入り乱れ
さてさて、どんな手段で出てくるか……そう思ったところで肩透かしを食らった。
なんだよ、全員集合して囲んで叩く戦法か。
流石に密集とは言えないけど、それでも近い位置で待ち構えている。
かかって来いよと言わんばかりの布陣だが……正直これ無視するのが一番楽なんだよな。
例えば良平みたいにあの辺に雑にビームバラまけば何体か落ちて、そんで散会したところを片っ端から切っていくだけ。
他にも手段はいくつかあるが、今回は砂漠フィールド。
遮蔽物として使えるものは多くない。
というか物理的に作らないと無いというべきか。
ならとりあえず挨拶の一発でもぶち込んでおくか。
「ロケットパーンチ!」
動かない左腕を右手で支えて敵の方向に向ける。
そのままブラックボックスの基になったスサノオ特有の破損部位射出能力を持って腕を飛ばしただけである。
「あーんどロケットキーック」
そして左足も飛ばす。
多少なりともエネルギーを持っている金属の塊が亜音速ですっ飛んで行くのを眺めてから、腰を下ろしてじっくりとスコープを覗き込む。
あれで結構頑丈な造りになっているからな、岩とかなら砕けるくらいの威力があるが砂漠じゃ大した意味はない。
ズボリとそれが地面に刺さったのを見てから、なんだなんだと暢気に見ている連中の眼前にある腕部パーツと脚部パーツをそれぞれ撃ち抜いて爆散させた。
やろうと思えばミサイル代わりにはなるんだよ、スサノオの手足って。
普段はおやっさんがブチギレるからやらんけど、ベヒモス戦でクリスのやった眼球内自爆と同じだな。
あれの縮小版。
流石にリアクター巻き込めないから威力は控えめになるけど、それでもミサイルとして使うなら十分。
「さてさて、巣穴を突いたところでブラックボックスの本領発揮と行きますか」
何故こいつが複数のリアクター積んでもエネルギーが足りていないのか、その理由の一つが全身に取り付けられた武装の数々にある。
例えば足にビームサーベル仕込んでみない? という意見を出した技術者に対して爪先につけるのか、脛につけるのか、太ももか膝か踵かと意見が割れた結果全部付けちまえとなった。
そして足につけるなら腕にも付けようぜと言う事で腕にもビームサーベルを備え付けて、さらに実体剣もくっつけて重くなった。
のみならず、何をとち狂ったのか分離状態のバックパック、つまりは無防備な脱出形態でも戦闘できるようにしようぜと取り付けられたミサイルとガトリングと超伸びるビームサーベル。
経常的には翼の先端から出るようになっているが、ギア5体くらい真っ二つにできる長さを誇っている。
あちこちビーム兵装だらけでクッソ燃費悪いんだよ。
なお翼そのものも剣のように鋭くなっているのですれ違いざまに切りつける事もできるし、先端にビーム砲塔を備え付ける事で脱出後も戦闘可能にされた。
けどね、このビーム砲塔とかサーベル使うと5分で俺が蒸し焼きになる設定なのはどうかと思うの。
ミサイルとガトリングはマジでバランスゴミだし、それ以外にまともに使える武装は研ぎ澄まされた羽だけ。
と思いきや、その羽も直に切りつけると捥げるので使えない。
ギリギリ、本当にギリギリだけどクリオネみたいなインベーダー相手ならどうにかぶった切れるかな程度の強度しかないのだ。
見た目クリオネで、攻撃方法も頭が割れて触手が伸びて捕食してくるだけの雑魚なんだけど数が多い。
そしてビームが効きにくいという強みを持っているそいつは、物理攻撃にめっぽう弱い。
具体的に言うならデブリにぶつかっただけで爆発四散するくらい脆いのだが、それを本当にギリギリで切れるくらいの脆さだ。
……やっぱりあのメカニックたち頭おかしいって。
実験機とはいえ何でもかんでも乗せ過ぎなんだよ。
「あ、弾切れだ」
正確には何機か落としたところでビームライフルに回してたエネルギーの余剰分が無くなったのでポイ捨て。
あとはギアに仕込まれた武装しか使えないんだが、合計で50本を超えるビームサーベルを展開できるだけの能力がある。
これまた全部展開すると3分で俺が死ぬけど、手足に最低限サーベル展開させるだけなので1時間くらいは問題ない。
それ以降はエネルギー残量の心配しなきゃいけないけど、焼け死ぬことは無いので安心設計になっている。
全部おれがマニュアル調整しなきゃいけないという糞仕様を除いてな!
ちなみに手のひらからもビームが出る。
ライフルみたいに打ち出す事もできるけど、威力減衰率が高いので基本的には接触状態での攻撃が望ましいというなんだそれと言う武装。
それらを適時使い分けながら戦うのだが……敵とか見てる暇ねえよ!
クッソ忙しい!
レバーだけじゃ足りねえからキーボード直に叩いて直接命令しているけど常軌を逸しているとしか言えん。
しかし大多数は落とせたし残りも数機、殲滅戦と言ってもいいかもしれんな。
『さすがね、だけど秘密は女を美しくするって知っている?』
一息付けると思ったところでモニターに映し出されたあの女の顔。
笑みを浮かべたまま随分と楽しそうだ。
「余裕だな、それが秘密か?」
『まぁそうね。面倒は嫌いだから私の番が来る前に終わらせたかったんだけど……』
高エネルギー反応!
場所は……は? 真下?
とりあえずカカッとバックステッポ。
『残念、罠に引っかかってくれなかったのね』
「見てから回避余裕でした」
『……本当にムカつく奴ね、可愛げがない』
「そういうあんたは面だけは奇麗だけど腹の底はどす黒いな」
『言ってくれるじゃない。なら私の愛機で直々に潰してあげる』
再びの高エネルギー反応……いや、さっきと違う!
熱源がないのにエネルギーが動いて……ギアの機動に似たものだが……いや待て、いつあの罠を仕掛けた?
なんでわざわざ密集させた?
それが俺の考えてたことと同じなら……。
「やっべ、爆心地じゃねえか!」
慌てて上空へ逃げると拡散するビームで残っていた機体が一掃され、そのまま大爆発の連鎖を引き起こした。
あの女……随分と手の込んだ事してたな?
『私の愛機、ギガンテスにその状態で勝てるかしらね!』
あー、そういやあったな、あんな機体。
全長50m、一般的なギアが18mなのでざっくり3倍近く。
その巨体にふさわしくリアクターを10個くらい乗せた超高級な、でくの坊。
対大型インベーダー用決戦兵器と銘打って市販されていたが、でかい、鈍い、脆いと三拍子そろってたから誰も使わなかったやつだ。
ただ……対人戦だけだったら最強格の候補になるくらいには面倒くさい相手だった。
脆いと言ってもインベーダーの攻撃を受けたらサイズ関係なくバラバラになるという意味であって、一般的なギアの持つ火力じゃその装甲を突破するのは難しい。
だけでなく、関節部を狙った攻撃にしても普通のギアと変わらない速度で動く……相対的にブースターやスラスターの数と大きさの割には遅いとしか言えないが、それでも狙いがつけにくい動きをしてくるので面倒極まりない。
そもそもの巨体が武器で、倒れただけで相手が死ぬ。
そんなもんを砂中に忍ばせていたのは……たぶん開始前の準備時間で穴掘りしてから他のギアに埋めさせたんだろう。
それで俺がのこのことその真上を通った時に通信で気を逸らして、不意打ちに出た。
まぁまぁ考えられているけど……所詮は学生の浅知恵。
実戦経験が足りてねえよ!
「そいつの弱点教えてやるよ、対人戦においてのな」
『ふふん、強がりね。インベーダー相手ならともかく普通のギアで勝てるわけないじゃない』
「いや、余裕」
所詮は最強格だった、過去形だ。
攻略法が見つかってからはカモとしか見られなくなって、そして歴史の闇に消えていった機体である。
じゃなけりゃ俺が思い出すのに時間かけるわけないしな。
「まず懐に入られるとデカすぎて突進か倒れるくらいしかできない」
『きゃっ、ちょっ、はやっ』
「で、コックピットの位置が腰の真上、つまり脚関節の間……もうちょい言うなら股間からの攻撃が大ダメージになる」
『え、ちょっと、足が……』
「で、股間に穴あけたらそっから装甲引っぺがせば……こんにちは、そして死ね」
何か言おうと口を開いていたが無視して、引っぺがした装甲の隙間からこちらを見下ろすようにしていたパイロットをコックピットごと焼いた。
そうなんだよ、足元がお留守になるくせに守りに弱いから最終的に無人の機体並べてバリケード代わりにする以外使い道がなかった。
ちなみにコックピットの位置が腰なのは少しでも揺れを軽減するためとのことだったが、こんな懐に潜り込みやすい機体ならどこにコックピットがあっても同じなんだよな。
開閉機構がついている以上そこは脆いわけで。
「はい、終わり終わり」
……あれ、試合終了の音がしないぞ?
『貰ったぁ!』
「不意打ちなら通信閉じろよ」
訝しんでいると四方八方から新品同然の機体がとんできた。
誰だ、知らない奴だな……。
『ふっ、あいつは所詮囮よ。本命はこの俺さ……』
「死ね」
一機だけ動きが違ったのでサーベル展開して蹴り飛ばせば試合終了の合図が鳴った。
……誰だったんだ?




