第4章-6
その日の昼。
エリスがエプロンをして厨房に立っていた。
エリス
「今日も料理しますわ!」
アスナ
「うわすごい匂い、何やってんの?」
エリスがいつもしている、蛍光色の緑・真ん中に大きなトカゲの絵が描いてあるエプロン。
それにツッコむ余裕のない悪臭だった。
エリス
「オムレツを作っていたつもりが・・・」
「気づいたらお魚の缶詰になってましたわ」
アスナ
「あんた料理やめて!物理法則無視したもの作るから怖い!」
エリス
「そんな・・・」涙ぐむ
アスナ
「あ・・・エリス?」
酷いこと言ったのかと思い、一瞬心配になるアスナ。
エリス
「アスナひどいわ!」
「もう最低!」
「このケダモノ!オゲレツ!エロガッパ!」
アスナ
「初めて言われたわ…なにそのこれからも言われなさそうな悪口達...」
カイ
「この缶詰うめえ!アスナの料理よりいけるぞ」
親指をグッと立てるカイが笑った。
アスナ
「なんでこれに負けるのよっ!」
後ほど貼られた、”初日に勝手に厨房で暴れていた新入り”、
というレッテルが、アスナの自尊心を削った。
ーーー
その日の夜。
サムライ国軍の拠点。準備を進める1番隊。
隊員
「ヒュウ殿!」
「先刻、2番隊と3番隊がアガリ・サガリ両砦に向け出発しました!」
ヒュウはキセルの煙を吹いた。
ヒュウ
「りょーかい」
「行っていいぜ」
「おれたちも準備ができたら出発だ」
隊員
「はっ!」
1人になって、焚き火を見るヒュウ。
ヒュウは過去を思い出していた。
ーーー
回想
ヒュウ
「よし、次はあそこの砦だ」
「お前ら、いくぞ!」
隊員
「おおおおお!!」
その日の夕暮れ・焚き火のそば
隊員「今日も快勝でしたね!隊長!」
ヒュウ「あたりめーだろ」
キセルを咥える。
ヒュウ
「おれとお前らがいれば」
「帝国なんざ、たかが知れてるぜ」
「バクライの隊にも負けてらんねーからな」
隊員
「ははは!ちげえねえ!」
盛り上がる中、ヒュウは部下の一人・陽菜がこそこそ一人で何かやっていることに気づく。
ヒュウ
「なんだそれ」
陽菜
「うわー!隊長!」
「ちょっと!見ないでくださいよ!」
ヒュウ
「もう見ちまってんだが。現在進行形で」
陽菜
「もー!最悪です!隊長のバカ!!」
ヒュウ
「んで何なんだよそれ」
陽菜
「お・・・お守りです・・・」
ヒュウは、陽菜が持っているのが小さな石と、その石を入れるための布袋なことに気づく。
陽菜
「あたしの里では、戦いに行く前にはお祈りした石を布袋に包んで、お守りにあげてるんですよ!」
「隊長、いつも戦闘で一番に突っ込んでいくでしょ?」
「隊長が早死にしないようにお守り作ってあげようと思って!」
ヒュウ
「・・・」
「余計なお世話だよ」
陽菜
「編み物あんまり得意じゃないですけど…!」
ヒュウ
「ほんとだな、下手くそ」
陽菜
「えー!」
「ひどーい!
「隊長って本当に人として最低です!」
ヒュウ、煙を吐く。
ヒュウ
「下手なんだから、指刺したりすんじゃねーぞ」
陽菜
「下手下手ってうるさいなー!」
一瞬だけ沈黙。
陽菜は少し真剣な顔で口を開く。
陽菜
「……ちゃんと、着けてくれますか?」
ヒュウはそのまじめな表情に気づく。
ふーっとキセルを吐いた。
ヒュウ
「お守りとしてのていをちゃんとなしてるんならな」
陽菜
「もー!」
「隊長なんて大嫌い!バカ!」
ヒュウは静かにまたキセルを咥える。
ーーー
次の日
敵の策略。
陽菜が人質にされる。
ヒュウは隊長として軍から離れ、サムライ国の会議に参加していた。
そのさなか、人質の知らせがヒュウの隊に来る。
隊員
「隊長がいない・・・」
「でも陽菜はおれ達の仲間だ!」
「ああ、隊長を待ってる時間はない!」
「おれ達で助けに行くぞ!」
作戦会議中のヒュウに知らせが届く。
サムライ国兵
「ヒュウ殿!」
「陽菜殿が・・・」
ヒュウ
「!?」
血相を変えて出ていくヒュウ。
ヒュウ
(くそ・・・確実に罠だ・・・)
(バカ共・・・陽菜・・・)
(間に合え・・・!!)
到着するヒュウ。
すでにヒュウの隊員は敵の策に落ち、していた全滅。
ヒュウ
「・・・」
悲痛な表情のヒュウの目に、血まみれで倒れた陽菜が映る。
ヒュウ
「陽菜!!」
陽菜
「たいちょう……」
ヒュウ
「もういい、喋るな!」
陽菜
「たいちょう......」
「あたし......」
ヒュウ
「!?」
陽菜
「あなたの……」
ヒュウ
「……陽菜......」
陽菜
「お側にいれて……幸せ……でした……」
「あと......これ......」
震える手でヒュウの手に石の入った布袋を渡した。
陽菜
「渡せて......よかった......」
「おまもり......着けてくださいね......」
小さく笑う陽菜
手が落ちる。
ヒュウ
「......っ......」
キセルから、寂しそうに煙が登っていった。
ーーー
回想が明ける。
隊員が必死の形相で走ってくる。
思い出をさかのぼるヒュウを現実に呼び戻した。
隊員
「ヒュウ殿!」
ヒュウ
「どうした、騒がしいな」
隊員
「カイ殿が率いる3番隊が今敵の罠に落ち・・・」
「敵の砦に取り残されて、砦で火攻めにされています!」
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