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デスゲームで死んだらパラレルロボ世界だったんですが?  作者: 蒼井茜


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中央

「いやはや、完敗としか言えないな。見事だよ」


 試合を終えてスポドリでも飲みながら冷却を待とうと外に出てみればパイロットスーツの男女5人がツクヨミ改の前にいた。

 あぁ、中央の奴らだな。


「そりゃどうも。作戦が上手くハマってくれてよかったよ」


「ほう? 後学のために聞かせてもらえるかな?」


 代表して喋っている女性、随分と仰々しい口調だが長く伸びた髪からはパイロットと一目で見抜くのは難しいだろう。

 俺もこうして連れ立って、なおかつパイロットスーツを着ていなかったらすぐにはわからなかっただろうからな。

 基本的に男女問わずパイロットは短髪が多い。

 ヘルメットを着用するのに髪が長いと面倒くさいというのはもちろんあるんだが、それ以上に蒸れるからな。


「ドローンを使っての敵機探知はまぁ当然、と言うのはわかるよな」


「うむ、私達も同じ事をした。とはいえあの数を2人でと聞いた時はさすがに耳を疑ったがね。それも戦闘用ともなればなおさらだ」


「まぁそこは持ち前の才能と努力の賜物ってことで。話を戻して探知したらまとまって向かってきてくれている。そっちは俺だけが孤立しているのを見ていたんだろう」


 探査用のレーダードローンは基本的に1ダースくらいなら一般の機体にも無理なく積めるからな。

 問題があるとすればデッドウェイトになる事だが、それもパージして捨ててしまえばいい。

 まぁ戦闘用はそうもいかないし、レーダードローンよりも感知範囲が狭く、更に攻撃を前提として銃が取り付けられているのもあって方向をしっかり決めないといけない分操作の難易度が桁違いなんだがな。

 ちなみに東雲はレーダーに徹すれば今の5倍、俺は10倍操れる。

 逆にレーダーに慣れた凜だと良くて半分、悪ければ2割くらいしか戦闘用ドローンを扱えないんじゃないかな。


「まぁそうだ。それで何かあるのだろうと思い先に君を潰そうとした。真逆の結果になったがね」


「ある意味じゃそこも狙いだったんだよな。孤立した奴を叩くのは鉄則だから」


「あぁ、何をしでかすかわからないという意味でも、単純に孤立したまぬけだとしても無視はできない」


「だから囲んで俺を叩こうとした。戦艦周りには他の4人が残っていたしな」


「護りの薄い部分から崩すべきだとは思っていたんだが……まさか一人に壊滅させられるとは思っていなかった」


「その代償がこれだよ」


 中央のリーダーを手招きしてコックピットの空気を吸わせる。

 外気を取り込んだことで多少マシになってはいるが、それでもぬるめのサウナくらいには熱を持っている。


「……随分な無茶をしたようだが?」


「15分で蒸し焼きになって死ぬ装備だからな。交流祭が終わったら機体を本格的に改造するつもりだ」


 ツクヨミ改のお披露目としてベヒモス戦と、交流祭両方を見せれば恩義は十分に果たしたと言えるだろう。

 それが中身の8割が別物になっていたとしても、お宅の設計図を基にしていますと言えばまだ話は通る。

 ただそれじゃ足りない部分が出てきたからな。

 と言うか今後を考えるとツクヨミ改ですら手を焼く場面が出てきそうだし、何よりブラックボックスで収集したデータとツクヨミ改で収集したデータが潤沢なのだ。

 まぁ資金はどうにかしないといけないんだが、そこはデータを軍に売る事でどうにかする予定である。

 今の所コンペの連絡も無しなので、たぶん普通に落ちたと思っている。


「リスキーな武装だが短期決戦を狙っていたのか」


「あぁ、俺がわざと孤立したのもそれが理由。分散して散発的に攻撃されるよりまとめてかかってきてくれた方が対処しやすいからな。マジで賭けだったけど、最悪その場合でも10分で対処するつもりでいたとだけ言っておく」


「まったく、これがでまかせや誇張でないとわかるから恐ろしい。しかしおかげで他のメンバーの実力が見られなかったな」


「それは個人戦で自分の目で確かめてみてくれ。あいつら、なかなかに厄介に仕上がってるぞ」


 クリスは言うまでもなく、良平も単独で十分面倒くさい相手だ。

 東雲や右京なんか言うまでもない。

 まぁあの人格変貌者二人に関して言えば囲んで叩かれると弱いという明確な弱点があるけど。

 クリスはそんなん一点突破で切り抜けるし、良平はこれ幸いとホバー移動しながらゲロビ大回転でまとめて薙ぎ払うだろう。


「それは楽しみだ。しかし長年我が校が本選に出ていたというのに……今年は君達に託すしかないな」


「託す?」


「各パイロット育成校の予算分配の方法を知っているかな? 主に交流祭で優秀な成績を収めると軍と文科省双方から支度金が用意されるようになる。予算の底上げとは違うからルールに抵触することも無い、クリーンな方法だ」


「ほう?」


「具体的に言うなら優勝した学校はギアの配備が進みやすく、更にシミュレーターやそれ以外のパイロットスーツと言った個人レベルの物まで質がいいのが用意されるようになる。特務隊も同じ支援を軍から受けられるが、交流祭で貰える資金は文科省も関わっている分桁が3つほど違うと思っていい」


「随分と……」


「大仰、と言いたいのだろうけれど即戦力はいつでも求められているからな。そして優勝した学校の分校も僅かばかりだが援助が受けられる」


「なるほど、それが団体戦の優勝賞品か」


「他にもあるがこれはおまけみたいなものだな。温泉旅行券とかそういうものだ」


 マジでただのおまけじゃねえか……。


「じゃあ個人戦だとどうなる? やっぱり資金援助か?」


「いや、個人戦は学校という垣根を取り払っているからな。完全に個人技を重視している。パイロットの腕前はもちろん、いい機体を用意する伝手、それを得るための資金、問題なく稼動させられるだけの準備期間にその間修理などを請け負ってくれるメカニックの存在などを自分で融通できたかどうかが分かれ目になってくる」


「待て、俺特務隊なんだけど軍からの出向できてるメカニック任せだぞ?」


 一応俺も整備はしているが、流石におやっさんレベルに突き抜けた点検はできない。

 いや、あの人駆動音からどこの配線がおかしいとか言い当てる技能持ってるからな?

 マネできるようなもんじゃねえよあれは。


「それも伝手の一つだ。そういう扱いになる。しかし特務隊だったか……後輩でいいのかな? こちらは2年前からだが」


 やっぱこの人達特務隊か。

 どうにも動きが軍人臭かったからな。

 だからまとめてかかって来てもらう、そんな罠に引っかかってくれたわけだが。

 それが無かったら本当に時間制限ギリギリまでGと戦いながら蒸し焼き覚悟で飛び回ってただろう。


「俺等は今年のコンペから。詳しくは言わない方が面白そうだけど、調べれば出てくるぞ」


 実の所軍のコンペ、この世界だと娯楽の一環なんだよ。

 それこそ車の展示会レベルで一般人も見に来られる。

 コンペ落ちしても一般企業がコンペ参加機体と銘打って売り出すからな。

 ただ基本的に席は軍の関係者や国のお偉いさんが埋め尽くすから一般人は立ち見、あるいはテレビやネットで見るのが普通だったりする。

 海外にも情報が流れるのは問題かもしれないが、日本は「真似できるならやってみせろよ」と中指立てて最先端機を見せびらかしているのだ。

 こうする事で海外のエースから注文が入る事も珍しくない。

 ちなみに好事家なんかはそういったギアを買い集めているらしい。

 なんかね、山をいくつも買って内部くりぬいて格納庫にしてコレクションしているらしい。

 金持ちの考える事はわからねえな。


「面白そうだな、後で調べてみよう。それで個人戦の話だったな」


「あぁ、そうだった。優勝したらなんかあるのか?」


「実の所……何と説明したらいいか迷うのが本音だ。端的に言うなら願いが叶うと言えばいいのか……?」


「なんだそりゃ、漫画的な願望機が云々か?」


「違う、国が答えられる範疇で個人の望みをかなえてくれるんだ。大抵の者は軍入隊後の待遇や金銭だが……どこまでと言うのがわからなくてな。金銭を所望した人物は一生を食うに困らないだけの額を得たらしいが3世代遊んで暮らすのは無理と言っていた……先輩なんだがな」


「おいおい……」


 しかし願いが叶うか……おやっさん立会いの下俺専用の最高傑作機でも作らせるとかもできるのかな。

 だとしたら嬉しいんだが……そのためにはクリスや良平ぶちのめさなきゃいけないんだよな。

 あとこの人達を普通の装備で相手取る事になりそうだ。

 少なくともエクステンデッドは長期戦になりそうな個人戦、試合内容はランダムなバトロワらしいが、そんな場面で使ったら全員かくれんぼ始めるわ。

 いや、見つけて潰すけど間に合わないだろうなと思うから。


 それにこの後の本戦とやら、そこもどこまでこいつを使えるかってのが問題なんだよな……こんな事ならオーバーヒートを気にしないで済む廉価版でも用意しておけばよかった。

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― 新着の感想 ―
無茶苦茶やったら良い先輩ゲットしたな
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