償い
「…そ…んな
私エレノアに酷いことを……」
シャラの瞳から涙が溢れる。
「後悔しているなら協力しろ!
あいつを見張っといてくれ!
おれはエレノアを止めるから」
そんなシャラの様子にルークはイライラが募った
酷いことなんてレベルじゃないだろーが!
エレノアはあれで壊れかけているんだ。
「どうやって? 弾きかえすのよ?
それに消えるかもしれないわ? 」
「あれはエレノアの心だ」
シャラははっとした。
エレノアはシャラを拒絶しているのだ。
「それなら私がやるわ!
エレノアを傷つけたのは私だもの……」
「お前は命を懸けられるのか? 」
「えっ? 」
「この暴走を止めるのはエレノアよりも強い力で押さえ込まなきゃいけない。
つまり、この膨大な魔力を上回るには魔力と生命力の全てをかけなきゃいけないんだ。」
「それならみんなでやったら? 」
ルークは舌打ち交じりに辛辣に言い放った。
「ただでさえ不安定なのに色々な魔力が混じってみろ。
エレノアは壊れてしまう。
ただでさえ精神的にも不安定なのにな。」
「ーーっ」
シャラは言葉を飲んだ。
「わかったらこいつを抑えろ」
「……私がやる」
「へー、麗しい友情ですわね
ですが、これを知っても言えるのかしら」
メリッサの嘲るような声が響く。
「言うな」
ルークの睨みを利かした制止に耳を貸すこともなく、
メリッサは口角をニヤリとあげた。
「エレノアの赤い瞳は魔族の象徴。
そして、彼女は魔族の力を持つ……その意味が分からないほどバカではありませんわよね? 」
とうとう知られてしまった。
ルークは二人に目をやる。
シャラにだけでなくカイルまで拒否されたらエレノアは完全に壊れてしまう。
しかし、二人は予想に反して落ち着いていた。
シャラは目を伏せたままだし、
カイルもやっぱりそうかとつぶやいていた。
「おかしいとは思っていたわ。
赤い瞳の時点で魔族と縁があることくらい」
「つまんないですね
復讐を果たせばよかったじゃない」
メリッサが舌打ちする。
「……思っていたわ。
何度も何度も。
でも、出来なかったの。
何回宿敵だと思っても!
あの子を裏切って嫌われることを恐れてたの。
だから騎士学校をでて、
そのままあの子と別れたのよ」
「あら、情が湧いたってやつですか
くだらないわね。
こっちとしてもエレノアが闇に落ちてくれれば都合がよかったのに」
「ふざけんな!
なんで【ガーベラ】に入ったんだ。
エレノアがいるって教えられなかったのか? 」
メリッサの毒のある物言いにルークは声をあげた後、
シャラに追求した。
「エレノアが副隊長だって知ってたわ
でも、断れなかったの
ローレン様には恩があるから……
それで、どうせまた会うなら
あの頃は近すぎて出来なかった復讐を
果たしてしまおうとおもったの。
でも、やっぱり出来なくって。
カイルに言った言葉は自分に言い聞かせてたのよ。
思い出せとね」
自嘲気味に言うシャラにルークは鼻で笑った。
「御門違いだろ。
確かに魔族の特徴を持つ
だが、同時にアマリスの乙女の象徴と力を持つ
理由はわからないがそんなのは問題じゃない
エレノアがやったわけではないし、
エレノアは人間だ」
「分かってるわ。
私は赤い瞳……魔族の全てを憎んでたの。
でもね、エレノアの顔を見て本当に後悔した。
自分は何でこんなことをやってしまったのか
エレノアはもう私に笑いかけてはくれない。」
「当たり前だろうが。
分かったなら手伝え」
「お願い。私にやらせて。
こうなったのは私のせい。
償わせて」
「調子が良すぎだろ?! 本当にそう思っているのか?
エレノアは本来自分の闇の魔力を抑えられるだけの力はあった。
なのにあいつがエレノアを裏切って弱らせて闇に染まりやすくして、
さらにはお前が手酷く傷つけた。」
「ーーっ!」
「……隊長」
嫌悪を込めた目でシャラを見て言い捨てると
今まで黙っていたカイルが咎めるような声をあげた。
隊長と呼んだのはわざとだろう
「咎めるなよ
信用させて裏切るなんて最低な方法だ」
「……だからこそこの身をもって償いたいの」
シャラは顔をあげ、まっすぐルークを見つめた。
その瞳は本気だった。
だが、ルークはどうしても認めたくないし、
許せなかった。
「ーーっふざけ」
「隊長」
ふざけんなっ!と怒鳴ろうと声を上げると
今度ははっきりとカイルは制止した。
「……何だ」
「シャラの言葉は真実だ。
分かっているだろ?
チャンスを与えてくれないか」
説得するかのような物言いに反発心を覚える。
しかし、カイルがルークの意見にはっきりと意を唱えることは珍しいことだった。
「俺だって大切な人を魔族に殺された。
シャラの気持ちもわかる。
確かにシャラの方法は最低だし
許されないことだ。
でも人間誰しも間違える。
償わせてやってくれ。」
「……。」
しばらく重い沈黙が流れた。
ルークはカイル、シャラを見た。
どちらも真剣な瞳でルークを見つめていた。
「わかった。
メリッサは俺とカイルで抑えるから
お前に任せる。」
「ーーっありがとうございます!! 」
シャラは目を潤わせ地面につくのではと思うほど頭を下げた。
「エレノアを頼んだ。
方法はわかるな? 」
「エレノアに魔力を注げばいいのでしょ? 」
「絶対に傷つけるなよ」
シャラは無言で頷いた後、
ほぼ闇に包まれたエレノアに魔力を注ぎ始めた。




