シャラの想い
紫と黒が入り混じったものがエレノアにまとわりつくように覆っている。
白銀の光はすでに申し訳程度にしか輝いていなかった
エレノアはぎゅっと自身を支えるように抱きしめた。
このまま自分の魔力が抑えられなかったら……
そう思うと恐ろしくってたまらなかった、
『お前の魔力はこの国を救うか滅ぼすかのどちらかだ』
5年前に団長に言われた言葉が強く胸に突き刺さった。
シャラの言葉が魔力の暴走の原因かと言われればそうだろう。
しかし、それは予想外の言葉だったからではない。
本当はシャラの瞳に騎士学校時代から気づいていた。
それでも良かった。
もう愛されるはずのない自分に偽りでも与えてくれたのだから。
そう割り切っていたはずだったが、心のどこかでは期待していたのだ。
シャラがエレノアを裏切るはずないと。
だが、その期待は外れた。
割り切っていたはずなのに動揺しシャラが嘘を言っているのだと思ってしまう自分がやるせない。
そういった交錯する気持ちに混乱したせいなのだ。
全ては己の弱さなのだ。
あの後感情の整理がつかないまま洞窟にいくと、今まで抑えられていたはずのエレノアの中の闇が蠢いた。
少しでも刺激を与えれば暴走してしまうのが分かる。
その前にルーク達を一刻も早く自分から引き離したかったのだが、結局暴走した。
その上、聞かれてしまったのだ。
自分のせいで歴史ある公爵家が滅びたこと
そして、何よりも自分の赤い瞳が魔族であるということを。
もう何もかも終わった。
シャラは完全に敵だと認定しただろうし、
カイルだって自分を嫌うだろう。
そして、赤い瞳を綺麗だと言ったルークも……
いっそこのまま闇に堕ちてしまおう
そう思った矢先のことだった。
「エレノア! 闇に堕ちてはダメよ!! 」
「……シャラ。でも、見たでしょう?
私には瞳だけではなく魔族の力まであるの
つまり、私は…」
「貴女は魔族じゃない」
「……本心はどうなの?」
エレノアの言葉にシャラは目を伏せた。
「……。」
暫く押し黙った後、シャラは決意したように顔を上げ口を開いた。
「……分かった。本当のことを言うわ。
確かにあなたが憎かった。私の大切な人達を殺した赤い瞳だったから。醜いとすら思ったわ
でもね、本当に醜いのは本心を隠していつか裏切ろうとしていた私。
エレノアの心はいつだってまっすぐだった。
そのことに私は救われつつあったわ。
あんなことを言ったのはそれを認めたくなかったから
醜い自分を認めたくなかったの」
「私だって醜いのよ。偽りでも愛してくれる存在が欲しかったから利用したの」
「いいえ。貴女はどんな目にあっても人を傷つけることを望まなかった。
私は人を徹底的に傷つけ自己満足に浸りたかっただけなの。」
「でもーー」
「エレノア。復讐心にかられていた私を思いとどまらせ醜い私に気づかせてくれた。
私は貴女が何者でもいい。
お願い! 戻ってきて……」
「シャラ!! 」
シャラが足から崩れるようにして倒れた
エレノアは駆け寄って抱き上げた。
しかし、シャラはピクリともしなかった。
「嘘でしょ…ねぇ、シャラ!シャラ!!」
必死で叫び声を上げるがシャラは微動だにしなかった。
むしろ体が徐々に冷たくなっていく。
そんな……
エレノアの瞳から一筋の涙が溢れた。
涙の雫はシャラの頬に落ちた。
ー刹那、パァァァとその雫から膨大な光りが解き放たれ、エレノア達は光に包まれた。
三章は次の話で終わる予定です。




