初老の目撃 1
私はルークのことをどう思っているのだろうか?
確かに自分自身もあまり好きではない容姿を褒められた時は嬉しかった。
彼が少しでも近くに感じると時折心臓が騒がしくなる時もある。
しかしそれが恋と呼べるのだろうか?
今一番近くにいる異性というだけではないのか
エレノアには分からなかった。
「……ノア……エレノア!」
「ーーっ!!」
はっとするとルークの心配そうな顔がエレノアの目の前にあった。
心臓がびくりとはね思わず後ずさる。
心臓がばくばくとうるさいほど鳴っていた。
「……なに?」
「被害者の家族達はどうだった」
今は4人目の被害者の家族の話を聞いたところだった。
エレノアはそれぞれの家族達の話を思い浮かべたが特に伯爵の話と変わらない。
誰も被害者がいなくなったところを見ていないのだ。
「……おかしいわね。
誰も気づかずに外を抜け出すなんて」
そう。
むしろおかしいのだ。
誰も夜中に出ている人を見ていないなんて……
なぜ?
エレノアが悶々と考えていると
ぽんぽんと何かに頭を軽く叩かれた。
驚いて上を見上げるとルークが目を細めて
優しい笑みを浮かべていた。
ドドドと心臓が胸で高鳴る。
「大丈夫だ。何があっても俺が守るから」
そのセリフ……
脳天から電撃が貫いたような衝撃が自分の中で走った。
何度も夢で聞き覚えのある懐かしさとともに甘い切なさが残るセリフ。
「ルーク」
ルークの漆黒の瞳は黒真珠のように内に秘めた輝きを持っていた。
吸い付けられるようにその瞳を見入った。
私はずっと前からこの瞳を知っている。
理性ではない。
本能がそう告げていた。
「……エレノア」
熱を持った声がエレノアの名を呼びエレノアの体がびくりと跳ねた。
ルークがふと目を細めてエレノアの頬をなぞった。
二人の間に今までにない甘い緊張感が走った。
「騎士様!」
突如呼ばれた声にエレノアは現実に引き戻された。
エレノアがさっと身を離すと
ちっとルークが軽く舌打ちした。
「騎士様。
どうか私の話を聞いていただけませんか?」
男は地面に頭がつきそうなほど深々と頭を下げていた。
「頭を上げてください。」
エレノアが勤めて優しい声でそう告げると男はゆっくりと顔を上げた。
男は60位の初老の男性だった。
薄汚れすり切ったジーンズと長袖という身なりから男の身分はさして高くないことがうかがえる。
「神隠しについてお話ししたいことがございます。」
男がそう告げると不機嫌だったルークの顔は【ガーベラ】を率いる隊長のものへと変わった。




