、落胆も思いのほか、無かった。



しばらくして、他のペアも完成して行く。


心臓が暴れる…。このままだと、1人にされてしまう。普段の授業のときと同様、完成した2人組にお情けのように入れられる、あの屈辱的な目に再び遭わされてしまう。


なんとしてでも、阻止せねば…。


そう思った矢先、心当たりのある人物がもう1人いることに気が付いた。むしろ、どうして忘れていたのだろうと、疑問を持ってしまうほどに。


その女子は、思いの外、近くに立っていた。ソワソワしながら、見るからに不安そうな面持ちで、分かりやすくたじろいでいる。


きっと、彼女もまだなんだろうな。


確信して、声をかける。


水無月(みなづき)


声を受けた、イエロースパーク、そして学内で俺に続く2番目の低レベル、人見知り少女の水無月ルナ(レベル3)が、「はひっ!」と背筋を急に突っ張る。


「ふっ…藤井くん…」


俺を救世主か神のような類を見ように目を向ける。


俺は、先刻のミツキと同じく、単刀直入に言った。


「俺と、組んでくれ」



こうして、今日の模擬戦闘の授業は、学年ベスト2のペアと、荒くれ集団のワースト2のペアが、同時に誕生するという、奇妙な回となった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ