家族団欒
「父さん、朝ごはんだってよ」
「あぁ、今行くよ」
ヘルメットを着用してミササギで作業をしていた父さん。
まだ杭を打ち込んだだけに見えるが……これがカタパルトになるのだろうか。
結構広い範囲だな。
「ここがカタパルト?」
「そうだ、よその家にぶつからないよう直上に向けて射出するようになっている。ギア形態でその場に制止するようなエレベーター機能も付けるつもりだ」
「父さん一人で作業するの?」
「まさか、これでもうちは建築業の中でも結構いい所なんだぞ。父さん一人でもできるが、腕利きの職人たちに社割でやってもらえることになってる。これは下準備だな」
「なるほど」
どういう伝手かはわかったが……社割か。
それは考えていなかった。
「ちなみにどのくらいの割引?」
「3割引きくらいじゃないかな。この辺は勤続年数と階級で変わるんだが、これでも本部長だからな……と言っても高校生じゃわからないか」
「うん、まるでわからん」
「軍で言うなら大佐か准将かな。大隊から師団を率いている立場だ」
おぅ、身内でも偉い人いた……。
デスゲーム前は凜も母さんもいなくて、父さんとも同じ家に住んでるだけの他人みたいな状態だったからな。
職業とかもしらなかったけど、ごく潰し一人養うくらいはできる財力と権力があったのか……。
知らんけどさ。
「まぁ軍で言うならというのも無理矢理な話だけどな。比べようが無い話だ。それより飯なんだろ」
「あぁ、今日は明太トーストだってよ。あとオニオンスープ」
「いいね、好物だ」
「父さん好き嫌いないじゃないか」
「好きと大好きの差がある」
「なる……ほど?」
わかるようなわからないような……。
俺が重量機より軽量機の方が好きってのと同じかな。
ギアに違いは無いし、最終的にリミッター全解除すれば性能にもそこまでの差はでないけど、リミッター有りの状態でもそれなりに動ける機体の方が好みなんだよな。
そういう意味ではツクヨミ改は中量機になるけど、バランスで考えればバックパック接続には一番いい機体だろう。
「それで幸助と凜はしばらくは普通の学生生活だよな」
「軍の方で書類が完了するまでね。完了しても任務が無けりゃ普通の学生だよ」
「特務隊を普通とは言わないが……一応覚えておくといい。特務隊の階級は命令系統を混乱させないために正規軍内では通用しないんだ。だから特務少佐のお前が大尉にため口で話すのは許されない」
「もともと大人相手にそんなことするつもりないけど」
「そのうち必要になる事だ。年上でも階級が下ならそう扱う必要がある」
「詳しいね」
「シェルターやカタパルトの発注を軍から貰っているからな。特務隊についても何度か話を聞いた。それを勘違いした学生が毎年トラブルを起こして、上官にぶん殴られているそうだ」
「あぁ、納得」
「当然だが命令権もない。卒業後軍に入隊したらその階級が適応されるという肩書なんだ。ついでに任務の達成などで特務隊のまま正規の階級を得る事もあれば、特務大尉が特務少佐になる事もある。ただその逆も然りで降格や、最悪軍法会議による処罰なんかも考えられる。ほぼ軍人として扱われるが……難しいな」
「インターン的な?」
「近いな。軍の規則に縛られるという意味ではその通りだ。ただ例外的な面もあるとだけ言っておく」
なら問題ない。
当面覚えなきゃいけないのは軍隊式の挨拶等々だな。
敬礼の角度とか、歩く時走る時の姿勢とか。
そういうの細かくチェックされる可能性があるならできるだけ合わせたい。
というか将来的な事を考えるなら今から練習しておくべきだ。
「凜は大丈夫か?」
「正直……胃痛がする……だって私オペレーティングパイロットとして認知されてるんでしょ? つまり現場判断で指揮を出したりすることもあるわけで……命令違反になったりしたらって考えると……」
「その辺どうなん、父さん」
「流石にそこまでは知らん。ただ特務隊だけに任務を任せることは無いと聞いたから、専門の指揮官がいるんじゃないかな。小隊規模とか、多ければ中隊規模で随伴するような」
「となると、凜が考えるべきは情報共有だ。指揮とかじゃなくてどこに敵がいるとか索敵範囲を共有するとかそのくらいやりながら射撃でもしてればいいさ」
「……実は、射撃すごく苦手なの。お兄ちゃん教えてくれる?」
「別に構わないが……指の皮すりむけても辞めないぞ?」
「上等! 絆創膏と包帯用意しておく!」
なんというか……我が妹ながらストイックだな。
俺に似なくてよかったよ。




