奇襲 1
流血表現があるのでご注意を
「ーーっ!! 」
エレノアとリリーは目の前に広がる光景に立ちすくんだ。
奇声の先には逃げ惑う人々、
恐怖のあまり腰を抜かし失禁するもの、
血塗れの死体が広がっている。
その中には胴と頭が離れているものや
散り散りになり赤い塊の肉や白い骨がむき出しになっているものまである。
そして、その点々と広がる死体の先には逃げ惑う獲物を捕らえ食い漁る魔獣が雄叫びをあげていた。
魔獣は人の1.5倍くらいのサイズで姿形は虎だが、
手足は人のような形を成し、
自由自在に動かし、逃げ惑う人々を的確に捉えている。
エレノアはしばらく魔物に取り憑かれたように目を見開き茫然とその光景を眺めていた。
オォォォォ
二度目の雄叫びに現実に引き戻された。
まず魔獣がこちらに気づいてないことを確認したあと
転がる死体や逃げ惑う人々の中に
イザベルがいないか見渡した。
転がる死体の中には先ほどまで
一緒に護衛をした者はいたが
イザベルの姿は見当たらなかった。
おそらく生き残った護衛たちと安全な場所へ避難したのだろう。
自分がお茶会の護衛を任されていたのに
その場を離れ多くの参加者、
護衛をしていたものを死なせてしまった自分の不甲斐なさを悔いたが、
今は自己嫌悪に陥っている場合ではない。
まずはリリーを避難させた後、魔獣を倒さなければ。
「リリー様。今なら気づかれていません。
私があいつを引きつけますからリリー様は避難を!」
「えっ……ええ。」
リリーに声をかけるとリリーはハッとしてか細い声で答える。
しかし、ひきつった表情のまま動こうとしなかった。
いや、動けなかった。
こんなにも悲惨な光景では無理もない。
しかし、それでもこの場所にリリーにいさせられない。
幸い離宮の出口は少し遠回りになるが
先ほどの庭園を経由してもたどり着くようになっている。
「リリー様。ゆっくりでいいです。できるだけゆっくりと振り返って足を一歩ずつ動かしてください。
足が動いたらそのまま振り返らずに逃げてください。」
「……無理よ。動かないの」
普段は気丈なリリーが年相応な少女に見えた。
乙女祭の時は襲われても気丈に振る舞っていたが、
この光景では無理もない。
「ええ。わかってます。ゆっくりでいいです。私がその間引きつけますから」
「でも、あなたは……?」
リリーの瞳が不安げに揺らぐ。
「私はこれでも【ガーベラ】の副隊長なので。
リリー様が無事逃げ、ルーク達のもとに着いたら彼らを呼んでくれませんか?」
エレノアが落ち着いた声で語りかけるとリリーは力強く頷いた。
「……分かったわ。必ずすぐに呼んで来ますわ」
リリーの言葉を合図にエレノアは魔物の元へ、リリーは庭園へと駆け出した。




