第1章-8
カイの身体と、
ほとんど変わらない大きさの――
火球が、投げつけられる。
ジン
「カイ!!」
――ドゴォォォン!!
爆音。
視界を覆う、煙。
ジン
「……カイ……?」
「おい……カイ!!」
一瞬の沈黙。
ボルジック
「……!?」
煙が、晴れる。
ボルジックの目の前にいたのは――
鋭い目で、睨みつけるアスナ。
その背後で、
地にうずくまるカイ。
ボルジック
(……この小娘……)
(おれの火球を……)
(……弾いたのか……?)
ボルジック
(こいつも……火属性ってわけか……)
アスナ
「……カイ……」
「……聞こえる……?」
背中越しに、声をかける。
カイ
「……う……」
「……アスナ……」
腹への一撃で、
ようやく――
カイの頭が、冷えた。
アスナ
「……立てる?」
カイ
「……う……うん……」
アスナ
「……早く……逃げて!!」
カイ
「……!?」
アスナ
「……もたもたしないで!!」
――その言葉が。
カイの中で、
重なる。
ーーー
〈フラッシュバック〉
シキ
「カイ! アスナ!」
「……もたもたするな!!」
ーーー
カイの目から、
涙が溢れる。
カイ
「……アスナ……!!」
その時。
横から、
山賊が、にじり寄る。
山賊
「ひゅー!」
「いい女だなぁ!」
「高値がつくぞ!」
山賊
「売り渡す前に――」
「俺たちで、遊んで――」
――バチィン!!
音すら、遅れる。
目にも留まらぬ蹴りが、
山賊を――
吹き飛ばした。
別の山賊
「なっ……!」
「こいつ……!」
「今、見えなかったぞ……!?」
ボルジック
「……いいじゃねえか」
「……あの金髪のガキみてえな、スピードだ」
アスナの目が、
一瞬――
見開かれる。
―冷静さが、途切れた。
力んだ踏み込み。
わずかに、
スピードが落ちる。
ボルジックは、その一瞬を――
逃さなかった。
アスナの蹴りを、
掴む。
アスナ
「……!?」
次の瞬間。
――ドォン!!
アスナの身体が、
壁へ――
叩きつけられる。
アスナ
「……ぐっ……!」
「……ガハッ……!」
カイ
「……アスナ!!」
ボルジック
「ちょうどいい……」
ボルジック
「帝国から調達した――」
「この“聖剣グリオギヌス”の、試し斬りだ!」
立ち上がろうとする
アスナの――
首を、掴む。
アスナ
「……ぐっ……!」
カイ
「……アスナ!!」
「……アスナ!!」
ーーー
剣を振りかぶるボルジックに、
手下が声をかける。
手下
「お頭!」
「いいんですかい?」
「こんな、いい女……」
「そうそう、いるもんじゃねえ」
「斬っちまったら、売れなくなっちまいますぜ」
ボルジック
「ああ?」
――その一瞬。
ボルジックの意識が、
アスナから――
わずかに外れた、その刹那。
【火術・閃光炎!!】
―バチチチチッ!!
鋭い音と、
閃光が――
ボルジックの眼前を、走る。
ボルジック
「うおっ!?」
思わず、
アスナの首から、手を離す。
アスナは、
カイとの訓練で今朝披露した――
**“炎のめくらまし”**を放っていた。
カイ
「……!?」
「……アスナ……」
次の瞬間。
アスナは、
カイを――
抱き上げて、走った。
振り返りもせず、
叫ぶ。
アスナ
「みんな!!」
「早く、逃げて!!」
「撤退して!!」
止まっていた時間が、
一気に――
動き出す。
ジン
「……あっ」
「おい!!」
「全員、撤退だ!!」
ボルジック
「この野郎!!」
斬りかかる、
ボルジック。
カイ
「アスナ!!」
アスナは、
後ろを向いたまま――
炎の塊を、投げつける。
――ゴォッ!!
ボルジック
「うおっ!!」
「……クソ!!」
山賊
「お、お頭ぁ!!」
間髪入れず、
追撃。
【火術・炎烈壁!!】
アスナは、
炎の壁を―ボルジックと山賊たちに、叩きつける。
山賊
「うわああああ!!」
「熱っ!! あちぃ!!」
カイ
「……アスナ!!」
アスナ
「……カイ……」
「……ハァ……ハァ……」
肩で、
荒く息をする。
そしてわずかに、体が震えているのがカイには分かった。
アスナ
「……逃げるわよ……」
「……じっと、してて……」
炎の壁が、
払われる頃。
そこにあったのは――
自警団が、必死に駆けていく後ろ姿だけだった。
ボルジック
「……くそ……!」
「なめやがって!!」
ガシャン!!
足元の、自警団が落としていった盾を力任せに蹴飛ばす。
ボルジック
「くそが!!」
「絶対、殺す!!!」
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