ポジティブ
さてさて、俺達は無事集団戦と個人戦で本戦行きが決まったわけだが……まぁ東雲と右京はともかくとしてだ。
手に入れたチケットを狙う連中と言うのはどこにでもいる。
転売目的のダフ屋だったり、あるいは賭博で誰それに賭けている輩だったりと。
つまり俺達という初出場で倍率の高いダークホースは邪魔と言う、まぁあまりにも安定思考すぎて博打に向いてない連中とそのご友人ってところか。
「向かいのビルと……あぁ、その下の階にもいるね。あとはす向かいの建物」
「天井の四隅全部に、それからクローゼットの取っ手。あと脱衣所とシャワールームとトイレにも監視カメラあったわよ。さいてー」
「こっちはエレベーターから5人来た。始末は軍に連絡すればいいのかな」
個人部門本戦出場が決まった俺とクリスと良平、三人そろって一つの部屋に固まっていた。
男女で不健全という意見は聞きません。
学生なのに拳銃持って、戦場でも鉄火場でもないのに刺客とドンパチしなきゃいけないこの状況の方が不健全だろ。
この世界作った神様はテキーラ片手に世界を創造されたんか?
もうちょい節操と言うものを人間に与えても……いや無理か。
「随分手馴れてるねぇ……」
「そりゃまあ、これでも特務隊ですから」
中央校の、そして特務隊の先輩こと秋津洲さんがふとももに頬杖を突きながらお茶を飲んでいる。
彼女も個人戦で本戦行きが決まった選手の一人だ。
「特務隊は人間相手にするようなことは無いはずだけど……」
「俺は喧嘩は無理だけど戦闘はできるタイプ、クリスは対人戦が基礎の奴、良平はいい所のお坊ちゃんで子供の頃から鍛えられたタイプ」
「だからと言って……まぁいい。こういう時に襲ってくる連中は生死問わずだから問題ないよ。それとフロントに言えば処理してくれる。一応軍の関係施設だからね」
「軍とやーさんずぶずぶじゃないっすか?」
「と言うより海外マフィアと一部の軍人かな。善良な軍人がいれば悪徳な軍人もいる、それだけのことだよ。人類規模で見ても蟻規模で見ても同じだろう?」
あぁ、働きアリとサボる蟻か。
美味しい所だけ持って行こうとする連中がいると。
「そいつらが前線に送られるのはいつ頃の事で?」
「毎年恒例、本選後」
「炙り出しっすか……本丸は?」
「お偉いさんだからねぇ。ニュースで病死したって報道される誰かだと思うよ。たまに普通に病死しただけの人もいるけど」
「そりゃまた、事情を知っている政治家は頭抱えそうな話で」
「実際結構大変らしいよ。血圧あがってとか色々持病が悪化してとか」
「盛り上がりすぎたんですね。ご愁傷様」
「ちなみに昔は殺しも普通にやってたらしいけど、流石に足がつきやすいから動けなくなるくらいの怪我で済ませるようにしたらしいってのは先輩の先輩から聞いたよ。杖なしじゃ歩けない身体になってたけどね」
「それまた」
「だからしくじっても大けがで済むと思うよ。安心してしくじってくれると私も本選で楽ができそうだ」
「御冗談を。リベンジしてやるって気配満々の癖に」
「ばれたか」
カッカッと笑って見せる秋津洲先輩。
あれ酒じゃないよな……。
まぁこの人の場合個人戦が終わってすぐ俺達の所に駆けつけてくれたから文句言うつもりはないけど。
その辺のセオリー知らなかったからこういうのはありがたい。
「しかしこれがゲリラ的に続くと思うと……あぁ、それも狙いか」
「そういうこと。潰せなくても寝不足にさせられたら十分ってね。で、何でお仲間は連れてきてないの?」
「右京と東雲はマジもんの一般人なんで、銃撃戦に巻き込まれたってだけでメンタルボロボロになって自滅します。なので特務隊の船で寝てますよ」
「君らもそうすればよかったのに」
まぁね、俺達の船なら安心安全に眠れただろう。
なにせ基準が軍仕様、無音でホバリングして成層圏辺りでのんびりできる。
ただ問題がないわけじゃなく、ミサイルでも打ち込まれたら面倒なのと、あとどの程度の襲撃か予想できなかったというのがある。
殺し前提ならここにミサイルぶち込めばいいだけだしな。
それをしてこないのは先輩の言う通りリスクマネジメントだろう。
「俺達までそっち行ったら本格的に何してくるかわからんので」
「流石にギアまでは出さないだろうけど……まぁ嫌がらせはするだろうね。それに狙うなら団体戦だけ勝ち残った二人より、個人戦勝ち残った三人だろうから」
「でしょ? 良平、スナイパーどうした?」
「銃口に花咲かせておいたよ」
「そかそか、クリス。監視カメラは?」
「わかる範囲で全部潰したわ。あとは正面から襲ってくる連中だけ」
「こっちも追加で3人潰した。弾薬が心許ないけど……朝までは耐えられるだろう。最悪真田准将に応援と護衛頼むか」
「待った、今真田准将って言った?」
先輩が妙なところでこちらに反応した。
何そのリアクション、怖いんだけど。
「俺達の直属の上司ってところです」
「あのバトルジャンキーが直属かぁ……ちょっと待ってな。今ネットに情報流すから」
「え、なんすか? バトルジャンキー?」
「あの人の機体、パイルバンカーとミサイルしか乗せてない超軽量機体。それで数万のインベーダー叩き殺してる。ついでに反逆者とか、領土侵犯とかそういうのも片っ端から。タンカークラスや戦艦クラスだけじゃなくボートサイズまで」
「……初耳ですが?」
「軍の中でも公にしたくない情報なんだよ。外聞が悪いから対インベーダーチームの若き准将にしてエースオブエースなんて言われているけど、その実態は戦場に魂を売った化物だ」
「つまり……その直の部下である俺達って……」
「この情報が広まれば襲ってくる人数は減るだろうね」
マジかぁ……こんな抜け道あるとか知らんよ。
というか教えてくださいよ准将も大将も……。
もうちょい楽できたかもしれないのに……いや、そしたら俺が賭ける前にオッズ下がってたか。
うん、結果オーライ!
秋津洲と打ったらチャレンジが続いていた。
久しぶりに聞いたぞ秋津洲チャレンジ。




