崩壊
「今度の任務は
洞窟の中の人喰い狐だ。」
「洞窟……」
団長の言葉にエレノアの瞳は揺らいだ。
「どうした? 」
ルークはエレノアの動揺にいち早く気付いた。
ルークの言葉にエレノアはなんでもないとつぶやく。
「では、団長、お話はこれで終わりですか? 」
「あぁ、まあな。
やめてもいいんだぞ? 」
「いえ、大丈夫です。
お気遣いありがとうございます。」
エレノアは硬く握りこぶしを強く握る。
大丈夫。
強く念じて動揺を抑える。
「そうか。
じゃあ、下がっていいぞ」
エレノアは無言で頷いて、部屋を後にする。
ルークもエレノアの後に続いて部屋を出ようとすると
団長に呼び止められた。
「ルーク。あの約束を違えるなよ。」
団長の言葉に力強くうなづいた。
**
「シャラ。おまえはどう思っているんだ?
エレノアのこと」
えっ?
その言葉にエレノアは扉を開ける手を止めた。
「どういう意味? 」
惚けるシャラにカイルが追い詰める
「ふとした時のエレノアを見るおまえの瞳は親友のそれじゃない。
宿敵の瞳だ。」
「……。」
しばらく重い沈黙が降りた。
エレノアはゴクリと息を飲んだ。
お願い違うと言って…
そんなエレノアの願いもあっけなく裏切られた。
クスクスとした笑い声が響く。
「…ばれてた?」
「どうするつもりだ?」
「復讐よ。」
「復讐? 」
「私が騎士学校に入学する前にいた一座は魔人によって皆殺しにされたの。」
「エレノアは魔人じゃない」
「でも、赤い瞳よ。
私は一座が滅ぼされた時、赤い瞳に復讐を誓ったの。」
「エレノアは違うだろ?」
「…。
私はこのために生きてきたのよ」
シャラの声は震えていた。
これほど深く憎んでいたの…?
シャラは笑顔の裏でずっと疎んでいたの?
目頭が熱くなった。
「入らないのか? 」
「きゃっ!! 」
後から遅れてきたルークが最悪のタイミングで声をかけた。
エレノアの短い悲鳴とともに手をかけていたドアノブを回し
ギィと音を立てながら扉が開いてしまった。
扉の先ではカイルとシャラが目を見開いて
エレノアを見つめていた。
シャラの瞳は動揺で揺らいでいる。
「気付かなくてごめんなさいね。」
自分でも恐ろしく冷たい声が出た。
「エレノア…これは…その…」
気まずげに目を泳がせるシャラを見た瞬間、
エレノアの心はシャラに対する信用が完全に消えた。
本心はさっきのでしょう?
馬鹿馬鹿しい。
さっきはあんなにはっきり言ってたのに
同時にエレノアは自身にも失笑した。
おかしいとは思っていた。
何となくは気づいていた
でも仲間として扱ってくれることが居心地が良くて目をそらしていたのは自分だ
赤い瞳が疎まれないわけないじゃない
ほんとバカね
夢は終わったのだ。
エレノアの顔からは表情は消えた。
「団長から任務が下ったわ。
【人喰い狐の討伐】
すぐに行くわよ」
エレノアはそれだけ告げると踵を返した。
ルークがまてっと叫んでいたが
もう誰とも関わりたくはなかった。




