後悔
はぁ
ルークは何回目になるか
わからないため息をついた。
今は暗い洞窟の中をそれぞれが松明を持って歩いていた。
エレノアはどこか自分たちとは距離を置き、
後ろの方をついてくる。
恐らく自分の背中を預けられなくなったのだろう。
いつもはルークの隣をエレノアが歩いているのに、
今日はカイルだった。
シャラはエレノアを避けるように一番前を歩いている
あの時のエレノアの瞳は5年前見た時と同じだった。
全てを失い、信じることすら恐れるようになった瞳。
エレノアの心は完全に閉ざされてしまったのだ。
何故あのタイミングで声をかけてしまったのか悔やんでも悔やみきれない。
だが、ルークは何よりシャラが許せなかった。
5年間ずっと騙していたって?
ふざけるな。
確かにシャラの一座は魔族に襲われ皆殺しにされた。
そこは同情はする。
でもだからと言って、その矛先をエレノアに向けるべきではない。
そもそもエレノアのことを何の苦労もないお嬢さんだと思っているのか?
エレノアがどんな思いで毎日を生きているかも知らないくせに
「どうにかできないか? 」
横からカイルが小声で声をかけてきた。
後から二人に事情を聞いて分かったことだが、
事の発端がカイルの言葉だっただけに
責任を感じているのだろう。
「無理だな」
ルークはきっぱりと答えた。
「どうして?」
「エレノアはシャラを信頼していたんだ。
それが裏切られたとなれば傷は深い。
それにエレノアは5年前のこともあるしな……」
「5年前?」
カイルが聞き返した。
喋りすぎた……
これは俺が喋っていいことじゃないのに。
「……お前はエレノアのことをどう思っていたんだ?」
ルークは5年前のことは答えずに聞き返した。
カイルは察したのかそれ以上は追求してこなかった。
「俺の村は魔族に襲われてなくなったんだ。
当然何も思わなかったわけじゃない。
【汚すもの】といわれてたしな。」
でもなと変わらない淡々とした口調で続けた。
「隊長がベタ惚れだからな。
俺が信頼する隊長がそこまで入れ込む女なんて絶対にいい女だと思うからな。
様子を見てたんだ」
「ーーっ! 」
真っ赤になったのが自分でも分かった。
信頼するって言われた嬉しい照れと自分の気持ちがばれてた恥ずかしさがごちゃ混ぜになって頭に熱がのぼる。
カイルは半眼になった。
「気づかない方がおかしいだろ
隊長の目全然違うし
エレノアを見る時だけ甘くて見てるこっちが恥ずかしくなる」
「……いつから?」
「最初から。詳しく言うとエレノアが入隊する前日」
「見てたのかっ! 」
「俺だって好き好んで見てない。
隊長を呼びに行ったらいただけだ。 」
マジかよ……
ルークはうなだれた。
「んま、そんなわけで様子を見てたんだけど、
隊長が惚れた女だけあって信頼に値する女だとわかった。」
惚れた惚れたと繰り返されてますますルークはいたたまれなくなる。
確かにそうだが、面と向かって指摘されると恥ずかしい。
「そうしたら、余計シャラの態度が気になったんだ。
エレノアとずっと一緒にいたなら分かるはずなのに。
本意が気になったんだ。
それで聞いたんだが、
エレノアに聞かれてしまったのは誤算だった……」
淡々とした調子だったカイルが最後の声は消え入りそうだった。




