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第1章-6

団員

「!?」

「おい、何言ってんだカイ!」

「確かに剣の腕は立つけどよ――」

「魔法は使えねえし、チビだし……」


カイ

「……ギリッ」


歯を食いしばる。


カイ

「……うるせえよ!!」


声が響き、

場が、静まる。


ジン

「カイ、落ち着け」


ジン

「お前の気持ちは分かる」

「……だがな」

「お前は、残ってろ」

ジンはしっかりとカイを見据えて言った。


ジン

「戦いになったら、守りきれるか分かんねえ」

「だから――」


その言葉を、遮った。


アスナ

「……団長」


澄んだ、

けれど強い目で、アスナが前に出る。


アスナ

「私も、行く」


ジン

「……アスナ……」


アスナ

「この自警団で、一番戦えるのは私です」

「私がいれば、万が一戦闘になっても大丈夫」

「……カイにも、無茶はさせません」


カイ

「アスナ……」

「いい、お前は――」


ジン

「あー……分かったよ」


ジン

「アスナが、ちゃんとカイを見てろ」

「それで、いいな?」


アスナ

「うん」

「ありがとう、団長」


アスナ

「……ほら、カイも」


カイ

「……う、うん」

「……さんきゅな、団長」


ジン

「……」

ジンは静かに息を飲み込んだ。


ジン

「よし!」

「お前ら!」

「さっさと準備しろ!!」


ーーー

カイは、急いで出発の準備をする。


――といっても、

普段から軽装で、特別に用意するものはほとんどない。


実際には、アスナが持っている救急用具があれば、

なんとかなると思っているだけなのだが。


それでも。


あの夜、

孤児院から――

唯一、持ち出したもの。


「――あの剣」だけは、

忘れずに腰に括り付けた。


自警団の任務でも、

アスナとの訓練でも、

この剣を使うことはない。


だが、

毎日この剣を振るって鍛錬することだけは、

欠かさなかった。


カイにとって、これは――

ただの「思い入れのある剣」じゃない。


お守りであり。

そして――

あの夜を生き延びた、

アスナ以外の、唯一の戦友だった。


カイ

「……ボルジック山賊団……」

自然に、小さく声が出た。


カイ

「……!!」


剣を、強く握りしめる。


これは、

怒りなのか。

それとも、気合いなのか。


自分でも、よく分からない。


アスナ

「カイ! 準備はできた?」


カイ

「ああ!」


二人は、自警団の馬にまたがり、

山間の村へと、急いだ。


その村では――


ボルジック

「ゲハハハハハ!!」

「村の金品は全部奪え!」

「女と子供は、全員生け捕りにしろ!」

燃え盛る村の建物を見ながら、嬉々として話した。


ボルジック

「今日をもって――」

「ボルジック山賊団の、完全復活だ!!!」


ボルジックは、

明らかに不釣り合いな――

美しく、輝く剣を振るい。


さらに、

その手から炎を放つ。


……まるで。


あの夜を、

もう一度なぞるかのように。


ーーー

夜の山道を、馬が駆ける。


カイは、

アスナの背中に、しがみついていた。


伝わってくる、体温。

それは、確かに――暖かい。


……それなのに。


胸の奥が、

ざわざわと、落ち着かない。


アスナも、

背後のカイの昂りを、感じ取っていた。


だが、

何も言わなかった。


他の自警団のメンバーと共に、

ただ――急ぐ。


やがて、

闇の先に。


赤く光る一点が、

ゆっくりと、浮かび上がる。


――山間の村・ノルン。


炎。

泣き叫ぶ声。

そして――

太い男の、下劣な笑い声。


それらが混ざり合い、

夜に、こだましている。


村の中心で、

ボルジックは、上機嫌だった。


ボルジック

「久しぶりだぜぇ!」

「こんな大暴れはよぉ!!」


――2年前。


孤児院を襲った夜が、

脳裏をよぎる。


ボルジック

「あの日よぉ……」

「おれの仲間を、20人も膾切りにしやがった」

「あのガキ……!」

拳に自然と力がこもった。


ボルジック

「あのガキがいなけりゃよぉ!」

「おれらの山賊団は、ずっと最強でいられたんだ!」

「それから二年間……」

「コソコソ、しけた時間を過ごしてきたもんだぜぇ……!」


手下

「へへっ、そうですねぇ、お頭!」

「ですが、今は――」

「もう、あの頃に負けない大山賊団ですぜ!」


ボルジック

「今日はなぁ――」

「帝国から、最高の武器も手に入った」

手元の剣に一瞬目を向けた。

にんまりと笑顔を浮かべるボルジック。


ボルジック

「こんな日はよぉ……」

「暴れるしかねえだろ!!」


ボルジック

「ゲハハハハハハハハ!!」


足元で、

生きている村人を、踏みつける。


村人

「う、うわああああああああ!!」


――バキバキッ。


骨の折れる、嫌な音が響く。


アスナ

「……あの村……」

「……まさか、もう火が……」


その目が、

鋭く細まる。


アスナ

「カイ」

「……もうすぐ、着くよ」


カイ

「……!」

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