毒花 1
色とりどりの花々が彩る庭には等間隔にテーブルが並べられていた。
白いテーブルクロスの上には、ダリアが描かれたティーセット。
テーブルに腰をかける貴婦人の笑い声が響き渡っていた。
「どうです? 我が離宮は?」
50代にさしかかろうとしているのに色香を失わない妖艶な笑みを浮かべ尋ねてくるのはイザベル妃。
賢王と誉れ高い現国王ルイス王の第二王妃にしてアマリス王国二大勢力の一つマンスフィールド家の後ろ盾を持つアマリス王国の毒花だ。
今回、【ガーベラ】ではなく名指しでエレノアをイザベル妃が主催するこのお茶会の護衛をすることになった。
エレノアは対立関係にあった第一王妃レイチェルの生家であり元三大勢力のうちの一つ、ハーヴェイ家の元令嬢。
そして何よりイザベル妃は黒い噂がつきまとう野心家の王妃だ。
彼女がなぜ自分を指名したのか嫌な予感しかしなかった。
「大変素晴らしいと思います。」
エレノアは当たり障りのない褒め言葉を添えて社交用の愛想笑いを浮かべる。
「そうでしょう? 」
イザベル妃は扇をゆっくりと優雅に広げ、満足げに弧を描いた口元を扇で顔を隠した。
「国王の妃ともなればこの国一の離宮を持つのは当たり前のこと。
貴女もこの離宮に足を踏み入れることが許されたのを光栄に思いなさい」
高圧的に告げたイザベル妃は庭で談笑をする貴婦人を冷めた目で一瞥する。
この護衛の話が持ち上がった時、心配したカイルやシャラが来なくて正解だったのかもしれない。
第一王子ヘリオスの母である彼女はこの国の国母になる女だと傲慢な態度を取る上、
身分のないものは人間扱いをしない。
彼らが来ていたらきっとこんな高圧的な態度だけでは済まなかったであろう。
同じように最後までついていくと聞かなかったルークもただでは済まない。
むしろもっと酷い。
アマリスの乙女再来と言われるほどの魔力を持つ彼はヘリオスの王座を脅かす敵である。
まして、11年前の毒殺未遂は彼女が犯人ではないかという噂があるのだ。
内心辟易しているイザベル妃は突然ゆったりとした動作で歩き出した。
主催者が席を離れてもいいのか?
という疑問が掠めるが、今は護衛の身だ。
エレノアは黙って彼女について行くためお茶会の場から離れた。




