攫われた乙女
ルークは握った手を引っ込めた。
「どうなさいましたの? ルーク殿下?? 」
「何もない」
猫なで声を出す女に笑みを返すと
女の頬は赤く染まった。
普通なら可愛い仕草なのだが、
ルークの心はときめくことはなかった。
それどころかルークはイライラしていた。
エレノアがあの悪名高いアーロン伯爵に言い寄られた時、
ルークは助け出そうとその場を離れようとした
しかし……ルークを囲む女たちによっていく手を阻まれた。
こっちは気が気じゃないのに!!
ヒヤヒヤしてエレノアを見た。
するとエレノアの腕をアーロン伯爵がいやらしく掴むじゃないか!!
ルークは怒りに震え、手に握りこぶしを作る。
すぐに殴りかかろうと思った。
しかし、彼女は黒髪の男に助け出された。
ルークは安堵するとともに
自分ではなく他の男が助けたことへの嫉妬に駆られたのだった。
自分にはそんな資格はないのは理解しているのにも関わらず
「きゃーーー!!! 」
叫び声が響き渡った。
誰もが一斉に叫び声の方をみた。
するとそこではてんとう虫のような魔物が
徐々に巨大化していた。
「ーーっな! 」
ルークは即座に祭壇の方へ目をやった。
するとそこには短髪の男が銀色のドレスに身を包んだ少女を抱きかかえていた。
ルークは急いで人をかき分けて
祭壇へ向かう
祭壇にはエレノアとシャラとカイルが男と対峙していた。
シャラは自身の魔力がこもったワイヤーを投げつけたが、
男はひらりとかわすと、
誰もが魔物に声を上げる騒ぎの中
颯爽と窓から出て行ってしまった。
「待てっ!! 」
ルークは男を追って自身も窓から外に出た。
ルークは雷の魔法を足に注いで空の中を駆け抜ける。
男はリリーを抱えたまま走り続ける。
これは追いつけないな。
ルークは男の背中に向かって雷の玉を投げつけた。
男がよろめきリリーから手を離した。
まっすぐに森へ落ちるリリーを
ルークは落下点まで駆け下でリリーを抱きとめた。
「貴様がアマリスの血を引くものか」
空から降り立った男は赤い目を妖しく光らせた。
「それがなんだ? 」
ルークが言うと男はじぃとルークを見た後嘲笑した。
「魔力だけか。
あの会場やパレードにはこの女の近くで乙女の気配がした。
だが、この女は特殊な力はあるがアマリスの力はない。誰だ? アマリスの力を持つものは? 」
「……知っていたとしても教えると思うか? 」
ルークがニヤリと冷淡な笑みを浮かべると
男は舌打ちをした。
「生意気な。
まあいい、今回はただの余興だとクロ様はおっしゃった。しかも、この女はなんの役にも立たない。
返してやる。」
男はそう言い捨てると闇夜に消えた。
「戻るか。」
ルークはリリーをお姫様抱っこして、
再び足元に雷を宿し空の上を歩き出した。
「ルーク……様?」
リリーが薄っすらと目を開ける
「起きたか。」
「私はどうしてここに? 」
「魔人に連れ去られたんだ」
「そうですか。では今ごろエレノアが舞っているのですね。」
「あぁ。後はついたらエレノアと入れ替わってくれ。
」
「はい……」
リリーが返事をすると二人は黙り込んだ。
静かな空気が二人の間を流れる。
その空気を破ったのはリリーだった。




