戦艦
久方ぶりの日常を味わった朝、その後車でもギアでもなく徒歩と電車での通学が意外と心地よかった。
というのも、数分前までの事。
「どうして……」
「どうしてもなにも、お前さんが考えた装備を十全に使えるようにしろって話が上からきてんだ。つべこべ言わずに手伝え」
「だって俺……真面目に学生やろうって決意して……家族にもそう報告して……」
「安心しろ。ギア関係の授業は免除、他の授業は直々に補習を受けられるそうだ」
「ちゃうやん……これはちゃうやん……」
「うるせぇ! いいから働け! お前ら特務隊の使う戦艦なんだぞ!」
そう、俺の考えた最強装備のせいでまともな学生をやらせてもらえなくなっている。
保健室登校ならぬ、整備室登校である。
登校したと思ったらメカニックの皆さんに確保されて、そのままここに担ぎ込まれて椅子に縛り付けられた。
ご丁寧にペンを手に結び付ける事も忘れていない。
「お前さんの考えた装備、ありゃ確かに戦場を一変させかねないが運用が難しい。まず既存の戦艦に乗らん。だからそれをどうにかするためにもキビキビと戦艦を設計しやがれ」
「……と言ってもなぁ、俺ギア専門で戦艦は完全に門外漢。何もわからねえよ?」
「大雑把な形でいい。あとは儂が清書する」
「んー……ちょっと無茶を言っても?」
「言うだけなら何事もタダだ。その代わりその発言には責任を取る必要がある」
「至言だねぇ……この新装備、ギアに積んでるリアクターを複数乗せる予定だったんだけど戦艦用のリアクターじゃだめかな」
「値段的にはそんなに変わらねえな。むしろ戦艦用の方が安く済むかもしれねえ」
リアクターはね、とにかく高いのよ。
機密情報の塊な上にブラックボックス化された箇所が多くて……どこで作られているのかすら秘匿されているから改造も無理。
と言うか下手にバラしたら即座に爆発しかねないような代物だ。
それを複数用意するなら無理にギア用の物を持ってくる必要はない。
そもそもの出力が高い戦艦用を一個ポンと乗せれば完成なんだ。
空いたスペースには武器を仕込んでもいいし、それこそ戦艦用のリアクター増やしてパワーイズジャスティスで突っ込んでいってもいい。
「じゃあこの装備は戦艦用リアクターを搭載する前提で、乗らないならそもそも戦艦の装備にしちゃえばいいんじゃね?」
「どういうことだ?」
デスゲーム前に見ていたアニメの一つを思い返す。
確か外付けで機体の装備に使えるし、戦艦にドッキングさせて砲台として使っていた事もあったはずだ。
今回は俺達4人分を用意すればいいみたいだから、アニメより拡張性は必要だけど……。
「こう、戦艦の四隅……だと艦橋からの映像に問題が出るな。斜めに四方に取り付けて、普段は戦艦の射撃武装やドローン射出ができるように使う。この時リアクターは連結してもいいかもしれねえな。理論上は複数のリアクターを積んだ戦艦になる」
「それをパージさせてギアとドッキング、局地的に見れば戦艦が分裂して頭数を増やすってか」
「そうそう。それに運用法を変えれば色々悪さできると思うんだ。例えば凜の機体にドッキングさせて、俺はツクヨミ改で自力で移動、性能上スピーダーなら追いつけるからそれで援護しながらドローンで怪しい所を調査しつつ必要なら撤退戦。その際に凜のスサノオだけ逃がしてツクヨミ改とドッキングし直して最前線で俺が大暴れしながら、後方から戦艦が艦砲射撃かましながら凜を回収するために突撃ってのもありだろ」
「逆にお前さんだけドッキングさせて突撃させつつ、戦艦周りを嬢ちゃんに見張らせることもできるか……悪くねえな」
「ただ問題があるとすれば全部の装備を使いこなせるのが俺と良平だけなんだろうなってことくらいか? どっちも器用貧乏に一点特化が付属している状態だから」
「高水準で平均化されてるって言えよ……」
良平はともかく俺はそんな大層なもんじゃないんだけどな……。
あいつ割となんでも卒なくこなすし。
俺は俺でデスゲームで磨いた喧嘩殺法の延長でしかないぞ。
インベーダー、殺せば死ぬので殴りましょう、マジでその感覚のまま戦ってる。
あとラフィンなんて言われてたPK集団も殺せば死ぬからコックピットぶっ刺そうぜくらいのノリだった。
「ちなみに上からの命令で交流祭には間に合わせろって話だ」
「交流祭?」
「各地のパイロット育成校が集まってトーナメント形式で戦うんだ。軍のバックアップしている地区は毎年強いと言われているが、お前らは今回柳ヶ瀬大将と真田准将が後見人になっている。面目を潰すななんてことは言わねえから度肝抜いてこいって言われてる」
それ……超プレッシャーなんですが?
「その第一弾がこの戦艦だ。とりあえずこの図面で行くが……何か要求はあるか」
「そうだなぁ……戦艦にもリアクター増やしてエネルギー供給量が下がらないように、あといざという時装備の方のエネルギー不足解消のために供給できるようにしておいてほしいかな」
「そうか。ならお前さんは後2人交流祭のメンバーを見つけておけ。毎年5人の代表者が必要だからな。学年別で」
「……凜はダメなんだよな」
「当たり前だろ! 高校の交流祭に中学生が出てたまるか! ……あの嬢ちゃんなら中等部の交流祭じゃずば抜けた能力見せつけそうだがな」
中等部の方もやるんだ。
なら凜の一人勝ちみたいなもんじゃねえの?
勝ち抜き戦ならあいつ一人で十分だろ……入れ替え戦ならわからんけどさ。




