第5章-13
パキィィン!
エリスの前に氷の壁ができる。
その壁がサクヤの攻撃を代わりに受けた。
ヒュウが鋭い目でサクヤを見る。
その手には、重力の中で必死に握られた氷刀:凍鶴。
サクヤ
「ほう・・・」
(このサムライ、重力で動けない中で”空気中の水蒸気”を氷に変えたか・・・)
サクヤはにっと笑う。
エリス
「ありがとうですわ・・・」
「ヒュウ・・・!)
サクヤ
「おもしろいの、サムライ!」
「じゃが・・・そうやって守るのが精一杯というところなのだろう?」
ヒュウ
「どうだかな・・・」
(ご名答だぜ、ちくしょうが)
サクヤ
「ほれ」
サクヤは炎魔法で、氷の壁を消し去る。
じゅわっという音を立て、壁が一瞬でなくなった。
カイ一行の重力が解かれる。
エリス
「うっ・・・」
その瞬間、カイがエリスを抱えて距離を取る。
カイ
「エリス!」
「大丈夫か!?」
エリス
「カイ・・・」
「ええ・・・」
「ありがとうですわ・・・」
アスナ
(動ける・・・)
◇◇◇◇◇
サクヤは憂いを帯びた目でカイたちを見た。
そして優しく語りかける。
サクヤ
「・・・」
「のう・・・主ら・・・」
ヒュウ
「あん?」
サクヤは一瞬目線を落として言う。
サクヤ
「もう終わりにしないか?」
カイ一行
「!?」
サクヤ
「我は悲しいのだ」
「苦しむことはない、主らはよくここまで戦ったではないか」
「もう・・・いいのだ」
「サムライ国も・・・もう帝国に逆らうのは・・・」
「仕舞いにしないか?」
ボロボロのカイ一行。
しかし、カイは感じているサクヤへの”違和感”を口にする。
カイ
「お前・・・」
サクヤ
「なんじゃ?」
カイ
「・・・」
「・・・なんでお前は・・・」
「帝国なんかに従ってんだよ・・・」
サクヤ
「?」
カイ
「お前みたいに、”優しい”やつがなんで、帝国で他国を傷つけるんだ!」
エリス
「優しい・・・?」
アスナは、その言葉の意味を考える。
アスナ
(カイの直感は・・・よく当たる・・・)
(サクヤが優しい・・・?)
サクヤ
「・・・」
一瞬だけ言葉を飲み込んだ
サクヤ
「・・・」
サクヤが小さく下を向いたような気がした。
サクヤ
「帝国は強い・・・」
「強き側であれば・・・己を守れる・・・」
「・・・それが理だ」
「それが世界の重さだ」
カイ
「・・・」
カイの頭にいろんな言葉が浮かんだ。
そして、言葉を絞り出す
カイ
「・・・ふざけんな・・・
「そんな理、なんだってんだよ・・・!」
サクヤ
「なに・・・?」
カイ
「己を守ることは、他国を苦しめることなのかよ?」
「お前が従う”理”ってのは・・・」
「そんなに立派なのことなのかって聞いてんだよ!」
サクヤ
「・・・」
サクヤの言葉に初めて、”苛立ち”が籠る。
サクヤ
「・・・貴様に何が分かる・・・」
「その理にすがらなければ・・・!」
「我が一族は・・・!!」
カイ
「一族・・・?」
次の瞬間、サクヤの目がキッと鋭い光を帯びる。
ズンッ!!っとその場の空気が黒く沈んだ。
近くで、物陰に隠れていた小さな黒い犬がぶるぶるっと震えて逃げ出した。
アスナ
(こ・・・こんな暗いオーラを・・・?)
美しく金色のオーラが、真っ黒に染まったのがその場の全員が分かった。
カイ
(サクヤ・・・!)
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