操られた騎士3
連続投稿です♪
軽いバトルシーンがあります
「おや、たいして驚いていない様ですね
気づいていたのですか?」
つまらなそうに自身の髭を撫でるレイモンド伯爵を
エレノアは問いには答えずに鋭い瞳で睨んだ。
「……カイルになにをしたの!?」
カイルの深緑の瞳は不安定に焦点が定まらない。
しかも彼から出される言葉はいつもの様な包容力がある様な声ではなく、
不安定な声で呪詛の様に赤い瞳しか繰り出されない
エレノアの言葉にセドブルは含み笑いを浮かべた。
「これといったことは何もしていませんよ。
ただ、従順になる様躾たにすぎない」
「ーーっな!」
エレノアの赤い瞳は炎の様に揺らめいた。
ここで冷静さを失ってはだめ。
伯爵から情報を聞き出さなくては……!
「躾たって、貴方の召使いたちみたいに?」
「気づいておいででしたか」
「えぇ、目が一緒だもの。でも分からないわ。
あんなにも多くの意識を支配するなんて魔力が底尽きるのではなくて?」
「ははは」
突然笑い出したレイモンド伯爵にエレノアは怪訝そうに眉間を寄せた。
「何を笑っているの?」
「いえ、失礼ながら騎士様。
私は人間とは非ざる力を手に入れた」
セドブルの瞳に一瞬赤い煌めきが走ったように見えた。
……人間とはちがう?
意味のわからない言葉にエレノアは眉間を一層寄せる。
「どういうことかしら? 私にもわかる言葉で言ってくださる?」
「いいでしょう。
ご説明いたしましょう。
私はあるお方のおかげで絶大なる力を手に入れた。
もうすぐだ。もうすぐで……生き返る!!」
狂気に満ちた物言いにエレノアは冷淡に言い放った。
「生き返らないわよ。
あなたの息子は。」
「なっ! 何をほざく小娘!!」
「だってこれらは魔物でしょう?
所詮偽物にすぎないわ。」
「ほざきおって!!
娘を黙らせろ!!」
狂気が混じった伯爵の叫びにカイルは応える様に矢を放った。
エレノアはひらりと矢をかわす。
「……赤い瞳。おれの家族を殺した」
次々と繰り出される正確な矢に
済んでのところで避けながら、
殺気を宿す瞳に戦慄を覚えた。
今のカイルは正気ではないわ。
恐らく、心に眠る赤い瞳にもつ憎しみを引き出して操っている。
今の状況を抜け切るには、
カイルを殺すもしくは、
操っている者を倒すしかない。
しかし、伯爵はカイルのそばにいる。
足を鎖で繋がれている今、
通常よりもスピードが劣るエレノアに
カイルの攻撃を避けかつカイルのそばにいる伯爵に術を解かせるのは極めて困難だ。
正気を失っている彼は伯爵の相手をするエレノアを確実に襲いかかるだろう。
先ほど壁を破壊した様に伯爵にめがけて投げてもその間に矢が襲う。
憎しみに揺れる焦点に定まらない瞳にチクリと胸が痛むものがあった。
私は魔族ではないと言ってくれた仲間がいる今、
赤い瞳が全ての元凶だとは思わない。
優しく頼り甲斐のある兄みたいなカイルがこんな奴のために使われていることにやるせなさを覚えたのだ。
心の中で燻る炎がカイルを解放するよう背中を押した。
カイルの地の魔法でドォォンと大きな音を立て、
地響きが起こされる。
決断したら後は速かった。
エレノアは振動に揺れに任せて後方に飛ぶ。
そしてカイルが次の矢を放つ間に鉛玉を伯爵に投げつけた。
しかし、鎖の長さが足りず伯爵の1メートル手前に鉛は落ちる。
「はっ! 残念だったな!」
冷や汗をたらりと流した伯爵は失笑する。
だが、その油断が伯爵にとって命取りだった。
鉛玉に気を取られている間にエレノアは一気に伯爵との距離を詰め蹴り上げた。
蹴り上げられた伯爵は白目をむいて気絶した。
その姿を見てエレノアは安堵のため息を漏らす。
「ーっぐ!」
刹那、エレノアの首に何かが巻きつき締め上げた。




