レイモンド領 3
「3ヶ月前の朝のことです。
この領地の子供の一人が突然姿を消したのです。
領民総出で探しましたが見つからず、家出ということで片付けられました。
しかし、その10日後、また一人の子供が行方不明になりました。
その時も捜索しましたが見つからず……
それから10日おきに青年や老人、女性が続いて消えていきました。
ここまで続くと家出では片付けられなくなり、
誘拐か神隠しかと噂が立ち始めました。
あとは報告の通りでございます」
伯爵は一息ついてコーヒーを一口飲み込んだ。
一通りの話が済んだと見込み、ルークは疑問点を口にする。
「では、レイモンド殿はこの件はどのように考えている?」
「私は偶然だと思っておりました。
しかし、王都から派遣された騎士様たちが姿を消していきました。
これは魔物の仕業ではないかと思うようになりました」
「その騎士たちが消えた時の詳細を聞いても?」
ルークがそう言うと伯爵は困ったように眉尻を下げた。
「私もその時のことはあまり詳しく話せないのです。
王都から派遣された次の日、
メイドが騎士様をお食事に呼びにいったところ
姿はなく、どれだけ探しても見つからなかったのです」
「そうか。後で町に行ってもいいか?」
「王子殿下直々に足を運んでもらうなどとんでもございません。
行方不明になったものの親族をこちらから呼びます。」
とんでもないと声を上げる伯爵にルークはに傲慢ではないが威圧感のある声で諌めた。
「……レイモンド殿。
私は今は王子としてではなく【ガーベラ】の隊長として来ているんだ。
こちらの調査に協力してもらう民に面倒をかけるわけにはいかない」
「……ですが」
「では、被害者をリストアップしてもらえないか。
いつ消えたのかも詳細をつけてもらえると助かる」
「……承知いたしました。
ですが、森には近づかないでください」
「森?」
レイモンド領にある森といえば南東にあるセレネ王国と国境になっているブロム山の麓にある森のことだ。
国境に面する森と言っても、ブロム山は険しい山で兵がその山を乗り越えて侵入してくることはまず不可能だ。
まあ、セレネ王国は争いを好まないから攻め込んでくることはまずないが……
「【迷いの森】と言われる森で一度入ったら二度と出ることが出来ません。」
ルークが燻陰な表情を浮かべているのに気づき伯爵が補足した。
ルークはそんなものだろうと深く踏み込むことはせず、分かったと頷いた。




