休憩
結論から話そう。
クリスと良平が負けた。
クリスは足が動かなくなったギアで必死に応戦したが、敵機の波にのまれて死亡判定。
良平はランチャーが不調を起こして武器が爆散、機体に備え付けられたミサイルなどで応戦していたが弾切れで降参と言う流れだ。
クリスはまぁそうなるなと言う流れだったが、良平に関してはもう少しあがけばなんとかなったと思うんだが……。
「よう、残念だったな」
「別に」
むすっとしたクリスにオレンジジュースを差し出す。
無言で受け取ってから即座に飲み干した。
「急に足が動かなくなった……何よあれ!」
「あー、京都の奴から聞いたけど洗礼だってよ。新参者が目立つとギアの性能のおかげじゃないかってどっかしらで物理的に壊すんだと。調べりゃ小さいけど致命的な断線とか見つかると思うぞ」
「なによそれ! こっちはまじめにやってるのに!」
「裏の組織も関わってるらしいから直訴するだけ無駄だって。ちなみに俺も左半分動かなくなった」
まぁ勝ったけど。
「なるほどね。だからあんな戦い方してたんだ」
「良平はもう少し粘れただろ。機体の質量生かして体当たりとかだけで十分致命傷与えられたと思うが?」
「できなくはないんだけどねぇ。如何せんこっちの機体は機動力に乏しいからそれを当てられる相手は限られてるよ。それに計算上なら機体備え付けの装備だけで十分どうにかできたけど、避け切られたところで無理だなーって思った」
うん、嘘だなこれ。
奥の手を見せたくなかったとかそういうのがあるわ。
こいつこれで腹黒いからなぁ。
「でだ、そろそろイレギュラーも追加されると思うがどうだ」
予選も残り二試合、と言っても俺の場合本戦出場はリザルト的な意味で確定しているから残り二試合は無視していいんだけどさ。
最終的に何機倒したとかそういうのがカウントされて、ポイントで本戦出場が決まる。
もちろん予選勝ち抜きだけでも本戦に行けるが、それ以外の方法もいくつかあるという事だ。
例えばポイント数が高い奴を狙うとかな。
あぁ、良平はそれも避けたのか。
こいつも結構な数沈めてたからポイントは十全にある、クリスにしても本戦に行けるかなくらいのポイントは持っているはずだ。
それを他所にやらないために降参した可能性もあるか。
今なら修理も間に合うだろうし。
「イレギュラーねぇ……ここまでが人為的なイレギュラーだとして、そろそろインベーダーが野良で出現するようになるって事かしら」
「まぁおおよそは。ともすれば……そうだな。対処できないレベルの箱無いと思うが振るいにかけるには十分なレベルが出てくるだろうさ」
「予想は?」
「ワイバーンの上位種や亜種。一般的に飛竜って言われるタイプだな」
ベヒモスほどじゃないが重装甲で、ギアが溶解するレベルのブレスと、まともに当たれば中身諸共バラバラにできる速度での突進、大抵の装甲を紙切れのように斬り捨てる爪や牙の斬撃が特徴のインベーダーだ。
ちなみにワイバーンの上位種として君臨しているので、よくワイバーンを連れて出現するからかなり厄介だが単体でもそれなりに面倒くさい。
ベヒモスより速い……言うなれば軽戦車だな、ありゃ。
「飛竜かぁ……その程度ならどうにでもなるんだけど……」
「言っておくが並の学生には厳しい相手だぞ。少なくとも1年生じゃ速攻逃げろって言われる程度には危ない」
流石にギアについて学び始めて期間が短い連中では勝てないだろう。
クリスの場合機体相性の良さもあるだろうけど。
「それでも交流祭に出てるくらいならどうにでも調理できるでしょ。数もいるんだし」
「その中に後ろから撃ってくる奴や、下手くそな射撃で誤射する可能性がある連中がいるとなると俺もまともに戦いたくないな」
「……それは、まぁそうね」
「だろ? ついでに言うならこっちの機体に不調が出てる可能性もあるし、他の連中だって似たような状況だとしたら……いやだぞ、半壊した機体ダース単位で敵か味方かもわからない、そんな中で先陣切るのは」
「考えただけでゾッとするねぇ」
良平よ、お前は後ろからまとめて吹き飛ばす側だろう。
少なくとも火力と言う意味じゃ飛竜のブレスよりおっかないんだよな。
「で、どうするの? 残りの試合」
「せっかくだしな、暴れるだけ暴れてやろうと思う。次の試合は無理でもラストはツクヨミ改出せそうだし」
「あ、冷却終わりそう?」
「おう、冷却室にぶち込んで装甲とか全部開けてキンキンに冷やしたからな」
冷却室、簡単に言えば湿度を0にして氷点下まで温度を下げた部屋だ。
冷凍庫だな。
機体の冷却に使われるのは稀だが、良平の糞デカライフルとかの冷却にはよく使われるため戦艦なら一つくらい備え付けられている。
「それに流石にブラックボックスで遊ぶのも厳しくなってきた。本戦はツクヨミ改の方でいかないと無理だ」
「あの全部乗せは?」
「エクステンデッドは集団戦でも使えるが……正直その後の事考えると普通にスピーダー使った方がいいな。あるいはランチャーかバスター」
どっちも射撃に偏重した装備だ。
ランチャーは良平みたいにデカいライフルを二門もって焼き尽くすタイプで、バスターは手持ちのビームライフルこそ一般の物だが射撃兵装が山積みになっている。
継戦能力だけ見ればバスター、瞬間火力ならランチャーで、どっちも同じレベルで広範囲を焼き払える。
まぁ今回はバスターが無難かな。
一応射撃偏重のランチャーと違ってサーベルも複数担いでいるから。
「あの馬鹿の考えた広範囲殲滅用?」
「そう、馬鹿の考えたエリア内全焼機体」
住民の生存とか考えてない、市街地で使ったら俺が逮捕されるような機体なのだが砂漠や宇宙だと重宝する機体だったりする。
一定範囲内を焼き尽くすという意味じゃどっちも同じだからな。
「サーベルでもいいんだけど、ちょいと目新しさが欲しい所だったしな」
サーベルパックはその名の通りビームサーベルと実体剣を山ほど積んだ代物。
主に市街地での戦闘に役立つのだが、馬鹿の発想の行きつく先と言った感じで全身をサーベル系の武装で覆う事でただの体当たりで敵が爆散していく。
一方でコックピット周りまでサーベルで埋め尽くすので、乗り降りすらパージしなければいけないという手間がある。
マジで考えた奴馬鹿。
作った奴はもっと馬鹿。
いや、優秀なやつがトライ&エラーかましているだけでもっといい装備を量産するようになればいいんだけどさ……それを軍に送りつけて「お前の頭の中って何が入ってるの?」って意訳できる内容のお手紙と病院への紹介状出されるレベルには馬鹿。
まぁ改造して少しはまともになったパターンをいくつも送り付けているせいで直属の上司は結構苦労しているらしいけど、それを乗り回せと言われてる俺よりはマシだと思うよ。
たまに自爆前提の機体とかあるから。
シミュレーターで突撃&自爆が武器ですって言われた時は無言で終了して殴ったからね。




