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デスゲームで死んだらパラレルロボ世界だったんですが?  作者: 蒼井茜


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前夜

 秋津洲先輩のリークもあって襲撃はぱったりと止んだ。

 そりゃもう秋の鈴虫が豪雪に巻き込まれたんじゃないかってくらいに。

 マフィアとかカルテルとかヤクザが尻尾撒いて逃げるとか……真田准将って本当にやばいんだな。

 聞けば「正式に少将とかになると前線に出られないだろ」と電話越しに言われたので、戦場に魂を売ったのは本当らしい。

 ついでに「俺の部下ならこの程度切り抜けると思ったけど、いいブレインがいたな。そいつも部下にしたい」と言ってスピーカー越しに聞いてた秋津洲先輩が涙目で高速首横振りしてた。

 まぁ准将に対して意見できる立場じゃないので彼女は黙って俺に抗議してたわけだが、俺は「今涙目で首振ってます」とだけ言っておいた。

 縦か横かは伝えていない。


「大砲に詰めてインベーダーハーレムに送ってあげようかしら」


「ごめん先輩、そのフライトはキャンセルで。ハーレムには歩いていくから」


「宇宙にどうやって歩いていくのよ……」


 クリスが律儀にツッコんでくれるがそこじゃない。

 実のところ俺達のチームって少数精鋭と言ってもいいんだけど、ブレインは足りなかったんだよね。

 一応凜がその辺の指揮系統やってたけど、どっちかと言うとオペレーターだからリーダー的なのが必要だった。

 仕方なく俺が指示出したりしてたけど、俺隠居してた側のプレイヤーだから定石とかそんなに詳しくないんだ。

 それもあってトップを任せられる人材が見つかった事は素直に喜ばしいと言える。

 だからあえて誤解を招く言い方をしたのだ。

 ついでに先輩の所属する特務隊チームと組めれば安定した作戦遂行が可能になるし、人数が増えるってのはそれだけ戦術の幅も、ついでに出撃回数も増やせる。

 単純にローテーションできるし、必要なら全員出撃も可能だからな。


「まぁそんなどうでもいい事は横に置いておいて」


「どうでもよくないんだけど!?」


「秋津洲先輩、こう考えてみようぜ。出世街道だよ、やったね先輩!」


「出世と命どっちが大切かわかってる!?」


「え、出世でしょ。真田准将は少将になるつもりはないみたいだけど俺その辺目指してるから。強いて言うなら中将? 最高責任者じゃないけど前線に出なくていい立場。安全な後方勤務。優雅にコーヒー飲みながらハンコ押すだけのお飾り中将になりたい」


「夢見すぎだから! しかもそれ命がけの末に辿り着けない可能性の方が高いから!」


「大丈夫、大将の伝手もあるし准将の口添えもあれば比較的有利なスタートになるから」


「ならないよぉ……」


 あ、秋津洲先輩が轟沈した。

 まぁいいや。


「で、本命ですけど明日からの交流祭で人気の馬は?」


「先輩に対する態度じゃない……」


「そらまあ一度勝ってますし、階級も特務隊の中じゃ差はないんで」


 秋津洲先輩と俺同じ階級なんだよね。

 俺達は超特例で佐官からスタートだったけど、秋津洲先輩は叩き上げで今の階級にいるから戦闘経験じゃ向こうの方が上だけど。

 俺という例外を除けば。


「むぅ……個人戦じゃ絶対ボコボコにしてやる……」


「はっはっはっ、集団で囲んで落とされたのに面白いジョークですね」


「本気の機体出すからな!」


「勝負に次はないんですよ。常に本気で行きましょうぜ」


「私の機体は国家機密も含んでるからおいそれと出せないんだよ!」


「でも出すと?」


「……さっき上官から許可出たから。次の量産型に組み込むシステム使えるから宣伝してこいって」


「なるほど、じゃあボコりますね」


「今ここでリタイアしたい?」


 ごりっと額に押し付けられた拳銃。

 んー、リボルバーとはいい趣味しているけど弾倉空なのが丸わかりだから脅しには向いてないんだよなぁ。

 特務隊の歴が長くなると拳銃を支給されるようになるというけど、俺達はまだ貸与なんだよね。

 それも任務中と、今回みたいな自衛が必要な時だけの。

 エングレーブも無いし、銃床に傷が多い事から実際に何度か使ったのはわかるけど……やっぱり人間相手はあんまりしてこなかったのかもな。


 あのクソゲーだとPKがいたから銃撃戦も割と慣れてたというか、そっちが俺にとっては本命だったところあるけどさ。

 隠居プレイヤーの家を襲うのはPKとかのレッドプレイヤーなんて言われた連中の得意分野だったからな。

 なにせギアを含めてプレイヤーの所持金やらアイテム総取りできる可能性があるとなれば、宝箱みたいなもんだ。


 結果的にインベーダーより先にトップランカーに殲滅されて、身を隠した先でなんかやらかしてインベーダーの群呼び込んで食われたらしいけど。

 その際の群に結構な数のプレイヤーが巻き添え食らったと聞いた時に隠居を決めたんだよな。

 有り金はたいて要塞みたいに改造した自宅を用意して、骨董品のギアをそのまま地下に収納してと……糞な想い出と楽しかった想い出がモザイク感覚で並んでるのはどうなんだろう。


「先輩、弾倉空っぽの銃ぶん回す暇あったら本命馬教えてくださいよ」


「……はぁ、可愛げのない」


「先輩は意外とかわいい所ありますよね。うちのクリスも負けてませんが……だが妹の凜には劣る!」


 端末の待ち受け画面を見せつける。

 ケーキを口いっぱいに頬張って、頬を赤らめながら撮影を阻止しようと手を伸ばしている凜の姿。

 実に可愛い妹である。

 と思った瞬間背後からどつかれた。


「痛いぞ」


「凜の自慢始まると長くなるから軌道修正したのよ。文句ある?」


「後日聞いてもらえるなら構わんぞ」


「そう、じゃあ凛呼んでおくわ。おやっさんも」


「わかった」


 クリスが顔をしかめたが……なんか変なこと言っただろうか。

 シスコンで何が悪い!


「えーと、本命だけど先輩。教えてもらえるかしら」


「はいはい……まぁ各地の中央校はだいたいチーム戦で人気よ。オッズはどう見積もっても2倍に届かないレベル。一方であなた達のチームはなんと13倍」


「意外と……」


 うん、オッズ低いな。

 クリスの漏らした言葉に同意するように頷くが、先輩がそれを遮る。


「あくまで暫定的な話よ。さっき真田准将の事リークして今の数字になっただけで元は50倍以上だったのよ」


「チッ……安全のためとはいえ稼ぎのチャンスを逃したか……」


「それ以外だとダークホースとして北海道のススキノ北校、茨城の大洗高校、あと山形中央校ね。どれも30倍以上」


「……全部知らんな」


「ススキノ北校はロシアとの交流で今回の大会に残ったみたい。といってもギアの性能は既存の物で、ひたすら交流試合をしてただけと言っているわ。実際ギアの外観だけ見れば量産機、機動性とかも大差ないように見えるけど細かいチューニングがされてる。それに持ってる武器も日本製じゃないわね」


「どんくらい繋がってるかって話ですね。先輩の読みは?」


「そりゃもうズブズブでしょ。言い逃れできないレベルで技術流出しているし、校長の首だけで済めば御の字かしら。少なくとも関係者全員最前線で生餌にされても文句言えないレベル」


 まぁ国防にも関わってくるからな……なにより他国のギアを国内に持ち込む理由を用意したのが良くない。

 いくらコンペがテレビ放送に加えてネット配信されるとはいえ細かい所まではわからん。

 実機を触れるような立場にいて、そんで自国の機体と競わせるという状況は無いことは無いが、学生レベルでそれができるというのはマズい。

 そのくらいは俺にもわかる。

 しかも持ち込んだギアを持って帰ったか定かではないとなればなぁ……。

 ちなみに留学生ポジのクリスはめっちゃ監視されているし、不必要に動かしたら即座に軍警がとんでくる。


「大洗は今回は本戦出場ならずだったススキノ中央校の分派というか……ススキノ中央校のリーダーだった人が率いているチーム。機体は型落ちだけど連携が凄いわ。はっきり言って最新鋭機与えればすぐにでも実戦投入できるレベル」


「ほほう……先輩だったらどう攻める」


「正攻法と言いたいところだけど、他の学校はそれで負けているのよ。だから各個撃破が確実かしら。もっともそれが通用しない相手もいるみたいだけど」


 おっと、睨まれてしまった。

 藪蛇だったな。


「で、山形中央校だけど情報がほとんどないの」


「そんな事あります?」


「あるのよ。こういうネット関係に強い人材を持っているとハッキングクラッキングで片っ端から情報消していくようなシステム組み上げるようなのもいるわ。真田准将のデータを改竄しているのもそういう手合いね」


「つまり?」


「准将お抱えの情報課に近い能力を持っている」


「電子戦特化と考えるべきか……となるとジャミング装置……いや、あれはでかいし燃費が悪い……他の学校が思いつかないわけも無いし、用意できない武装じゃない……迂闊に近づかない方が安全、あるいは速攻で片付けるか……当たり前に出てくる二択……だからこそ怪しい……くっそ、情報がないって面倒くせえな!」


「あのさ、すっごい初歩的な事聞いていい?」


 不意にクリスが手を上げた。


「どした?」


「ススキノは知ってる。北海道のえっちなお店がある場所」


「すごい偏見だが……まぁいいや」


「大洗はよくわかんない」


「俺も知らないけど……なんかのアニメの舞台になってたな。茨城でしたっけ」


「たぶんそう、私も詳しくはないけど茨城県立ってなってるから」


「じゃあ山形ってどこですか?」


 なるほど、クリスは普通に地理に弱いのか。

 世界地図とか宇宙地図基準じゃなくて日本基準で。

 俺も都道府県パズルとかやらされたら普通に間違える程度にしか覚えてないし、全部の都道府県の名前言えるかも怪しいレベルだからな。

 まぁ……留学生的な立場のクリスなら仕方ないか。


「東北地方の南西」


「そこの中央校?」


「そうよ」


「東西南北中央のどれですか?」


「全部よ」


 なんか……必死に頭抱えてた俺が馬鹿らしくなるくらいまぬけな話してるなこの女子2人……いや、過度に緊張されるよりもいいんだけどさ。

 とりあえず策も無いし警戒しながら寝るとするか。

 布団の下にタオルを丸めて寝かせて、俺達はベッドの下で就寝だ。

 あ、個人戦の方聞き忘れた。

 まぁいいか、ぶっ飛ばせば全員同じだ。

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