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第1章-3

目の前に広がっていたのは、

大きな――

火の塊だった。


家々は崩れ、

炎が、村だった場所を覆い尽くしている。


アスナは、

本能的に――

あの日を思い出した。


喉が、ひりつく。

背中に、冷たい汗が滲む。


……それでも。


鋭い目で前を見据えるカイは、

その変化に、気づかない。


自警団が、到着する。


先頭を走ってきた団長ジン。

その後ろに、アスナ。

そして、その背にしがみつくカイ。


さらに後方に、

他の団員たち。


その順で、

村だった場所の入口に立った。


ジン

「……こりゃ、ひでえな……」

辺りを見渡すジン。


ジン

「おい!」

「生存者を探せ!」


団員

「ざっと見た感じ……」

「村人は、ほとんど……」


別の団員

「……おそらく、逆らった者は全員殺されてます」

「女や子供は……」

「死体が、ありません」


ジン

「……殺して、金品を奪って……」

「その上、人攫いか……」

グッと目の前の光景を睨んだ。


ジン

「……くそったれ」

「……外道め……!」


カイは、

燃え続ける村を、じっと見つめていた。


胸の奥で、

激しい怒りが渦を巻く。


それは、

黒い煙のように――

心を、じわじわと侵食していく。


アスナ

「……カイ……」


カイを見る。


アスナ

「……気持ちは、分かるけど……」

「……落ち着いて……」

「……ヤケになっちゃ、ダメ……」

何とか、ゆっくり話そうとするアスナ。


アスナ

「……生存者を……探しましょう……」


自分の中にも、

カイと同じ怒りが湧き上がっているのを、

はっきりと感じながら。


それでも、

アスナは――

冷静でいようとした。


自警団は、

村の中心へと進む。


その時。


先の闇から、

しゃがれた――

笑い声が聞こえてきた。


視線の先。


ドレッドヘアーの大男が、

それより小柄な男の――

首を、片手で掴んでいる。


ボルジック

「ゲハハハハハ!!」


ボルジック

「意外とよぉ……」

「けっこう、溜め込んでたじゃねえか!」

「この村の連中はよぉ!!」


村人

「か……金は……」

「わ……渡した……」

「た……助け……て……」


――グシャアアアアッ。


首の骨を、

握り潰す。


やけに耳に残る、

嫌な音が、辺りに響いた。


その瞬間。


カイの中で――

黒い炎が、

一気に燃え上がった。


ーーー

アスナは、

そのドレッドヘアーを見た瞬間――

全身から、汗が噴き出した。


脳裏に、

炎の中の光景が、鮮明に蘇る。


―燃え上がる孤児院。

―立ち向かう、シキ。

―そして。


その死角から、

斧を振り下ろした男。


一瞬、揺れた――

あのドレッド。


アスナ

「……ギリッ……」


歯を、強く噛みしめる。

はっきりと、音が鳴った。


(……こいつ……!!)


――その瞬間。


アスナの横から、

影が、飛び出した。


アスナ

「!?」

「……えっ……」


すぐに、察する。


アスナ

「……カイ!?」


ジン

「おい! カイ!!」

「やめろ!!」

「下がれ!! 下がれ!!」


だが――

間に合わない。


村人の首を潰し、

右手から血を滴らせたまま。


ボルジックの前に、

カイが躍り出る。


カイは、

抱えていた剣を――

抜いた。


振り下ろす。


――ズザァッ!!


確かに、

何かを斬った。


だが。


その斬撃は、

ボルジックには届かない。


脇から割って入った

山賊の手下が、

胴を斬り裂かれ――

吹き飛ぶ。


ボルジック

「あぁ!?」

「……なんだ、このガキ」


カイ

「うああああああああ!!」


カイは、

自分を、制御できていなかった。


斬りかかる。

だが――


直線的。

単調。


怒りに任せた動きでは、

意外なほど機敏な

ボルジックの動きを、

捉えきれない。


ボルジック

「悪くねえが――」


――ドフッ。


鈍く、

嫌な音が響く。


ボルジックの拳が、

カイの腹に、

深く――

めり込んだ。


カイ

「……グハッ……」


息が、詰まる。

そして、腹に走った衝撃よりも、

剣を握る手の感覚が、

急に、遠くなった。


ボルジック

「魔法もなしに、ただ斬りかかってくるとはよぉ」

「……なめられたもんだな」


ボルジックは、

腕の中に、

火球を作り出す。


――ボウッ。


音を立て、

火球は、みるみる膨れ上がる。


ボルジック

「男のガキは、もう十分確保した」


ボルジック

「てめえは――」


ボルジック

「……死ね」

【火術・業火弾!!】


火球が、

カイに向かって、放たれた。

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